天女が現れた。
周囲の武将たちをどんどん惚れさせているらしい。
それだけならまだ良いが、
愛しい我が恋人の元就が天女に惚れた。
天女とやらに、俺にさえあまり見せたことのない笑顔を見せていた。
それが無性に腹が立って、天女を殺した。
そしたら驚くことに、周囲の武将たちは天女のことを忘れてしまった。
しかし、全員が全員忘れたわけではないらしい。天女に騙されなかった者は、薄ら覚えているとかいないとか。
結局あれは何だったのか。たぶんあれは、人の姿をした妖怪だったのだ。
元就をたぶらかした妖怪はいなくなった。
それでも腹の虫はおさまらず、元就を犯した。
手ひどく犯したから、今元就は布団で動かなくなっている。
「・・・ッ、少しは、手加減せよっ・・・」
「・・・・・・」
「・・・フッ・・・怒っているのか?」
煙管を手に黙っている俺に、元就が薄く笑った。
フゥッと口から煙を吐き出す。
「・・・我が天女などというふざけたことを言う女に、そうやすやすと心を奪われると思っているのか?」
その言葉に俺はピクッと反応する。
「・・・何だ。狙ったのか」
「貴様を怒らせれば、きっと貴様はあの女を殺すだろう。我はそれを狙ったまでだ」
俺はまんまと元就に踊らされたらしい。
ため息をついて、布団で動けなくなっている元就を抱き締めた。
「・・・あまり俺を怒らせないでくれ。間違えて元就まで殺してしまうかと思った」
優しく口吸いをしながら言えば、元就がククッと肩を震わせた。
「・・・我とて、貴様があの天女の変な術にかからないかと思ったまでよ」
「それは、心配してくれたと言うことか?」
「さぁな」
元就は俺の胸に顔を寄せた。
嗚呼、まったく・・・
「まんまとお前の策にはまってしまったよ。俺も・・・天女も」
死した天女は何処へ行ったのか。
誰の記憶にも残らず、さぞ無念なことだろう。
けどまぁ・・・
「俺と元就の邪魔をしようとしたアイツが悪いんだよな」
ニヤッと笑って、元就の身体に触れた。
ピクンッとふるえた元就に「まだする気か」と睨まれる。
「なぁに。演技だとしても、あんな女に何度も笑みを向けていたことを怒ってるわけではないさ」
「怒っているではないか」
「ちょっと、明日喋ることも動くことも出来ないようにするだけだ。心配するな。死ぬことはない」
「ッ、この外道が・・・!」
「言ってろ。とりあえず、仕置きだ」
次の日、元就は寝室から出られることなく、代わりに俺が執務をこなしていた。
策に嵌った
(外道が・・・)
(愛ゆえだ)