「黒子君。一緒にお昼食べない?」
「ぇ・・・」
僕は影が薄い。
バスケではそれを利用してる。
だから、僕に自ら気づいてくれる人はとても少ない。
中学の頃は、相手から僕に話しかけてくれたことなんて、数える程度だったような気もする。
それなのに、彼はすんなり僕を見つけ、すんなりとお誘いの言葉を述べた。
「駄目?」
「ぁ・・・駄目じゃ、ないです」
突然のことで驚いていた僕は慌てて頷き「そっか」と笑う彼と共に昼食を食べた。
それからは、彼と昼食を取ることが多くなって、お互いの家を行き来することも多くなって・・・
トサッ
「・・・黒子君は、色白いよね」
「そう、ですか?」
ベッドに押し倒されているこの状況は、逃げるべきなのでしょうか。
押し倒されたと言っても、とんっと軽く押されただけ。
抵抗することもなくベッドに埋もれた僕の頬を、名前君が小さく笑いながら撫でました。
その心地良いことと言ったら・・・
ついつい目を細めてしまう僕を、名前君はきゅっと抱き締めました。
「名前君・・・」
乱暴ではない、ただ只管に優しい抱擁に、僕は抵抗という言葉すら忘れそう。
「黒子君。僕は、実はちょっと嬉しかったんだ」
僕の首筋に顔をうずめたままの名前君が、小さな声で言う。
「何をですか・・・?」
「黒子君が影が薄くて」
顔を上げた彼は困ったように笑っていて、そっと僕の額に自分の額をくっつけた。
あまりに近すぎる距離に、ついつい息をのんだ。
「だって・・・僕の周りは、すぐには君を認知できないんだ。僕が最初に見つけられる・・・それがすごく嬉しくて、僕に見つけられる黒子君に、何度も感謝した」
「・・・僕も、嬉しかったですよ。まるでそれが当然のように誰よりも先に僕を見つけてくれる名前君に、何度も感謝しました」
気付けば僕らはお互いに目を閉じていて、お互いの唇は触れ合っていました。
つい先日までただの友達だった人と、キスをしたんです。
なのに、何故でしょうね。
全然嫌じゃないんです。
逆に、僕が彼にキスできることに、何処か優越感すら感じてしまいそうなんです。
それは、もしかすると・・・
「名前君。好きです」
「・・・・・・」
こういうことなんでしょう?
僕の言葉に、名前君はちょっとだけ目を見開き、それからぽりぽりっと頬を掻いて苦笑。
「・・・酷いなぁ、黒子君。僕の台詞、先に言っちゃうなんて」
「先に言ってしまったものは仕方ないです。今からでも言ってください」
「ん。じゃぁ・・・言うよ?」
今更ですが、名前君に押し倒されているこの状況に、心臓がきゅぅっとなります。
「黒子君。大好き」
僕の視界いっぱいに広がる名前君の優しい微笑み。
「・・・僕も、です」
あまりに自然に、再びお互い唇をくっつけます。
そして自然に抱き締めあって「好き」と言い合って・・・
「たぶん・・・君が僕を見つけてくれた時から、全て決まっていたんでしょうね」
「・・・見つけられて良かった」
「えぇ。そうですね」
見つけてくれて、有難うございます。
僕を見つける彼