カランカランッ
外が薄暗くなってきた頃。
そろそろ店を閉めようと考え出したその時間に、喫茶店の扉が開かれた。
「・・・また、あんたか」
ここ数日この店に入り浸っている男に、俺は軽くウンザリした表情を浮かべる。
「おいおい。客に向かってあんたはねぇだろ」
「もう今日は閉店する予定なんで、とっとと帰ってください」
毎回毎回、閉店間近になるとやってくるこの客。
「今日もナマエ君は格好良いなぁ」
「煩いです」
「あ。何時もの酒ね」
「・・・はいはい」
椅子に座って笑っているその客にため息をつきつつ、酒を注ぐ。
『何時もの』で通じてしまうところが、何とも憎らしい。
「〜♪」
「・・・何ですか」
「いやぁ、酒を用意してるナマエ君の動きが、あまりにエロ――」
「このスケベ親父!!!!!!!」
ベシッと客の頭を叩く。
普通、客にこんな態度取ったらヤバイけど、コイツだから平気だ。
「ぉ、オヤジ・・・ッ」
「ぇっ、傷付くところ、ソコ!?」
ガーンッとショックを受けている彼。目には涙が薄く浮んでいる。
「うるせぇ!俺だって自分の年齢のヤバさに気付いてるんだよ!!!!!!なのにオヤジってッ・・・ひでぇよ」
「わぁぁぁああああああッ!!!!!!!!泣かないでくれよ、おゃ・・・・・・虎徹さん!」
「!!!!!!・・・名前、呼んだ・・・」
パァッと目を輝かせた彼。
・・・ッ、何なんだこのオヤジは!!!!!!
「〜〜〜ッ・・・ぅ、煩い!名前呼んだぐらいで、そんな嬉しそうな顔しないでくれよ!!!!!!!!」
「ナマエ君が名前呼んでくれた・・・!」
嬉しそうな顔。
それを見ていると、どんどん羞恥心が溢れてくる。
「うわぁぁぁああああッ、言うなぁ!今更ながら、恥ずかしくなってくるだろうがぁ!」
「おじさん、ナマエ君のこと大好きだぁ」
とろけそうな笑顔。
「自分で自分のことおじさんっていってるじゃないか!」
「それはそれ、これはこれだ」
「・・・・・・この野朗ッ」
奥歯を噛み締める。
そんな俺を見て、虎徹さんはにこぉっと笑って言うんだ。
「なぁ、名前呼んでくれよ」
「・・・・・・」
キラキラした目で俺を見てくる虎徹さん。
「・・・虎徹さん・・・」
「何だ!?」
「・・・さっさと酒飲んで帰ってください」
じゃないと・・・
俺の心臓がもちません。
閉店間近のロマンス