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何が原因だったかはわからない。

きっとこれから先も分かることはないのだろう。


ある日突然、俺はこの街に来た。街の名はハッピーツリータウン。ハッピーツリーがシンボルの、生死を繰り返す街・・・


そう。俺は来てしまったのだ・・・ハートフルボッコアニメの世界に。






この街はやはり生死を繰り返す。既に俺は死を経験しているからそれは確かだ。

どう立ち振る舞うのが利口なのだろうか。生憎そこまで頭の良くない俺にはわからない。


けれども死にたくはない。死んで生き返るとしても、死ぬのは当然痛い。それを一度ではなく何度も経験するなんて、気が可笑しくなってしまいそうだ。


・・・あぁ、だからこの街の奴等は揃いも揃って何処か可笑しいのだろう。

俺もそう遠くない将来そうなってしまうのだろうか。そう思うと、猶更死にたくない・・・


この街に来てすぐ、両腕の無い大工が建ててくれた家でガクガクと震える俺は考えに考えた。家の中でさえ危険なのだ。早くどうにかしなければ――







「お願いします!俺を強いヒーローにしてください!!!!」

「弟子入り志願かい!」







考えた末に選んだ苦肉の策。俺はスプレンディドに弟子入りすることにした。



彼の死亡率は極端に低い。クリプトナッツさえなければ彼は無敵と言っても過言ではない。

別にヒーローに成りたいわけじゃない。この世界で、ヒーローなんて無意味だ。助けたって別の場所で死んでるし、このヒーローに至っては逆に殺してるし。



「前々からヒーローに憧れてたんです!」

「うんうん!その熱意はとても素晴らしい!」


ヒーローに憧れてたとかそんな話もちろん嘘なのだが、このヒーローは嬉しそうに頷いていた。




「じゃぁ、これから君は僕の弟子だ!よろしくね!」

「よ、よろしくお願いします!」



どうやら弟子に迎え入れて貰えるらしい。

ガシッ!!!とお互いに握手をした。その時軽く骨にヒビ入ったけど、これで多少は死亡率も減るだろうと安心した、のだが・・・















「ぅうッ・・・!!!」

死亡率、全然減ってないんですけど。



弟子入りしてからしばらく、俺は死にまくっていた。

まず、スプレンディドの家に行こうとして死ぬ。スプレンディドとトレーニングをしようとして死ぬ。スプレンディドの助手として人を助けに行って死ぬ。


唯一死ににくいのはスプレンディドの家の中なのだが、不用意に窓の外へ顔を出せば窓枠で首チョンパされたり鳥に食われて死ぬ。

驚くべきことに、死亡フラグの一人であり最近じゃ結構仲も良くなったスプレンディドには一度たりとも殺されてはいない。殺されないのは有難いが、出来れば守って欲しいものだ。



・・・そんな我が儘なことを考えていたからだろうか。


外でヒーローになるための特訓中、視界にひゅんっ!とこちらに飛んでくる何か。

慌てて避けると、どぎゃんっ!と何かが地面を抉った。見ればそれは、俺の拳ぐらいのサイズの石だった。





「えっ、え?す、スプレンディド?」

飛んできた方向を確認した俺は、大きく目を見開き、口を引き攣らせながら相手の名を呼ぶ。



「何だい!ナマエ!」

「な、何で今、俺の足を狙ったんだ・・・?」


足元に開いた大きな穴に背筋がぞくりとする。後少し反応が遅れていれば、俺の足はおじゃんになっていたことだろう。



問題は、彼が間違えて投げたのではなく・・・確実に俺の足を狙って投げてきたことだ。避けられたことは奇跡に等しい。


まさかこれも訓練とでも言うのだろうか。

無茶苦茶なパワーを持った彼だったが、今までは無理な訓練などさせなかったのに・・・

此処に来て『じゃぁこの飛んでくる石を避け続けようか!』なんて言われた日には、俺は軽く100回以上死ぬと思う。







「君は何時も死ぬだろう?」

「あ、あぁ・・・」


キラキラした笑みを浮かべる彼が恐ろしい。






「ナマエは無闇に動き回るから死んでしまうんだ!だったら、足を無くして動けないようにすれば良い!」

輝かしい笑顔のまま、名案とばかりに言う彼に血の気が引いた。




「僕の家にずっといるんだよ。ここしばらく君を観察してたけど、僕の家の中が一番安全だろう?」

「で、でもな、スプレンディド・・・」


後ずさる俺にスプレンディドが近づいてくる。

有り得ない速度で飛べるような彼から逃げることは出来ないだろうことは明白だが、逃げたい気持ちは俺の足を動かす。



笑顔のままのスプレンディドはまさに“死天王”の名に恥じない程恐ろしい存在だった。








籠の中へおいでよ






「大丈夫!ナマエはこの僕が守ってあげるからね!」



あ、駄目だこのヒーロー、全然わかってない。

俺は自らの選択が限りなく失敗に等しいことを理解し、項垂れた。



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