召喚術の授業があった。
普段はそんなものないけど、ダンブルドア先生の突然の提案で、たまには一風変わった授業でもしようということで、大広間でその授業は行われた。
皆、思い思いに配られた羊皮紙に書かれた陣を描いている。
妖精やゴブリン、いろんなものが召喚される中、俺はドキドキしながら陣を描いていた。
「アスはどんなものが出るんだろうな」
セブルスはさっき自分が召喚したピクシーを何とか捕えながら、俺に声をかけてくれた。
俺は自分の描いた割と大きな陣を見ながら「そうだな・・・」と言った。
よし、後は適当なものを供物として置いて――
その時、激しい光が陣から放たれた。
『アス』
「・・・光麗(さぁぁぁぁああああんッ!!???!?!!!??!?)」
そこに立っていたのは、普段は御目に掛かれない光麗さんだった。
『貴方から呼ばれるなんて・・・今日は何と良い日でしょうか』
綺麗に微笑む光麗さんに、周囲は呆然としている。
『今日は人の行事で、クリスマスというものがあるのですよね・・・だから、どうぞ。私からのほんの贈り物です』
「(ぇっ!?ぁ・・・)有難う(?)」
光麗さんから渡されたのは、きらきらと輝く宝石のようなもののついた、綺麗なブレスレット・・・
『それはほんの少し私の力を籠めてあります・・・』
「・・・・・・」
って!こんな凄いもの受け取れない!
・・・ハッ!そ、そうか、俺も何かお返しを・・・って、今持ち合わせがないぞ!?
あ、ポケットに何か入ってる。
・・・後で食べようと思ってたお菓子だ。
「光麗(さぁぁあんっ)・・・こんなもので悪い(とは思いますが、どうぞ)これを(お受け取りくださいぃぃぃいいいッ!!!!!!)」
『!・・・あぁ、アス・・・』
思いのほか嬉しそうな顔をしてくれた光麗さんに俺はほっとしつつ、傍にいるセブルスの方を見――
え?せ、セブルス・・・?
なななな、何故そんな険しいお顔を!?
「アス・・・」
「どうかした(の!?)」
「・・・・・・ぃや、やっぱり、何でもない」
ふるふるっと首を振ったセブルス。
そんな風に言われると、逆に気になって気になって仕方ないんですけど!?
俺はセブルスをじーっと見つめる。
な、何なんだろう。隠さずに「言って」欲しいのになぁー・・・
「・・・こ、れ」
ん?セブルスが何か包みを・・・
「クッキー?」
「・・・すまない。そんなもので」
え?ももももも、もしかして・・・
「俺に(ですかぁぁぁぁぁぁああああッ!)?」
「・・・あぁ」
俺はパァッと心が明るくなるのを感じ、セブルスから貰ったばかりのクッキーを包みから一枚取り出して食べた。
「美味しい(!!!!!)」
「ぇ・・・」
「とっても美味しい(です!もはや神!・・・ぁ、目の前に本物の神様いるや)」
つい笑顔になる俺に、セブルスはやっと元気になってくれたみたいで「よ、よかった」と笑ってくれた。
光麗とセブルスからのプレゼントを手に、俺はほくほくとした気持ちでいた。
《セブルスSIDE》
召喚術なんて普段はやらないようなことをした。
ピクシーが出てくるなんて思ってもみなかった。
奴らは悪戯好きだから、すぐにとらえなければならず、アスの傍で慌てる僕は酷く滑稽だったことだろう。
アスに呆れられていないだろうか?と心配しつつ、アスに「アスはどんなものが出るんだろうな」と声をかけた。
少し大きめの陣を描いているアスは涼しい顔で「そうだな・・・」と言う。
まるで、何が召喚されるか最初からわかっているかのような・・・
その時だ。アスの描いた陣がまばゆい光を放ったのは。
気付けば、陣の中央に、人ではない美しい人物が一人いた。
光り輝くその男を、アスは「光麗」と呼んでいた。
『今日は人の行事で、クリスマスというものがあるのですよね・・・だから、どうぞ。私からのほんの贈り物です』
「有難う」
明らかに高貴であろうその男からアスに渡されたのは・・・それははそれは綺麗なブレスレッドだった。
僕はグッと拳を握りしめた。
だって・・・
僕だって、アスにプレゼントを用意していたから。
この授業が終わったら、こっそり渡すつもりだったんだ。
けど・・・
僕のプレゼントは、光麗と呼ばれた男のプレゼントの足元にも呼ばない。
・・・もう、渡すのは止めてしまおうか・・・
「光麗・・・こんなもので悪い。これを」
『!・・・あぁ、アス・・・』
あぁ、アスからお返しまで貰って・・・
嬉しそうな顔をする相手。
あぁわかるさ。凄く嬉しいんだろうな。
本当は僕だって――
「アス・・・」
「どうかした」
つい名前を呼んだ僕に、アスはすぐに反応してくれた。
「・・・・・・ぃや、やっぱり、何でもない」
・・・言えない。
自分のちんけなプレゼントと他人の豪勢なプレゼントを比較して落ち込んでいるなんて。
ふるふるっと首を振っても、アスは僕から視線を離さない。
「言って」
アスにそんな風に言われたら、言わないわけないのに・・・
「・・・こ、れ」
観念したように僕が取り出したのは、
「クッキー?」
そう。クッキー。
「・・・すまない。そんなもので」
前にアスが僕の作ったお菓子を美味しいと言ってくれたから・・・
結構頑張って作ったけど、何だか出すのも恥ずかしい。
「俺に?」
「・・・あぁ」
するとアスは何を思ったのか、僕から受け取ったそのクッキーを一枚口に入れた。
「美味しい」
「ぇ・・・」
アスが微笑んでいる。
「とっても美味しい」
あぁ、何でそんなに優しいことを言ってくれるんだ・・・
「よ、よかった」
僕はつい笑顔になりながら、陣の中にいる光麗という男を見た。
彼も小さく微笑み、唇を少し動かした。
声にならないその言葉だったけど、僕には何となく『良かったですね』と言っているのがわかった。
召喚しちゃった!
後日アスから僕が読みたいと思っていた本を渡された。
あとがき
クリスマス企画のリクエストでした。
光麗さん出演。←
本編でもなかなか姿が見えない光麗さん・・・
きっとそのうち、本編でも活躍してくれるはず!!!!←