とある日から、俺は不死身になりました。
いや、もしかしたら生まれたときから不死身だったのかもしれない。
生憎自分が不死身だと知ったのは大人になってから・・・
知人と狩猟に出てて、知人が誤射した弾が俺の脳天をぶち抜いたときだ。
その時は俺だって驚いたさ。知人はもっと驚いてたがな。
知人は俺が頭ぶち抜かれても死ななかったと周囲に言いまわったが、もちろん誰も信じなかった。
おかげで、知人は精神病患者みたいな扱いを受けるようになっちまって・・・あぁ、悪いことしたなぁって、今でもちょっと罪悪感感じてる。
けどさ、不死身なのは俺のせいじゃないと思うんだ。そう、俺の体の異変は、俺のせいじゃない。
「そう!俺のせいじゃないんだ!」
つい先ほど心臓ど真ん中に突き刺されたナイフをズルッと取り、俺は泣きながら叫んだ。
痛い。マジ痛い。けど死なない。マジ不思議。
目の前の殺人鬼はそんな俺に軽く驚いていた。驚きたいのはこっちだ。
まさか、今話題の殺人鬼が俺の目の前にいるなんて、そんなの考えたくもない。
殺人鬼ってアレだろ?
人を殺す鬼って書くじゃん。・・・俺死なないじゃん!
「・・・・・・」
白いマスク、青い作業着、190はあるかなぁ?というぐらいの長身の男は、死なない俺を見て黙っている。
俺の心臓ぶっさして終わりだと思っていたのだろう。俺だって、本当ならここでジエンドかと思ったさ!
痛みで泣きながらナイフを抜き取った俺は、そりゃもう異質だったことだろう。
自分が死なないと知った日から、俺はいろいろ試した。
とりあえず屋上から飛び降りてみた。・・・スプラッタになった。ありえないほど痛かったし、身体が再生するのに大分かかった。だからもう飛び降りたりなんかしない。
毒も呑んでみた。・・・普通に苦しかった。もう絶対飲まないぞ。
首を落としてみた。・・・身体から首が離れたのに普通に瞬きとかしちゃう自分がキモかった。すぐに頭を首にくっつけたけど、あれはホラーだ。
「死なないからって、痛いのには変わりないんだぞッ・・・血ぃ、沢山出てるし・・・痛いし、怖いし・・・」
自分の手にあるナイフは、そりゃもう血みどろ。・・・気絶しても良いだろうか。
「・・・・・・」
「何か言ってくれよぉっ・・・何か、俺が勝手に泣いてるみたいじゃんかよぉっ」
涙をぐしぐしと拭いながら言う。
が、相手は喋らない。
・・・いや、もしかしたら喋れないのか?
そう思った俺はポケットをまさぐってメモ用紙とペンを発見。
丁度良いから、恐る恐るソレを渡してみた。
思いの他素直にソレを受け取った男はすらすらとメモ用紙に文字を書いて俺に見せた。
【何で死なない?】
「俺が聞きたいぐらいだよぉっ・・・いつからかわかんないけど、不死身になってて・・・」
あぁ、畜生。刺された胸から血が流れてる。
早くふさがらないかなっ、痛くてしょうがないよ・・・
【不死身なんだ】
「ん・・・」
こくっと頷いた瞬間、ガシッと腕を掴まれた。
う、腕切断される!?
「は、離せよっ」
慌てる俺に、男はまたメモ用紙を見せた。
【連れて帰る】
「・・・ぇ」
さぁっと青くなる俺を男はいとも簡単に担ぎ上げて歩き出した。
「は、離してくれよっ!ぉ、俺が死なないからって、いろんな殺し方試す気なのか!?何ソレ怖いッ!!!!」
自分で言ってて怖くなったじゃないか!!!!!
俺を担いだままメモ用紙に何かを書く男。・・・器用だな。
【殺さない】
「ぇ・・・ほ、本当かっ!?」
ぱぁっと心に光がさした俺は抵抗するのは一時停止。
殺されないなら無問題だ。・・・いや、問題はあるかもしれないけどさ。
やっと顔に余裕が戻ってきた俺は、何時の間にやらその男の家っぽいところに付いてて・・・
ガチャンッ
「へ?」
【今日から此処に一緒に住む】
「えぇぇぇぇええええッ!?!!!!??!?!??!」
何時の間にやら、俺は殺人鬼(後に知ったんだがマイケルというらしい)と一つ屋根の下に暮らすことになっていた。
・・・何ソレ怖い!!!!!!!
不死身男の受難