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とあるボロアパートの一室に、キラキラした目の青年がいた。


その青年、名前の目の前には・・・――テレビ画面から這い出ようとする途中で、上半身しか出ていない状態の貞子がいた。

名前は「あ。全部出てからで良いよ」と笑う。






「貞子ちゃん。僕、貞子ちゃんにお願いがあるんだ」

「・・・?」





「これ、つけて?」

「・・・・・・」


名前の手にあるのは・・・猫耳カチューシャだった。



「初めて貞子ちゃんと見た時に思ったんだ。貞子ちゃんって、猫耳似合うなぁーって」

「・・・・・・」


まさか呪い殺そうとしている相手にそんなことを言われるなんて、流石の貞子でも思うまい。

テレビから全部出終えた貞子の手をキュッと握った名前は「駄目?」と尋ねた。



・・・天下の貞子様の手を何の躊躇もなく握るとは・・・この青年、将来大物になるぞ。←





「これつけて、僕と写真撮ってよ。待ち受けにしたいから」


笑顔で携帯を出す名前。

・・・もはや、目の前の相手を家に遊びに来た恋人か何かと勘違いしているのではないだろうか。






「ね。良いでしょ?」

かぽっと貞子の頭に猫耳が付けられる。


吃驚するのも無理はないが、それよりも貞子は今の状況が把握できていなかった。

何しろ呪いに来た相手にこんなことされるなんて・・・



「わぁ、可愛い」

笑顔でそういった名前は「けど、顔よく見えないや」と残念そうに眉を寄せる。



「貞子ちゃん、折角美人なんだからもったいないよ」


笑顔でそういった名前の手にはこれまた可愛らしい苺の飾りのついたヘアピンだ。

そのヘアピンで見事貞子の顔を露わにする。


貞子は慌てたように身体を動かすが、名前がにこにこと「可愛い〜」と言うと諦めたように動きを止めた。





「貞子ちゃん可愛いなぁ。よし!じゃぁ早速写真撮ろ!」


「!?」




ささっと貞子に身を寄せてその肩を抱く名前。

これには流石の貞子も抵抗を――






「はい、チーズ♪」


「・・・・・・」





する暇もなかった。





ささっと携帯の画像を確認する名前は「わぁ」と嬉しそうな声を上げる。



「見てよ貞子ちゃん。貞子ちゃんって写真写り良いね。ますます惚れ直しちゃった」

えへへっと笑った名前は「待ち受け待ち受け♪」と言いながら携帯を弄り始めた。

その様子をただ見てることしかできない貞子。




「貞子ちゃん。今度デートしようよ。何処が良い?貞子ちゃんとお化け屋敷っていうのもオツかもね」

「・・・・・・」



「あ。貞子ちゃんは遊園地とかは好き?もし嫌なら、水族館・・・あ!真夜中の海っていうのも良いかも」

「・・・・・・」



「そうそう、もし行くなら――も――だよね。――で、――、――!――。ねぇ?貞子ちゃん」


にこにこ笑顔の名前に・・・

貞子はわけもわからず頷いた。





「やったぁ。じゃぁ今度テレビの前で待ってるからね」


取りあえずにこにこ笑っている名前に、貞子は内心おろおろするしかなかった。




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