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「宗像!!!!!!!」



思いっきり開け放った襖がスパァァァアアンッと小気味良い音を立てる。

和室の中で一人茶を啜っていた宗像がこちらを見て少しだけ目を見開く。




「・・・名前?」

「おぅ!名前様だ!」


冗談っぽく笑いつつも和室の中にずかずか入って行く。

そのまま宗像の前にドカッ!!!と腰かければ「何の用?」と質問された。


何の用?そりゃ、決まってる。






「お前に告白しに来た!」





「・・・・・・」

あれ、反応がないぞ。


「何で」

「は?そりゃ、お前が好きだからだ。お前と付き合って、恋人同士になりたい」


「・・・・・・」

ずずっと茶を啜る宗像。

おいおい、今俺が告白してるってのに、随分と余裕じゃ――




「――ら良い」

「ん?」






「・・・僕を倒せたら良いよ」





俺が笑顔で固まった。


今コイツなんて言った?

僕を倒せたら良い?


それは何か?俺に宗像を倒せたら付き合えるよと言っているのか?


・・・普通に考えろ。

宗像はその身体のいたるところに暗器を隠し持っているのだ。

時には己の体重の何倍もの暗器を運んでいる時だってある。


見た感じあんなに細い宗像だが、そんな暗器の数々を毎日運んでいるだけあって、その筋力は凄まじい。

これから彼氏になる(予定の)俺よりも確実に筋力がある宗像を倒すなんて、普通に考えて無理だ。


というか自殺行為だと思うんだが、いかがだろうか。







「む、宗像・・・それ、マジか?」

「もちろん」


湯呑をゆっくりと置き、こっちを真っ直ぐ見る宗像に俺は唐突に緊張し始めてしまう。


想いを伝えるのは恥ずかしいとは思わなかった。

だってそれが俺の本心だから。

俺の気持ちを好きな相手に知ってほしいのは当然の話だ。




だけど、宗像を倒せと言われたら話は別だ。


甘い恋物語は一気に殺伐とした恐怖物語に早変わり。

きっと俺が宗像に攻撃を仕掛けた瞬間、俺の首はチョンパされるだろう。


いや、宗像は殺さないな。一応、意識不明の重体ぐらいでとどめてくれるはずだ。

・・・いやいやいや、自分で言っててそれって良くないぞ。実に恐ろしい。






「・・・僕を倒せないなら、この話は白紙に」

まるで取引先との契約のような言い草。

・・・何だかムッとした。



何だか宗像、俺の告白なんとも思ってないみたいだな。

俺が一世一代の大告白をしたというのに。


そんだけ、宗像の中の俺って重要じゃなかったってことなのだろうか。

そう思うとなんだか虚しくなる。






「・・・戦う前に、話しておきたい」

「・・・何?」


俺も宗像を真っ直ぐ見返して、ゆっくりと息をする。



「俺はお前が好きだ」

「さっき聞いた」


「俺はお前の・・・優しさが好きだ。強さが好きだ。思いやりが好きだ。気遣いが好きだ。美しさが好きだ・・・いや、言い始めたらきりがないな。俺は、お前の全てが好きだ」


「・・・月並みの台詞だ」

「俺は詩人じゃないんだ。それぐらいしか言いようがない」

苦笑を浮かべつつ「でも」と声を上げる。




「宗像を愛している、それは事実だ。宗像とずっと一緒にいたい。ずっと愛し合いたいんだ」

「・・・一緒にいたいだけなら、別に友達でも良い。愛し合いたいなら、僕ではなく、普通に女の子に恋をすれば良い」


そんな風に言われると、ちょっと悔しいな。




「確かに、一緒にいるだけなら友達でいたって良かった。愛し合うのだって、女との方がずっと楽だ。けどさ・・・」

そっと宗像に手を伸ばす。

伸ばした手を宗像は拒否しなかった。それだけが心の救いだ。









「――お前じゃなきゃ駄目なんだ」








ぎゅっと握った宗像の手は綺麗で、ついつい笑ってしまった。

真っ直ぐと見つめた宗像の瞳も、凄く綺麗だ。ずっと見つめていたい。


友達じゃ満足できなくて・・・

女よりも好きになってしまって・・・


殺さない殺人鬼。俺にとっては、とても愛しい相手。

宗像は、俺が何よりも愛したい相手なんだ。


いっそ傍に居られるだけで良いなんて、そんな綺麗事言いたくない。

俺は宗像を手に入れて、ずっと腕の中で愛したいんだ。


















「・・・僕の負け」

「へ?」


突然そう言った宗像に俺は唖然とする。

僕の負け?



「・・・僕の負けで良いって言ってるんだ」

「じゃ、じゃぁ・・・」



「うん。恋人になる」



宗像の言葉が次第に理解できてきた。

いや、理由までは理解できなかったけど、取りあえず付き合えると言うことは理解できたのだ。




「〜〜〜っ!!!やった!やった!宗像と恋人同士!他の奴等に自慢してこないと!!!!!」

ついついはしゃぎまわってしまう俺は「宗像!ちょっと行って来る!!!」と和室を飛び出し、庭園の果てにある階段の方へと駆け出して行った。







惚れたら負けの方式








和室に一人残された宗像は・・・


「・・・///」

一人黙って顔を赤くしてその場にうずくまっていた。



「・・・負け、た」

――お前じゃなきゃ駄目なんだ。



やっぱり月並みの台詞だったにも関わらず・・・

宗像形はその時、確実に・・・――ときめいていた。



惚れたら負け。

宗像はその事実に己の負けを感じざるを得なかったらしい。



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