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「#エロ」のBL小説を読む
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- ナノ -
夕方家に帰る途中、正面を歩いて来たその人に俺は「名前さん!」と声を上げて駆け寄った。
両手に買い物袋を持ったその人は俺の声に気付くとこちらをぱっと見て笑みを浮かべる。
「やあ、サイタマ君」
聞きなれた優しい声に口元が緩みそうになるのを抑えつつ名前さんが両手に持つ買い物袋の片一方を受け取る。
有難う、と笑みを深めてくれる名前さんに俺も笑う。
「お礼に、今日はサイタマ君の好きなものを作ってあげるね」
「名前さんが作るなら、何でも好きですけどね」
「ふふっ、有難う。そう言って貰えると作り甲斐があるよ」
名前さんの作る料理はお世辞抜きで美味しいからな、と今日の夕飯の御裾分けが楽しみになる。
名前さんは昔から俺に良くしてくれる近所の人だ。
学生の頃はもちろんのこと、なかなか就活が上手くいかない今もそれはそれはお世話になっている。今だってよく差し入れを貰っている。
最初はただ有難いなぁって思うだけだったのに、次第に名前さん自身と会う事自体に喜びを感じ始めた。
それが恋だと気付いてしまうまでにはあまり時間を有さなかった。
恋していると自覚してしまえば後は石ころが坂道を転がるよりもずっと速いスピードで俺は名前さんに夢中になっていった。
少しでも名前さんに良いところ見せたくて、少しでも名前さんの心配を減らしてあげたくて、そう思って挑んだ就活もなかなか良い結果を残すことは出来なかった。
就活が全然上手くいかない俺に対しても、名前さんは優しく「次があるよ」と言ってくれた。
けれどもう次は無い。就活を諦めたとかそういうことではないが、俺は――
「就活、頑張ってる?」
「あー・・・その事なんですけど・・・」
名前さんと並んで歩きながら頬を掻く。
「俺、ヒーローになろうと思います」
「・・・ヒーロー?」
ぽかんとした名前さんに「しまった」と思った。
突然ヒーローなんて、ついに頭が可笑しくなったと思われたって仕方がない。
けれど俺はもう決めた。俺はヒーローになる。
・・・でも、名前さんに可笑しいヤツだと思われるのは本意じゃないな。どうしようか、まずはヒーローになろうと思った顛末を話して、それから――
「そっか、頑張ってね」
「・・・へ?」
変な声が出た。
今度は俺がぽかんとして名前さんを見れば、名前さんはいつもと変わらないにこにこ顔で「そっかそっか、ヒーローかぁ」なんて言っている。
「お、驚かないんですか?」
「確かにヒーローになるって言うとは思わなかったけど、僕はサイタマ君のやりたいことは何だって応援するつもりだよ」
「名前さん・・・!」
惚れ直した。ホントに名前さんを好きになって良かった。
俺がヒーローなら名前さんは絶対ヒロインだ。いや、格好良いのは断然名前さんだから、あれか?守られ主人公ってヤツか?うん、どうでも良いけど名前さん素敵。
「でもサイタマ君、ヒーローってどうやったらなれるの?」
「・・・・・・」
名前さんの言葉に言葉が詰まる。
「・・・と、取りあえず鍛えます」
計画性も何もあったもんじゃない。震え声で宣言すれば、名前さんはにっこり笑った。
貴方はヒロイン系ヒーロー
「そっか、じゃぁ一緒に頑張ろうね」
一緒に。
そうナチュラルに言ってくれる名前さんマジ愛してる。
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