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嗚呼、貞子ちゃん貞子ちゃん貞子ちゃん・・・

ザザザッとノイズの響くビデオを見つめながら、俺はドキドキしながら待っていた。


画面に映るのは井戸。


井戸から、次第に長い黒髪の女がこちらへ、そうこちらへ・・・





ぁれ?





「ちょっ!貞子ちゃん、どうして帰っちゃうの!?何で俺を確認した瞬間に帰っちゃうの!?何なに、照れてる!?大丈夫だよ、どんと来い!!!!!むしろ来い!早くおいでよ貞子ちゃん!」


さっさと井戸に戻って行こうとする貞子ちゃんの映る画面に向かって叫ぶ。

あ。貞子ちゃん、ちらっとこっちを見て・・・


わっ!?ダッシュで井戸に戻っただと!?




「何でだよ、貞子ちゃぁぁぁぁあああんッ!!!!!」



完全に貞子ちゃんがいなくなってしまった画面に向かってガッデム。

何故だ貞子ちゃんッ、俺はこんなにも君が大好きなのに!!!!!




・・・あれが駄目だったのか?


死の宣告と言われる電話がかかってきた時に「貞子ちゃん!やっと電話をかけてきてくれたんだね!君からの電話楽しみにしてたんだ!さぁ、早く俺のところへおいで!そして楽しいことをしよう!大丈夫、最初は優しくしてあげるからね!ハァハァッ」って言ったのが駄目だったのだろうか・・・

たしかにあの時、貞子ちゃんは無言で電話を切っていたような気もする。


そして、つい先日運命の日・・・そう!貞子ちゃんがテレビから俺のもとへやってきてくれる日になった。

テレビから出てきた貞子ちゃんに、俺は飛び掛かった。そりゃもう、凄い勢いで。



その時発せられた貞子ちゃんの悲鳴はレアだと思う。確実に。


俺を突き飛ばしてさっさとテレビに戻ってしまった貞子ちゃんだけど、俺はあきらめずに何度もビデオを見ている。





そのたびに貞子ちゃんは寸でのところで帰ってしまうんだ!!!!!





一度テープを巻き戻して、もう一度再生ボタンを押す。


ザザザッ


もう一度貞子ちゃんが井戸から顔を出し、こっちに・・・






「え!?今度は井戸から出ることすらないだと!?」


頭をちょっとだけ出したと思ったら、シュパッ!!!と戻ってしまった。

ち、ちくしょぉッ!!!!!




「貞子ちゃん!出てきてよ、貞子ちゃん!俺、本気で君のこと愛してるんだ!それこそ、君の全身舐めまわしたいぐら――」




ブツンッとビデオが消えて、テープが勝手に出てきた。


わぁ!?ついにビデオをデッキに入れることすら拒否だと!?

でも俺はめげないぞ!どんなにデッキに抵抗されようとも、俺は無理やりビデオをデッキに入れた。


再度映し出されたのは、もはや井戸だけ・・・





ぅうっ・・・頭すら出してくれないとは、相当だな。





「貞子ちゃん、舐めまわしたい云々はさておき、俺は本気で君が好きなんだ。愛してるんだ。だから、せめて少しだけでも姿を見せてよ。ビデオから出てきてよ、貞子ちゃん」

今度は正座をして深々と頭を下げた。


しばらくの沈黙。





「・・・・・・」

ちらっと井戸から頭が見えた。・・・貞子ちゃんだ!!!!

こっちへそぉーっとやってきた貞子ちゃん。すっごい警戒してる。


俺は笑顔を浮かべて「来て!貞子ちゃん」と両手を広げる。





貞子ちゃんがおずおずとビデオから出てきた。






「・・・・・・」


俺は目が光った。








「隙あり!!!!!」

「!?」


貞子ちゃんの手を掴んでこっちに引きずり出した。

じたばた暴れる貞子ちゃんをギューッと抱き締め「ひゃっふぅー!!!!!」と叫ぶ。





「貞子ちゃん、貞子ちゃん!大好きだよ貞子ちゃん、わぁ、やべぇ肌白いし細いし可愛いし、どうしようどうしようどうしよう、勃ちそう!!!!!」


ガッと頭を殴られた。

くらぁっとする俺の意識。


クッ・・・貞子ちゃん、細いのに力は凄いよねっ・・・


俺の腕の力が緩まった瞬間に、貞子ちゃんは脱兎のごとくテレビ画面の中、正確にはビデオの中へ逃げて行った。





ぽつーんと一人残された俺は・・・







「さぁーって、また見るか」


懲りず呪いのビデオをセットしていた。



おまわりさんこの人です



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