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好きな子は死んだと聞かされてました。



落ち込みました。落ち込むなんてものじゃありませんでした。

好きなあの子が天国にいると言うなら、出来れば僕も行きたかったのですが、臆病な僕はそんなことも出来ませんでした。


好きなんです。今でも好きなんです。


せめて彼のお墓の前で泣かせてくださいって願いました。

けれどあの子のお墓も無いらしいのです。だって身体が見つからなかったそうなので。


沢山の人が死にました。

けど他はどうでも良かったです。

僕が知りたいのは好きなあの子のことだけなんです。


もうきっと僕は恋できないでしょう。

何故なら一生分の恋心をあの子に捧げてしまったからです。永遠に捧げ続けるつもりでした。


想いを伝えたかった。まだ伝えてはいなかった。

ちらりと横目で見ることしか出来なかった。

恥ずかしかった。照れてしまっていた。

恥なんて捨てて、フラれてしまう恐怖なんか殴り捨てて、あの子に一言言えば良かったのに。


たった二文字だったじゃないか。

スキって二文字。何で言えなかった?

明日言う。明日言おう。

そう思ったのは一体どれぐらい?

明日明日を積み重ねた結果がこれなんじゃ、馬鹿丸出しじゃないか。


好きなんだ。好きなんです。どうしようもなく、好きで好きでたまらなかったんです。

今も好きです。好きなんです。好きで好きでたまらなくって頭が可笑しくなってしまいそうで毎晩のようにあの子を想って涙して、それでそれでそれで――










「長い!!!20文字以内で簡潔にまとめろ!!!!」



「どうかジェノス君を僕にください」



目の前の少々頭が寒そうな男・・・サイタマへと、正座をしたまま深く深く頭を下げる名前。

サイタマの横にはジェノスがきちんと座っている。





ジェノスと名前の再会は突然だった。

偶然つけたテレビで、鬼サイボーグとしてのジェノスを見た名前はいても経ってもいられなかった。


ジェノスの暮らす家は何処かと、必死になっていろんな人に聞いた。

手に入れた情報によればジェノスはサイタマという男と共に住んでいるらしく・・・


まさかジェノスの・・・?と不安になった名前はすぐにそこへと向かい、扉を叩き中から出てきた愛する人を見て・・・





号泣した。

そりゃもう、小さな子供が泣き叫ぶように号泣した。




突然目の前で泣き出す男にジェノスが驚かないわけがない。

部屋の奥で雑誌を読んでいたサイタマも泣き声につられて出てきて、顔を引き攣らせながら名前を部屋へと入れた。


泣きながら、ぐずぐずと鼻を啜りながら「じぇの゛ずぐん゛っ、い゛ぎでる゛う゛ぅ゛」と声を上げる名前が落ち着くのを、サイタマは面倒臭く思いつつも根気よく待っていた。

そうしてやっと泣き止んだ男の口から飛び出たのが冒頭の物語。




おそらく昔は普通の純情少年だったのだろうが、愛する人を失った月日はすっかり彼の愛に狂をプラスしてしまったらしい。

若干どころか大分歪んでそうな名前にジェノスがどんな反応をするかと思えば・・・




「・・・・・・」

何も言わない。


サイタマがジェノスの恋人じゃないと知るや否や「息子さんを僕にください!」とでも言うように先の台詞を言った名前に対して、ジェノスは何の反応も示さない。ただそこに座ってるだけ。

黙ったままのジェノスに名前も不安になってきたのだろう。





「じぇ、ジェノス、くん・・・」

「・・・・・・」


「ご、ごめんね。突然で吃驚しちゃったよね。本当にごめん。僕、本当に自分のことしか考えてなかった」

黙るジェノスに反省した様子の名前。

おそらく元が真面目で純粋なため、罪悪感を多く感じているのだろう。





「へ、返事は何時でも良いからさ!待ってるからね、ジェノス君!」


テーブルの上に置かれたのは連絡先の書かれた紙。

それを残した彼はそう言って、自分の荷物を掴むとそのまま出て行ってしまった。




「・・・・・・」

ジェノスはまだ黙っている。

流石に心配になってきたサイタマは「おい、大丈夫か?」と声をかける。返事はない。




「おい、ジェノス――」

「名前君がっ、まさか名前君がわざわざ俺に会いに来てくれるなんてっ、しかも名前君が俺の事を好きだった?学校では恥ずかしくて話しかけられなかった憧れの名前君が、まさか本当に俺のことを?あぁ、なんでもっと早く気付けなかったんだろうか。名前君は昔からとても格好良かったけど、久しぶりに見た名前君は昔よりも更に格好良くなってた。これ以上俺の心を奪ってどうするつもりなんですか、名前君。あぁ、名前君大好きです好きです好き好き好き好き愛してる、いっそもう今すぐにでも籍を入れに――」





「・・・・・・」





似た者同士の恋心





どうやら両想いみたいだぞ、良かったな。

既にいなくなっていた名前に対し、サイタマはうんざりしながらそう呟いた。




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