大会では常に最下位。
他校からその存在すらほぼ知られていない中学校があった。
しかしある年・・・その中学校のバスケ部は、あのキセキの世代がいる中学校のバスケ部へ勝負を挑み・・・そこから多くの点を奪った。
僅差で負けてしまいはしたが、その実力はキセキの世代と何ら変わりない・・・いや、それ以上のものだった。
しかも点数を奪ったのはたった一人の選手・・・
更に驚くべきことは、その選手は――バスケ部ではなく、バスケ部の助っ人としてやってきた・・・サッカー部だったということだ。
バスケの腕はピカイチ。サッカーの実力もなかなかのもの。
彼は中学では最後の最後までバスケ部に入ることはなく、結局キセキの世代との試合は、たった一回で終わった。
「その名前君とこうやって再会出来た僕は、幸運だと思います」
「・・・ぇーっと、君は誰かな?」
自分のことを語る黒子に、名前は困ったように笑った。
「黒子です。帝光にいました。試合もしてます」
「んー・・・あぁ!パス回ししてた子?」
「!気づいてくれてたんですね。感激です」
「ぅ、うん。まぁね」
ぱぁっと黒子の周りに花が舞う・・・ような幻覚が見えた。
「あの、高校でもサッカー部に?」
「ん?ぁー、サッカー部は友達に誘われてやってたから。あの時のバスケも、友達に助っ人頼まれちゃって。今はテニス部でもやろうかなって――」
「是非バスケ部に入りましょうよ」
「あれ?今の台詞聞いてた?俺、テニス部に入ろうかと――」
「これ、入部届です。ボールペンもどうぞ」
「んー・・・聞いてる?」
「僕、貴方とバスケが出来るなんて、夢みたいです」
キラキラッとした目が名前を見つめる。
もし此処でNOと言ってしまえば、黒子はあからさまに落胆するだろう。
「ぁー、ぇーっと・・・そっか」
もはや考える気力を失った名前は、ため息をつきつつ黒子から入部届を受け取った。
ボールペンでささっと名前を書いた名前は「これで良い?」と黒子に差し出す。
黒子は「はい」とその用紙を嬉しそうに抱き締める。
「クラスは隣でしたよね?何時でも遊びに行きます。お昼は一緒に食べましょう。後、名前君はバニラシェイク好きですか?帰りに一緒にマジバに行きましょうね」
「ぇ?ぁ、ぁー、うん」
黒子の勢いに押されつつ、名前は顔を引き攣らせながら頷いた。
「本当に夢みたいです」
にこっと笑った黒子。
名前はその顔をじっと見つめ「そっか」と笑い返した。
昔からやりたいことが特になく、部活もころころ変えてしまっていた名前は・・・
高校に入ってから、半ば無理やりバスケ一筋になった。
「今度名前君の家に遊びに行かせてくださいね」
「ぇ?ぁー・・・いいよ」
「嬉しいです」
・・・一つ言えることがあるとすれば――『黒子は強引』ということである。
噂のサッカー部を手に入れろ