×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -







暴言。





それが僕の代名詞。

周りの悪魔は僕に近付かない。だから僕は一人。




「ぁ・・・召喚される」




僕はぽつりと呟き、その流れに身を任せた。

僕を召喚するなんて、きっと相当な物好きだなぁ・・・。















「か、可愛いっ」


「・・・?」


人間界にたどり着いた。

目の前に立っているのは目つきの怖い男の人で、僕に可愛いと言っているのは、その隣にしゃがみ込んでいる眼鏡の女の人。



「ぁ、名前なんですか?」

「ぇ・・・ナマエですけど」



というか、可愛い?

僕が軽く首をかしげると、女の人は口元を抑えてプルプルッと震えだす。





「ぁ・・・」


自分の手を見て、初めて自分の置かれている状況に気付いた。

自分の体が・・・




物凄くデフォルメされてる・・・!!!!




ガーンッ

ショックで呆然としていると、肩をポンッと叩かれた。




「なんや、新入りかいな」

肩を叩いたのは、今の僕と同じぐらいの大きさの・・・








「・・・キモっ」


何かキモイ悪魔だった。






コレと同じっていうの、嫌だなぁ・・・



「なんやと!?おまっ、可愛い見た目して口悪ッ!」

「ちょっ、近付かないでよ。物凄くキモイよアンタ。ねぇ、ちょっ・・・ちょっと臭いんだけど。何それ、此処に来る前ヤってきたとか?うわぁ、シャワー浴びろよこの豚が」



「見た目が異常に可愛いだけに、ミスマッチな言葉が怖い!!!!!」


あぁ、もうこっち来るな。



「ぁ・・・」

僕は思い出したように小さく声をあげ、自分をジッと見ている男の人を見上げる。



「僕を召喚し、しかもこんな情け無い姿にしたのは貴方ですか?」

「情けなくないですよ、可愛いですよ」

男の人の変わりに女の人が笑顔で言ってきた。




「・・・もういいです。あの、生贄は・・・?」

「・・・そこにあるだろう」


「・・・ぁの、ぇっと・・・」


そこと言われて見てみれば、そこにあるのは・・・





豚足・・・!





「本当はアザゼルさん用だったんですけど、賞味期限が近かったから・・・」

女の人がまた言う。



・・・豚足?

ねぇ、何で豚足?


僕、こんなものを生贄に出されたの初めてなんだけど。


どうしよう。貰っておいた方が良いのかな?だって、この男の人目つき悪いし、悪魔をすっごい下等に見ているような雰囲気バリバリだしてるし。






どうしよう。本当にどうしよう。






・・・どうしよう帰りたい。










――・・・







「ぁの、芥辺さん。ナマエさん、物凄く動揺してますよ」


豚足目の前に明らかに震えているナマエ。

その生贄を受け取るべきか受け取らないべきか葛藤している真っ最中だ。



「それにしても・・・ナマエさん可愛いッ」

おろおろしているナマエは、見た目的には何よりも可愛い。


・・・この可愛い姿であの暴言なんて、世の中無情だ。





「・・・・・・」

「あ。芥辺さん。ナマエさんコッチ見ましたよ」


チラッチラッとアクタベ見ているナマエ。

その目はくりくりしていて、正直言ってめちゃくちゃ可愛いのだが・・・








「さっさと食え」







アクタベに容赦の文字はない。



「ぁの・・・一応、その・・・此処に居る豚よりは、僕は上級に位置する悪魔なので、この豚よりは少しは待遇良くしてもらわないと・・・」

「豚豚連呼すんなや!!!!」


「うっせぇぞ、豚野朗が!!!!!手前、魔界で会ったら覚悟しとけよ!?後ろからどついて犯すからな、ワレェ!!!!!!」


「ちょっ、怖!?可愛い顔してその迫力、怖ッ!?」

アクタベとアザゼルに対する対応が全く違うのもミソだ。




「キモイしウザイ。豚が一丁前に僕を見るんじゃねぇよ。僕が腐ったらどうするつもりだ。というか、眼球潰すぞ」

「口悪ッ!?何で芥辺はんとわしの対応がこんなにも違うん!?」


「僕の第六感が相手を選べと告げてるんだよ!手前は格下だと第六感が告げてるんだ。だから大人しく地べた這いずれ!」

中指を立てながらいっていると、突然ナマエの身体が持ち上げられる。




「!?・・・ぇ、ぇーっと」

ナマエの体を持ち上げたのは、無表情のアクタベ。



「お前は“暴言”だったな」


「・・・ぁの、出来れば持ち上げないでもらえると・・・実際、魔界での僕の身長は貴方よりも若干高いと予想されるので、こういうのは慣れないんですが、というか豚足だけは勘弁してください」





「・・・・・・――」


「はぃ?」




アクタベが何かを呟く。

ソレと同時に、ナマエは・・・





ドサッ

「っ・・・ィってぇなぁ」




床へと落ちた。

打ち付けた腰を軽く擦りながら「あれ?」と声を上げる。




デフォルメではない自分。



「ぇっ、凄いイケメン」

「ちくしょぉぉぉぉぉおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!何その設定!わしマジ泣くで!?」

佐隈とアザゼルの声。



「っと・・・おぉ。元の姿に・・・」

吃驚したような顔で自分の手や足を見るナマエは、そのまま流れるような動きで・・・




「うごぉぉおおおおおおっ!?!!!!!??!???!!?!?」


「こんのゴミ虫がぁ!!!!!!」


アザゼルを罵倒しながら蹴り倒し始めた。





「ナマエ」

「・・・はい?」


が、アクタベが呼びかけた瞬間、静かになる。



「豚足は止めにしてやる。カレーで良いか」

「・・・まぁ、賞味期限切れかけの豚足よりかはマシですけどね」


まだ少し不満はある様子だが、妥協したのか佐隈特性のカレーを受け取った。





「ナマエ。此処にサインしろ」

「今食べてる途中――・・・って、何ですかコレ・・・契約?しかも、契約内容めちゃくちゃ横暴・・・契約期間長ッ!?」





「何も言わずにサインしろ」




アクタベの眼光にピクッと肩を震わせたナマエは、カレーを食べる手を止める。

口の悪さの割には、その手つきは丁寧なのが驚きだ。



「これは悪徳な契約だと思います!」


手を挙げて発言するナマエにアザゼルが「せやせや!」と頷く。



「ゴミ豚は黙ってろっていうのがわかんねぇのかぁ?あ゛ぁん!?」

「・・・わしの扱い酷すぎる・・・」


同意しただけなのに・・・としくしくと部屋の隅っこで無くアザゼルを佐隈が哀れんだような目で見ていた。









「文句あるのか?」









「・・・文句というか、その・・・文句じゃなくて、ぇっと・・・」


アクタベの眼光。

ナマエはさっと顔をそらす。



「文句が無いならサインしろ」

・・・何処までも横暴である。



「わっ、ちょっ・・・」

最終的にはナマエの手を無理やり引っつかんで契約書にサインをさせる。



「ぇ、ちょっ、僕の尊厳は・・・?」

「他の悪魔よりは待遇をよくしてやる」



「じゃぁ問題ないです」

ほっとしたように笑ったナマエに、反論の声をあげたのはアザゼルだ。




「何やそれー!!!!!贔屓や!贔屓!!!!!!」



「「黙れ」」



「ゴッファァァアアアッ・・・!?」


物凄い眼光のナマエとアクタベから繰り出される、左右からのダブルキック。

・・・アザゼルの潰れる音がした。





「・・・わぁ」


佐隈も顔を引きつらせる。

息は・・・意外にも合っていた。




横暴と暴言と暴力






戻る