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弟の目は他の兄弟とは違う色が宿っていた。



牙を削がれている私達の組。

その組の中で、弟の目は鋭すぎた。


他の兄弟達が弟を馬鹿にする中、私はそっと弟に・・・








「父上様の力を色濃く受け継いだんだ。それを誇りに思うと良い」







そう言って笑いかけた。


私は兄弟達の中でも序列が高い方だったけど、神通力がほとんど使えないほど、弱かった。

だけど弟は強い。父上様には劣るだろうけど、兄弟達の中ではきっと一番。


四国にその力は不必要だと周囲が言っても、父上様の素晴らしい力を受け継いだことを誇りに思うことこそ、素晴らしいことだと私は思う。








「兄上」


ある時、弟に声をかけられた。

弟は私にそっと近付き「お願いがあるんです、兄上」と言ってきた。


私は笑顔で「何だい?」と聞き返すと、弟は・・・








「ボクと一緒に、百鬼夜行を作って欲しいんです」







「ぇ・・・?」

一瞬、耳を疑った。


弟が抱いていた大きすぎる野望に、くらっとしてしまいそうになる。



「兄上は・・・ボクを、理解してくれますよね?」

そういって私を見上げる双眼に、軽く息を呑んだ。



「兄上、兄上は、ボクの力を認めてくれますよね?」

ギュッと握られた服の裾。

それを振りほどく気には、なれなかった。



「・・・玉章」

私は、そっと弟・・・玉章を抱き締めることで、返事をした。



後悔していない言ったら嘘になる。

本当なら、兄として・・・弟を止めるべきだったのかもしれない。

けれど、私を必要とした可愛い可愛い弟のために、私は微弱な力を最大限に活用して、弟をサポートした。





本当は知っていた。




玉章のやっていることは、間違っていることも。

玉章の支配は畏れではなく、力による恐怖だということも。

玉章を慕っている妖怪だって、本当はいたことも。



全て知っていながら、私は玉章を止めなかった。

だから――










「全ての責任は私にあります。父上様の責任でもなく、他の四国の妖怪の責任でもありません。全て、責任は私がこの身に受けたく思います」


ぬら組の妖怪達の前で、私は膝を付き、土下座をする。



「ぁ、にうえ・・・」

ぼろぼろで、こちらに必死に手を伸ばしている玉章に小さく笑いかけて「私は」とぬら組の若頭に言葉をかける。



「此処で死しても良い。父上様と玉章・・・残った四国の妖怪達を守れるなら、今此処で腹を切っても良い。自ら舌を噛み切っても良い。貴方のその刃で身体を二つに割っても良い。ですから――」


「か、顔を・・・上げて下さい」


ぬら組の若頭は、昼の姿になっており、そのまま私に言う。





「何で、貴方はそこまで・・・」

「・・・大切な弟です。何よりも大切で、愛おしい・・・兄である私が、あの子を守らないと・・・あの子は本当に独りぼっちになってしまう・・・」


ズリッ、ズリッと、ぼろぼろの玉章が私のところに来る。

兄上、兄上。そう呼びながら。


私は小さく笑みを浮かべて、玉章を見る。






「・・・弟を守れるためなら、死しても構いません」


そう言いながら懐に隠し持っていた小刀で、自分の腹を――







ザシュッ


周囲の妖怪達の驚きの表情。

腹に広がる激痛。


父上様の怒鳴るような叫び声。

玉章の・・・






絶望したような顔。






私は・・・



「どうか・・・玉章を、救って・・・」



そう呟き、意識を失った。













――・・・





『――』

泣き声が聞こえた。

まるで小さな子供のように、泣きじゃくる声。


ゆっくりと私は目を開ける。




「・・・ぁ、に・・・ぅえッ」


「・・・玉章・・・?」

見覚えのある場所。

嗚呼・・・


四国だ。私達の故郷・・・。





玉章の顔には、一筋の傷があり、その目からは大粒の涙が流れていた。



「兄上っ、兄上兄上兄上ッ・・・」

「玉章・・・」


どうやら、私は生き残ったらしい。




「もう・・・いなくならないでッ、兄上・・・」


ギュゥッと抱きついてきた玉章をそっと抱き締め返す。




「・・・玉章・・・」

「兄上だけで良いッ、ボクを理解してくれるのは、兄上だけで良いからっ・・・」


「それは違うよ、玉章・・・」

私はそっと笑いかける。



「玉章を理解してくれる者は、まだまだ、沢山いるはずだよ・・・」


そう言いながら玉章の頭を撫でる。







「大丈夫・・・ゆっくりとで良いから、ゆっくりと・・・」


だから、何時か玉章が心のソコから楽しいと笑えるような仲間を、






「一緒に探して行こう」


それまでは・・・

ううん。その後も、












「私は玉章の傍にいるからね」







笑顔で言えば、玉章はコクコクッと何でも頷いて、私の胸に顔を埋めて泣いた。




親愛なるお兄様



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