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※原作第123話ネタ



「そういえば、漫画『鬼卒道士チャイニーズエンジェル』の登場人物で、もう一人モデルになってる人を知っていますよ」


「えっ!本当ですか!?」

「見たい!見てみたいです!」

鬼灯の言葉に、茄子と唐瓜はテンションを上げた。



「と言っても、主人公や司令官とは違って、大分地味な役ですけど」

「どんな役なんですか?」



「主人公達や司令官が住む場所の掃除をする、所謂清掃員です」



「・・・思った以上に地味ですね」

「結構ファンもいるみたいですよ。ミステリアスで素敵、だとか」


その言葉に唐瓜は「清掃員がミステリアスって・・・」と顔を引き攣らせた。



「まぁ、百聞は一見に如かずです。五道転輪王の許可は貰ってますし、行きましょうか」

そう言うや否やすたすたと歩いていく鬼灯を慌てて追いかける二人。






そのまま五道転輪庁内部を進んでいく。

閻魔庁と同じく、内部では鬼達が忙しなく働いている。

それをきょろきょろと眺めつつも鬼灯の後を付いていけば、突然鬼灯の歩みが止まった。


見れば、鬼灯の視線の先に庁内の壁を磨いている一人の男の背が・・・





「名前さん、お久しぶりです」


ぴたりと男の手が止まる。




「・・・・・・」

無言のままに、男がくるりと鬼灯たちの方を向く。

振り返った男はその顔にも埃避けの布を巻いていたため、目元ぐらいしか見えない。





「お久しぶりです」

返事がなかったためか、再度鬼灯がそう言うと・・・


「・・・あぁ」

それだけ返事をし、再び掃除に戻ってしまった。


鬼灯相手になんて怖い者知らずな態度!!!と唐瓜は怯え、茄子は尊敬の眼差しを送る。

鬼灯本人は大して気にしていないようで、さっと唐瓜と茄子の方へと視線をやった。





「彼が、モデルになってる名前さんです。長いこと、此処で清掃員をしているんですよ」


「けど清掃員って・・・獄卒が掃除する時間ありますよね?別にわざわざ清掃員を雇わなくたって良くないですか?」

「こ、こら、茄子っ!!!」

茄子の言葉に唐瓜は慌てたように声を上げる。


その清掃員本人の前で口にして良い台詞ではない。

が、名前はぴくりとも反応せずに壁の掃除を・・・いや、今度は床の掃除を始めた。






「彼は掃除のエキスパートです。獄卒じゃ落としきれないような汚れも、一瞬にして落とします」


淡々と説明してはいるが、要はただの凄い清掃員というだけだ。本職には負けるだろうが、獄卒だって努力すれば綺麗に掃除出来る。

なのに何故この清掃員を雇っているのか――








《あ〜・・・もしもし、もしもし。また脱走です。地獄行きの亡者が逃げ出しました。繰り返します、亡者が逃げ出しました。逃げた先は・・・あ、名前君の方が近いね。名前君宜しくお願いします》





「え?どうして清掃員の名前さんに――」

その時、此方に向かって近付く「地獄は嫌だぁぁぁあっ!!!!」の声。


途端にぴたりと掃除の手を止める名前はそのまま声のする方を見て――





シュバンッ!!!

ズドォォォオオオンッ!!!!!!!




一瞬にして亡者を床に沈めた。




「・・・汚れめ」

小さくその言葉だけを呟いて。

唖然とする唐瓜や茄子とは違い、鬼灯はただパチパチと拍手を送るばかり。


どういうことですか?と視線を送ってくる二人に、鬼灯は当然のように答えた。





「言ったでしょう。彼は“掃除”のエキスパートですって」





掃除って・・・そっちの“汚れ”も一瞬で落とすのか・・・と唐瓜も茄子も冷や汗を流した。

見れば名前は捕まえた亡者をそのまま「汚い汚い」と言いながらモップでぐりぐりと押している。

声が単調なのと、目が据わっているのが酷く恐ろしく思える。






「ちなみに、漫画の方の清掃員も、侵入者は一瞬にして掃除します」


「わぁ・・・そりゃ、ファンも出来ますよね・・・」

「格好良い・・・」



漫画の方の清掃員はまだ見た事が無いが、きっと目の前の清掃員のように格好良いのだろう。

唐瓜と茄子のキラキラとした視線を一身に受けつつも、やはり名前は淡々と亡者を掃除している。






「名前さん」

「・・・・・・」


ついに名前が亡者に洗剤をぶっ掛けて磨き始めた頃、鬼灯は名前の名を呼んだ。

手を止め、鬼灯を見る名前。




「何時みても大変素晴らしい腕ですね」

「・・・・・・」


「私の部屋、どうにも物が多くて散らかりやすいんです。どうか掃除のアドバイスを貰えませんか?」

「・・・終業時刻」

「はい、知ってます。では、終業時刻に迎えに行きますから、支度をしておいてください」


「・・・夕飯」

「もちろんご一緒しましょう。今日はたしか、貴方の好きなシーラカンス丼ですよ」

「・・・そうか」


一連の会話が終了すると、何事もなかったように清掃に戻る名前。磨かれた亡者はやけにピカピカした状態で床に放置されていた。












「・・・え?え?あ、あの、鬼灯様・・・」

二人のやり取りを見ていた唐瓜と茄子。

名前を呼べば、鬼灯は「何ですか?」と振り返る。そんな鬼灯に、唐瓜は恐る恐る尋ねる。


「名前さんと、鬼灯様の関係って・・・?」


「単純に、慕う者と慕われる者の関係ですが?」

「え?じゃぁ鬼灯様って名前さんのこと――」




「好きですが何か?」




さらっと言う鬼灯に、唐瓜と茄子の悲鳴のような「えぇぇぇえええっ!?!!!?!?!??」という声が五道転輪庁内に響いた。







有能過ぎる清掃員さん





(鬼神のハートもがっちりキャッチ!)



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