俺の同僚が殺されました。
――俺の恋人の手によって。
結構仲良くやってた同僚だったんだがなぁ。
「ハァッ・・・ったく、何やってんだよ、マイケル」
呆れたように声を上げた俺に、マイケルがすかさず抱きついてくる。
おいおい、俺のスーツに血が付くだろうが・・・
けどまぁ、俺はマイケルを引きはがす気力すらなく、ただその顔に苦笑を浮かべた。
今日の昼間までは同僚だったヤツの身体は、もう見るも無残な姿になって、人気の少ない路上で地に伏していた。
血の臭いが周囲の空気さえ濁している。
俺は軽く顔をしかめる。
同僚が死んだことへの悲しみはない。ただ俺は怪訝そうな顔をするだけ。
「何で殺したんだよ」
「(ソイツ、ナマエに近づきすぎだった・・・ナマエは、僕のなのに)」
「おいおい・・・」
呆れた声を上げながら俺はマイケルの頭を撫でる。
すり寄ってくるマイケルは可愛いが、コイツの一応は殺人鬼。
俺はと言えば、ごくごく普通の会社に勤める、ごくごく一般的なサラリーマン。
殺人鬼とこうやってじゃれ合ってられる俺は、殺人鬼以上に異常なのかもしれない。
まぁ、マイケルが好きなのには変わりないけどな。
「そんぐらい気にすんな。俺がお前のだってのには変わりねぇんだから」
「(・・・それでも嫌)」
「ったく、お前なぁ・・・」
俺はマスク越しにマイケルの唇にキスをする。
「お前のことを愛してる俺を・・・信じてくれるだろ?」
「(・・・うん、信じてる)」
「そっか。安心した」
早々に俺の頭の中から同僚との思い出は消去される。
というか、アイツの名前なんだったっけ?
同僚っつっても、ただの他人だろ?アイツと俺、そんなに仲良くしてたっけ?
あぁ、もはやアイツがもともとどんな顔をしていたのかさえわからない。生憎、既に同僚の身体がスプラッタ状態だからな。
「俺がマイケル以外を愛せるわけねぇだろ」
ギューッとマイケルを抱き締め返せば、マイケルは嬉しそうに頭をすり寄せてきた。
まったく、可愛いヤツだな。
俺は再びマイケルにキスを贈ろうとする。
その時、少し離れた場所から悲鳴のようなものが聞こえた気がした。
マイケルがバッと俺から離れ、声のした方を見る。
ぁー、もぉ・・・
「あんま長引かないようにしろよ」
ため息交じりにいった俺に、マイケルはコクコクッと頷いてから、ナイフを携えて悲鳴を上げた人間のもとへと向かった。
ぁーあ、ご愁傷さん。
君がため