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外の世界に憧れたのです。





太陽というものを見てみたかったのです。



それはキラキラと輝くものだと、時折出会うモグラに聞きました。

どうやらそれはとても大きくって、とても眩しいものだそうです。


けれども地底に住む我々にはその光は眩しすぎるから、直視してはいけないよとモグラは笑いました。




太陽は肌を焦がす恐ろしいものだと、土の中で眠っていたミミズが言いました。

太陽なんかがある地上より、湿り気のある暗い地底の方が快適だと、ミミズは言いました。


外に出たって何も良いことなんかないぞと、偏屈ミミズは無い顔をしかめました。







それでもそれでも、外の世界に憧れたのです。

同じように地上に興味を持っていた地底人の仲間が、外に出て行こうとしました。


けれど外の世界で何か恐ろしいことがあったようで、もう外に行きたいと言わなくなってしまいました。





どうしてどうして、外に出ようよ。

そう誘っても、誰も頷いてはくれませんでした。


だから僕は、寂しかったけど一人で外に出ることにしました。



地底で暮らすのに進化した身体は、土を難なく掘り進めます。地上何て、すぐそこです。

ざくりっ、と手が土を掘って、ついに外へ到着しました。






「わぁ・・・」


外の世界はきらきらとした光で包まれています。

太陽は何処だろうと、あたりを見渡して・・・





「あぁっ!」

見つけました。僕の真上にありました。


けれども大変だ。

それはとても眩しい。


目が痛い。

じわじわと僕の眼球が攻撃を受け、涙が出そうになった。




強い強い光り。

地底に住んでいた僕には、到底耐えられない光。


嗚呼――





「た、すけて・・・」






「 おい 」






目を抑えて蹲る僕の目の前に、小さな影が出来る。

太陽が遮られたそこで、僕は恐る恐る目を開けて上を見上げた。


そこには太陽の眩しい光りを背に・・・





「お前、大丈夫か?」

地上の生き物が立っていました。



僕は「目が痛いんだ」と言います。

彼は「ふーん」と言います。



「じゃぁ日蔭に入れば良いじゃねぇか」

「それは何処?眩しくって、よく見えないんだ」


僕の言葉に彼は頬を少し掻いてから、僕に手を差し出した。

どういう意味かわからなくてその手を見つめていると、僕の腕ががしりと掴まれる。





「ほら、目ぇつぶってろ。連れてくから」


もし彼が怖い生き物だったらどうしようとか、そういうことを考える余裕なんて僕にはなかった。

眩しくって眩しくって、けれど太陽は綺麗で・・・





僕の腕を掴んで僕を誘導する彼に、ただただ黙って付いていく。

着いたぞと言われて目を開けば、先ほどよりだいぶ眩しさの和らぐ場所にいた。



「ったく・・・人ん家の前で蹲るから、何かと思ったじゃねぇか」

目の前にとんっと何かが置かれる。



透明な器の中に、キラキラしたものが注がれている。

これは何?と尋ねれば「水」と短く返ってきた。



水は知ってる。でも、この器は何?


地上の生き物は凄いなぁ。

あんなに綺麗な太陽に照らされて、尚且つこんな綺麗なものを作れるんだから。



そう感心しながら、僕は器に注がれた水を飲んだ。

・・・水は地底の方が美味しいな、なんて思ってしまったけど。





「というかお前、地底人だよな」

「え。わかるんですか?」


上手く擬態したつもりだったんだけどなぁ、と自分の姿を見る。




「お前の真横に滅茶苦茶深い穴あった。しかもお前、めっちゃ泥だらけ」

「あ、ほんとだ」


ははっと笑うと「床も泥で汚れちまってるし、お前が掃除しろよ」と薄い布を渡された。

成程、これで拭けというわけか。と僕は床の泥を拭き始める。ついでに自分の泥も落とす。





「地底人って日光に弱いんだな」

「本当なら、顔にマスクを着けなきゃいけないんですけどね。不審がられたら嫌だったから、取ってきたんです」


「そしたら目がぁ目がぁ状態だろ?」

「?」


「・・・あー、地底人にこのネタは通じないか」

「なんかすみません」




意味がわからなかったが、きっと地上ではメジャーなネタだったのだろう。



「お前さ、何で地上に来たんだ?」

「太陽が見てみたくって」


笑いながら答えれば「変なヤツ」と言われた。





「お前、マスクが無いってことは、外に出ただけでもぶっ倒れるってことか?」

「はい。光に弱いみたいで・・・」


外に出たことなかったから気付かなかった。




「ふーん・・・あ、そういえば・・・」

そう言って彼はごそごそと何かを探し始めた。


「おー、あった」

取りだしたのは、黒くて薄い・・・





「サングラス。やるよ」

サングラス?と首をかしげる僕に顔に、彼はそれを当てた。


「!少し暗くなった・・・」

目の前に薄暗くなった。

驚きつつ、それを取ったり着けたりする。


もしかして!と思い、外に出てみた。






「凄い・・・太陽が眩しくない」

僕に続いてのそのそと外に出て来た彼は「おー、良かったな」と欠伸をしながら言う。




「有難う。地上の生き物は怖いと思ってたから、凄く嬉しかった」


手を握ってお礼を言えば、相手は少し照れたように「ぉう」と小さく返事をした。





「綺麗・・・思ってた以上に、太陽は綺麗だ」


太陽の光は少し暑くって、ちょっと地底の方が快適かもしれないと思う。それでも、太陽もその周りに広がる青空も、綺麗で綺麗で・・・





「もっと見てみたいなぁ・・・」

聞けば、地上には海やら山などといったものまであるそうじゃないか。是非見てみたい。


それに・・・






「貴方みたいな良い人がいる場所なら、もうちょっと居たいなって思います」


「・・・・・・」



彼は無言で頬を掻きながら・・・

「じゃぁ・・・」




――住むか?俺ん家。




その提案に僕は驚きつつも、

「是非」

笑顔で返事をしていた。







こんにちは地底人








「サイタマさん!土耕しました!」

「おー!じゃぁ、種蒔いて、後は水撒け」


「ミミズとか呼んどきますね。土に栄養つけなきゃ」

「・・・お前、意外に役立つよな」


「ははっ。美味しい野菜作りましょうね、サイタマさん」



Tシャツ短パン姿にサングラスをかけた名前は楽しげに笑って言った。




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