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ハウルに心臓を取られる。




小さな街で広まった噂。

狙うのは美人の女性ばかり。


けど、俺は思うんだ・・・





「心臓って、物理的な物じゃなくて、“ココロ”って意味じゃねぇの?」


「あ。そういう考えもあるよな」

俺の言葉に頷いた友人に「だろ」と言う。



「大方、ハウルに惚れちゃった年頃の女の子が『ハウルに心臓奪われちゃった・・・』とか何とか言ったのが、ことの始まりだろ?きっと」

「そう言われると、そんな気がしてきた」


「だろぉ?魔法使いハウルって有名だけどさぁ、流石に心臓をコレクションしたり、心臓食べたりなんて、そんなグロいことするとは思えねぇよ。荒地の魔女なら、わからんでもないけどな」



荒地の魔女っていうヤツも有名だ。

あの魔女なら、心臓をごっそり持っていきそうな感じだ。おぉ、怖い怖い。



「まぁ、軍人の俺らからしてみれば、ハウルがどんな人物であれ、捕らえるのが義務のような感じだけどな」

見つけ次第、捕まえて王宮に連行する。




「捕らえたら、王宮に連れて行くんだろ?もし捕まえられたら、大手柄だな」


ニカッと笑った友人に、俺は軽くため息をついて「馬鹿言え。相手は魔法使いだぞ」と注意した。




「そう簡単に捕まえられるわけがないし、俺は出世に興味がないんでね。俺は、この店で薄い酒を飲んでる方が、お似合いだ」


「よく言う。お前、外出れば女の子にモテモテだろうが。お前の方がハウルよりも多く心臓を奪っちゃってるんじゃねぇの?」



まるで俺が女垂らしのような言い草だな。

軽く眉を寄せながら「冗談よせ」と友人を一蹴する。



「俺は、自分から声をかけたことなんて一度も無い」

「モテるヤツはコレだから」


深くため息をついた友人を横目に、俺はそこまで美味しくない酒を飲む。


喉を通ったぬるい酒。

グラスの中の酒を全て飲み終えてから「ちょっと外の空気に当たってくる」と友人に酒代を渡し、店を出た。







店を出てすぐに、出来るだけ人通りの少ない裏道に行く。

そうじゃないと、すぐに女の子が声をかけてくるんだ。



俺はそういうのに興味がないせいで、鬱陶しく感じてしまう。


軍人として、市民には優しくしなければならないし、だったら最初から関わらない方がずっとマシだ。





ドンッ

「・・・っと、すまない」



曲がり角で、見知らぬ相手が俺の胸に突っ込むようにぶつかった。






「いや、こちらこそすまない」


ぶつかって来た相手がゆっくりと顔を上げる。


綺麗に手入れされた髪が、さらっと揺れ動き、その綺麗な輝く目が、俺を映し出す。

まるで女のようだと思った相手の顔をついまじまじと見る。




「あぁ、軍人の方ですか」

「まぁ・・・下っ端だがな」


ゆるりとした笑みを俺に向けた相手に、俺も出来るだけ笑う。

普段あまり笑わないせいで、ちょっとぎこちなかったかもしれない。




「貴方の名前は?」

「ナマエだ。アンタは・・・」












「ハウルです」









は・・・?

俺は軽く瞬きをした。


それを見た相手・・・ハウルは、まるでからかうようにクスクスッと笑う。





「・・・わかった。ハウルだな。覚えとく」

「えぇ。僕も、ナマエのことを覚えとくよ」



くるっと踵を返したハウルの背中を眺めつつ俺は少しの間ボーッとしていた。









――ハウルに心臓を取られる









「・・・ハハッ。まさかな」


俺は自分を落ち着けつつ、友人がまだいるはずの店に戻った。





「ん?ナマエ、ポケットから何かはみ出してるぞ」

「?」

友人に指摘されてポケットを見れば、小さな紙切れが入っていた。







【今度、機会があればお茶でもしましょう】






「お?逆ナンか?やっぱり、やるなぁナマエは」


横から覗き込んできた友人が、若干悔しそうな顔をした。

差出人が誰からかなんて、わかりきってる。




「やっぱり、ナマエは心臓を奪っちまうヤツだな」


「さぁな。あながち・・・奪い合っただけかも」




「何々?お前も、その子のこと、気に入っちまったのか?」

「さぁ・・・な」




ただ、この紙切れはしばらく大切に取っておこうと決めた。




心臓の奪い合い



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