生と死を繰り返す街がある。
ナマエはそこの住人である。
まるで会社員のようなぴしっとしたスーツを身に纏っているナマエの頭には、一つの機械が埋め込まれている。
「今日は買い物にでも行こうかな」
ピピッ
【――死亡確率23%】
死亡確率を一瞬にして割り出す機械だ。
昔々、とある科学者が幼い彼に植え付けたソレ。
幼い頃は病弱で何をするにも危なっかしかった彼が今成人男性として歩いていられるのは、この機械のおかげだと言っても過言ではない。
この街でも、コレによって、彼の死亡率は比較的低いものとなっている。
もちろん完全に死なないなどということはありえないのだが・・・
「慎重に行かなきゃ」
ネクタイを締め、スーツの上着を羽織ったナマエは革靴を履いて玄関のノブに手を掛けた。
【死亡確率28%に上昇】
「扉の外に誰かいるのかな」
ちらっと覗き穴から外を見ると、ランピーが歩いていた。
「なるほど。じゃぁランピーが通り過ぎるまで待ちましょうかね」
ふぅっと息をついたナマエは覗き穴からしっかり確認をしてから、家の外に出た。
道を歩きながら【死亡確率25%】やら【死亡確率19%】などという音が頭に響く。
頭の中の音が大分安定してきて、無事に食品や洗剤、生活用品を購入することが出来た。
【死亡確率9%】
「さて、安全なうちに真っ直ぐ帰ろうか・・・」
そういって紙袋を抱えながら歩くナマエの背後に走ってくる音が聞こえた。
「ナマエっ」
【死亡確率85%――危険です危険です危険です危険で――】
「あぁ、フリッピー」
「ぁ、会えて嬉しいよ・・・そのっ、最近会えなかったから」
目の前でしゅんっとするフリッピー。
「私はずっと家にいるからね。家はそんなに遠くないし、遊びに来ると良い」
ナマエは穏やかな笑みを浮かべている。
「ぇっ?い、いいの・・・?」
「フリッピーなら大歓迎だよ」
【危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危険危――】
「有難うナマエっ、そ、その・・・嬉しいっ」
「フリッピーが喜んでくれるなら、何時でもチョコチップクッキー用意して待ってるよ」
頭の中で響く警報をまるで無視して、ナマエはフリッピーの頭を開いている手でそっと撫でた。
「〜〜〜っ、だ、大好きナマエっ」
「私もだよ」
ドーンッ
遠くから響く爆発音。
【死亡確率99.999999....】
ザクッ
「お前も懲りねぇなぁ?頭の中じゃ警報鳴ってんだろ?なのに逃げねぇなんて、頭可笑しいんじゃねぇか?」
ナマエの胸に埋まったナイフ。彼の口からコポッと血が出た。
「フリッピーに殺されるなら、構わないかなって」
にこっと笑ったナマエは、その日の命を静かに終えた。
死亡確率が何時も低い彼だが・・・
想い人のフリッピーの前では、いともたやすく死んでしまう。
それが彼、ナマエなのだ。
死亡率エンドレスナイン
割と気に入っている設定のこの子。
デフォルト名:レスナ
頭の中に機械が埋め込まれている。
警報のおかげで死亡率は他の住人達より低いが、フリッピーの前では警報を完全に無視する。←