俺の友達は無口だ。
喋れないわけじゃないはずだ。けど無口なのだ。
俺はと言えばよく喋る方だ。
人にはお喋りだって怒られるが、トミーは怒らない。
まぁ、喋らないからもしかしたら内心うざいと思ってるかもしれないが。
とりあえず、普段俺とトミーが一緒にいるとき、喋っているのは俺オンリー。
唯一の救いは、トミーが時折相槌するようにうなづいてくれることだ。
だからちゃんと俺の話は聞いてくれてると思う。きっとそうだ。
「――でさ、その時俺は思い出したんだ。やべぇ財布を忘れてたって。買い物に行くのに財布を忘れるなんて、笑えるだろ?トミー」
「・・・・・・」
こくっとトミーが頷いた。
俺は「だろ?」と笑いながら「それでさー」と呟きを話し始める。
俺がいるのはトミーの家のトミーの部屋。
トミーの家族にはちゃんと自己紹介済みだ。
トミーは友達少ない・・・というか、友達俺しかいないから、結構俺はこの家で重宝されていたりする。
「急いで家に帰ったんだけど、その時思いっきりこけちまってさ。その現場を女の子たちに見られちまったときには、流石の俺も肝が冷えたぜ。で、その後は――・・・ん?どうした、トミー」
俺が話してる途中だってのに、トミーが突然俺の腕を掴んできた。
「何だよ、トミー」
「・・・・・・」
「ぉーお、トミー?」
トミーが俺の体をぺたぺたと触ってくる。
おいコラ、セクハラか?
俺はしばらくトミーの行動を観察。
トミーは、俺の腕やら足やらを重点的に触ってくる。
「ん。もしかして、怪我したんじゃないかって心配してくれてんのか?」
「・・・・・・」
こくこくっと頷くトミーに、俺は「ぁー、そっか」と頷いた。
喋らない友達だが、俺に優しい友達でもある。
俺はへらっと笑って「膝をちょーっと擦りむいただけだ」と笑った。
その瞬間、トミーが血相を変えて俺のズボンの裾を捲し上げた。
おいおい、と声を上げる俺を無視して、トミーは膝にある小さな傷を見てがたがたっと震えた。
これぐらいの怪我で大げさだなぁ・・・
「もう治りかけだから気にすんなよ、トミー。な?平気だからさ」
笑顔で言えば、トミーはやっと安心したのだろう。
俺のズボンを丁寧に元に戻してくれる。
「続き話しても良いか?」
頷いたトミーを見てから俺は再び話し始める。
さっき、トミーが頷いてくれるのが唯一の救いだっていったの、ちょっと訂正。
トミーが俺の話をちゃんと聞いて、俺のことを全力で心配してくれること・・・
それが、一番の幸せかもしれない。
俺の友達は無口です