目の前に置かれているスイーツに、俺は感嘆の声を上げた。
「やるじゃないか、ヴィンセント」
ただ純粋に褒める俺に、ヴィンセントが嬉しそうな雰囲気を出した。
蝋細工を作る腕もなかなかだが、こんな才能があったなんて。
俺は目の前にある生クリームたっぷりのショートケーキにフォークを突き刺し、一口。
何だよコレ、マジで美味いじゃねぇか。
「とっても美味しい」
笑顔で素直にそう伝える。
ヴィンセントが小さな声で「も、もっと作る」と言っているのが聞こえた。
「そうだな。じゃぁ、今度は俺とヴィンセント、レスターとボーも交えて、4人でお茶会でもすっか。きっと楽しいぞ」
俺の言葉にヴィンセントが何度も頷いた。
褒められることが嬉しいのか、それとも4人で共に何か出来ることが嬉しいのか・・・
まぁ、どちらにしても、ヴィンセントが嬉しいなら俺も嬉しい。そのことには変わりないのだ。
ツンツンッ
ヴィンセントが控えめに俺をつつく。
なんだ?と見れば、ヴィンセントは照れたように「ナマエは、何食べたい?」と尋ねてきた。
あぁ、まったく・・・
「ヴィンセントの作ったものなら、何でも食べたい」
俺が思う中で一番の笑顔をヴィンセントに送った。
顔はその蝋のマスクで見えないが・・・ちらっと見えた耳が真っ赤になっていたことから、ヴィンセントの顔がどうなってるかなんて容易に想像できる。
「ヴィンセントは可愛いな」
「・・・!?・・・っ!」
「こらこら、照れてるからって叩くなよ」
ぺちぺちっと俺を叩いてくるヴィンセントに俺はついつい笑ってしまう。
まぁ、あんまりするとヴィンセントが拗ねてしまうかもしれないから、俺は「ほら、ヴィンセント」と呼びかけてまだ残っていたショートケーキにフォークを刺す。
フォークを持つ手とは逆の手でヴィンセントの蝋マスクをずらし、その口にケーキを近づけた。
反射的に口を開けるヴィンセント。
もぐっと自分の作ったケーキを食べたヴィンセントの顔が、ほんの少し綻んだ。
「ケーキのお礼に、紅茶でも淹れてやるよ」
ずらしたマスクを元に戻してやってから、俺は笑顔で言った。
美味しいケーキは紅茶と共に