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「ぁ、あの、小松シェフ・・・」


背後から突然声をかけられた小松は、若干驚きつつも振り返る。

俯き気味の、何処か気弱そうな顔をした、長身の男。


小松が働いているのと同じ場所で働いている料理人。

小松よりも年上だが、現在は小松の下で働いているという状況だ。






「え?あぁ!名前さん。どうかしたんですか?」


相手は部下ではあるが、一応年上ということもあり、小松も敬語を使う。



長身で、よくよくみれば綺麗で整った顔をしているその男。料理の腕も良い。

声も綺麗で、女性なんかはすぐにオちてしまうであろう要素をほとんど持っている。



が・・・大きな欠点が一つ。






「ぅっ、ぁ・・・ぇ、ぇと・・・」


その男は、非常に憶病で、あがり症だった。




一対一で話すことでさえ、ゆっくり時間をかけなければできない。


今も、過呼吸を起こしそうな勢いな名前に、事情を知っている小松は慌てる。




「あぁっ!!!ゆ、ゆっくりで良いですよ!ゆっくりで!」


「す、すみまっ、せん・・・ぇ、ぇと・・・そ、そのっ、お聞きしたいことがあって」

「な、なんですか?」





「そっ、そのっ、ぇとっ・・・ぅッ」


「わぁぁああ!?し、しっかりしてください!!!!!」





緊張のあまりバタッと気絶した名前を慌てて医務室に連れて行く小松。

・・・この職場では、結構見慣れた光景だった。






「すみ、ませんっ・・・小松シェフ」


医務室に運ばれた名前は、しばらくして目を覚ました。

倒れてしまったことに、暗い表情をする名前に、小松は苦笑を浮かべる。





「いいんですよ。本当に、ゆっくりで良いですから」


「はい・・・ぁのっ・・・お聞きしたい、ことがあったんですっ・・・ぇと、あの・・・以前、小松シェフと一緒にいた・・・ぁの、緑色のっ、ターバンの方・・・なのです、がっ」



何とか声を絞り出している様子。





「え?・・・あぁ!ココさんですか?」

「こ、こ・・・さん?」


パチパチッと瞬きをした名前は、本当に美形である。





「はい。四天王の一人で、いろいろ助けて貰ったんです」

「そっ、そうなんですか・・・ぇ、ぇとっ、わ、私がお聞きしたいのはっ、その方のっ、ことで・・・」



「ココさんの?」


名前はフルフルッとふるえながら「はぃ・・・」と返事をした。




「し、四天王の方だったんです、ね・・・たった、一度だけ・・・でしたから、気づきません、でしたっ」

「ぇーっと・・・そのココさんが、どうかしたんですか?」





「っ・・・ぁ、あのッ」


目は今にも泣きそうに歪められている。

小松は慌てつつも「ぉ、落ち着いて」と言う。





「そ、そのッ・・・こ、小松シェフは・・・ココ、さんの・・・連絡先とかは・・・」


「知ってますよ?けど、どうして・・・」


「そ、それ、は・・・ぅっ、うッ」

呼吸が上手にできなくなったのか、口をパクパクッと動かした名前。




「わぁああ!?だ、だから落ち着いてくださいっ!」

これはヤバイと小松は名前の背中を全力でさする。




「ご、ごめんな、さぃっ・・・そ、そのっ、私はッ」




カァッと顔を赤くして俯いている名前に、小松は脳裏に一つのことがひらめく。




「もしかして、ココさんのことが気になってたり・・・?」

「ッ!?わ、私は、ぁ・・・」



グワァァァアアッと名前の顔が真っ赤に染まる。




「わっ!?名前さんっ!?ぉぉおおお、落ち着いてくださいってば!」

「っ、わ、私はっ、そのッ・・・ぅ、ハァッ、ぅうっ」


「わ、わかりました!連絡先を教えます!だ、だから呼吸をちゃんとしてくださいぃぃいいいいいっ」





その後、またガクッと気絶をした名前の枕元にココへの連絡先を書いた紙をそっと置いておいた小松は、驚くぐらいの疲労感に襲われた。




おまけ



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