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テレビの中では、今流行のヒーロー達が活躍している。


今日一番活躍しているのはバーナビー。

今日一番活躍していないのは・・・ワイルドタイガー。


しかし、そのワイルドタイガーを見て、一人の青年が目を輝かせていた。






「ワイルドタイガー素敵!!!!!」


テレビを見ているにも関わらず、デッキにはしっかり【録画】という文字が表示されている。後でもう一回見るつもりらしい。




「あぁ!!!何でこんなにワイルドタイガーって素敵なんだろ!もう大好き!」


手にはしっかりワイルドタイガーのカードを持っている。しかもサイン入り。



「あ!バーナビー邪魔!ワイルドタイガー見えない!」

むぅっと拗ねた顔をしたナマエは、放送が終わっても「格好良かったなぁ」と楽しげに笑っていた。





翌日、昨夜の放送の興奮も冷めぬまま、ナマエは学校に行く準備をしてからマンションを飛び出す。





「あ!鏑木さーん!」

「ん?おぉ、ナマエ君」


「聞いてください鏑木さん!昨夜も、ワイルドタイガー格好良かったです!」




「!!!!・・・そ、そうかそうか!」

妙に嬉しそうな顔をする虎徹を気にせず、ナマエもにこにこ笑った。




「録画もばっちりです!もう、テレビから目が離せませんでした!」

「そうかそうか!」


虎徹はデレデレとした顔でナマエの言葉を聞いている。









ナマエはワイルドタイガーの大ファンだ。

周囲の子達がスカイハイやバーナビーを支持する中、彼は何時だってワイルドタイガー。


近所に住んでいる虎徹にワイルドタイガーが好きなのだと言った瞬間、それはもう虎徹に喜ばれた。





「虎徹さんから譲ってもらったあのカードも、宝物です!」

「おぉ、おぉ!大切にしてもらえて嬉しいぜ!」


以前虎徹からはワイルドタイガーのサイン入りカードを貰っている。

ナマエの中での虎徹は、自分と同じワイルドタイガーの大ファンなのだ。



「ぉっと、時間大丈夫か?」

「あ!虎徹さん、行ってきます!」



「ぉー、行ってらっしゃい」


笑顔で手を振り走っていくナマエの後ろ姿に虎徹は小さく笑った。














その日の午後、ナマエはむすっとしていた。



学校の友人にワイルドタイガーの話をしたら、まったく興味を持って貰えなかったのだ。

友人の一人はブルーローズやドラゴンキッドが好きで、もう一人は折紙サイクロンが好きなのだ。




「ワイルドタイガーは格好良いもん・・・」

すねた表情のまま授業を受け、ついには放課後。


友人が何とかご機嫌を取ろうとしたが、それでもナマエは拗ねたままだった。





「そーだ。帰りにワイルドタイガーの新しいカードないか見に行こ」


そう呟いたナマエは、拗ねていた顔を一変させ、楽しそうに笑う。














その同時刻、虎徹はヒーローとしてバーナビーと共に走っていた。



「おじさん!犯人が逃げたのはこっちですよ!」

「おぅ!わかってるって!」




犯人を追跡中。

強盗をして車で逃走していた犯人を、ヒーロー達は各自追っている。


しかし強盗は突然車を捨て、街中を疾走し始めたのだ。


一般の人々の避難もできていない。





「!おじさん、男子学生が一人人質に取られたそうです!」

「何ぃ!?」





人質に取られた男子学生・・・

その学生、ナマエは人質にされる前、路上で売られているカードを見ていた。


積み重ねられたワイルドタイガーのカード。


他のカードよりも大分多く残っているそのカードに、ナマエはちょっとだけ苦笑した。








「おい!そこの餓鬼ぃ!どけぇ!」

突然聞こえた怒声。


反応が遅れたナマエに、声の主は舌打ちする。




「ぇ・・・?」

ナマエは男にガシッと捕えられ、頭に何か硬いものが当てられた。


それが拳銃だと気づく頃、バーナビー達が到着する。




「ぉ、おい!この餓鬼がどうなっても良いのか」

お約束の台詞を吐いた犯人に、ヒーロー達は動きを止める。


ナマエは「あ。僕、人質になっちゃったんだ」と妙に冷静に考える。

何故冷静だったのかと聞かれれば、答えは簡単だ。








――ワイルドタイガーがきっと助けてくれる







絶対的な信頼感からだった。



「おいお前!そんなことしても、どうにもならねぇぞ!」

「ぅ、うるせぇ!ぅっ、動くとコイツを殺すぞッ!」


ヒーロー達と犯人の間に緊迫した空気が流れる中、ナマエが小さい声で「・・・あの」と犯人に言う。





「あぁ!?な、なんだ!?」


犯人がナマエをバッと見る。

そこには、笑顔のナマエがいた。



「・・・よそ見、しない方が良いですよ?」

「な・・・!?」


犯人がナマエを見た瞬間、犯人の拳銃が凍り、一気に近づいたバーナビーによってその身柄を拘束された。



犯人の腕から解放されたナマエが「ぉっとっと」とよろける。

ポンッとその身体を受け止めたのは・・・





「ワイルドタイガー!」

「よぉ。よく犯人の隙を作ってくれたな。有難う」



「〜〜〜っ!!!ワイルドタイガーにお礼言われた!虎徹さんに自慢しないと!」


ワイルドタイガーが「無事でよかった」とナマエの頭を撫でる。




「あれだけ冷静でいられるなんて、君は凄いなぁ」

「だ、だって!ワイルドタイガーが助けてくれるって思ってたからっ!」


「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか・・・ぉっと、それじゃぁなナマエ君!気を付けて帰れよ!」


他のヒーロー達が撤退していくのを見て、ワイルドタイガーも慌てて声を上げる。









「はい!・・・あれ?名前・・・」


走り去っていったワイルドタイガーに、ナマエは首をかしげた。


不思議そうな顔をしたまま自宅へ帰ったナマエは、自分で作った夕食を食べながら「んー」と考えていた。




「そうか!そういうことだったんだ!」


ひらめいた顔をしたナマエがバッと立ち上がり駆け出して行ったのは・・・








「虎徹さん虎徹さん虎徹さん!」



近所の虎徹の家。

チャイムを何度も連打したナマエに、中から虎徹が慌てたように出てくる。



「な、なんだ、ナマエ君」

「聞いてください!今日、ワイルドタイガーに助けて貰ったんです!それで、それで!なんかよくわからないけど、名前呼ばれました!」



「・・・!そ、そうか」

ゲッという顔をする虎徹に気付かず、ナマエは笑顔で言った。




「やっぱりワイルドタイガーは凄いですね!名乗らなくても相手の名前がわかっちゃうんですかね!?」

「そ、そうなのかもなぁー・・・ははっ」




「ワイルドタイガー格好良い!」




目を輝かせながら言うナマエに、虎徹は少しだけ苦笑を浮かべていた。





真っ直ぐ青年





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