バンッ!!!!!
佐助によって叩かれた机が揺れる。
名前はそれに動じることなく、お茶をちょっとだけ啜った。
目の前の佐助は、溜まりに溜まった怒りを抑えることなく、口にする。
「俺様は子守が仕事じゃないんだよね!」
「あぁ。心中察するよ」
拳を握り締めて叫ぶ佐助に、名前は小さな笑みを浮かべてそういった。
「うぅっ・・・そう言ってくれるのは、名前ちゃんだけだよ」
佐助は目元を拭う仕草をしながらそういった。
子守とは、言わずともわかる。
――真田幸村のことである。
「俺様の顔を見れば、すぐに団子団子って言うんだよ!!!俺様は団子じゃなぁぁぁぁああい!!!!!!!!!!」
叫び散らす佐助を、名前が優しく撫でる。
名前は甘味屋の亭主で、佐助はある意味常連客。
毎日団子を買いに来る佐助に「毎日団子を買いに来るんだね」と話しかけたのが、この関係の始まり。
佐助の愚痴を優しく聞く名前は、佐助にとっての唯一心休まる場所。
子守のことも忘れて、ゆっくり出来るのだ。
もちろん、幸村が団子を待ちわびているため、そんなに長くいられない。
「佐助も大変なんだね。ほら、お茶でも飲んで落ち着いて」
「有難う・・・名前ちゃん」
名前から差し出されたお茶を迷うことなく飲む佐助。
忍というものは、他人から出されたものをそう簡単には口にしない。
それなのに、そのお茶を簡単に飲み干したということは、それほど名前を信頼していることが伺える。
「あ。そろそろ帰らないと・・・」
佐助はハッとしてそういった。
その声が、少しだけ残念そうだ。
「はい。お団子」
最初から用意していたのだろう。
名前が差し出すのは団子が入った包み。
「また来るね」
その包みを受け取って、佐助は笑った。
名前も笑い、口を開く。
「お使い以外でも、来て良いよ」
「・・・・・・」
佐助はちょっとだけ眼を見開いた。
「・・・うん。来るよ」
ふいっと顔を背け、去っていった佐助は、
ちょっとだけ嬉しそうに笑っていた。
何時でもどうぞ