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目の前から歩いてきた先輩。



あまり多くは喋る機会は無い先輩。

静かな廊下で、その存在感は増幅される。


でも、それと同時に闇に紛れるような、不思議な感じ。







「せ、先輩!アス先輩!」


「・・・・・・」

突然呼び止めて失礼だっただろうか?


アス先輩はこちらを無表情で見て、立ち止まった。




「これから、寮に帰るんですか・・・?」

この沈黙が酷く緊張して、話をしようと必死になってしまう。


「あぁ」

「そ、そうですか」


ちょっと残念だと思ってしまった。

きっと先輩にはお見通しだったのだろう。


先輩はそんな僕を見て、小さく笑った・・・ように見えた。




「Trick or Treat」

「ぁ・・・」


突然言われたその言葉に、僕は驚く。



「持ってないなら、悪戯だぞ?」


先輩なりの気遣いなのかもしれない。

緊張して満足に話せない僕の緊張をほぐそうとしてくれているのかも。





・・・何を考えているのかわからなくて、ちょっと怖い印象を与えてしまう絶対的な王者。

けど、きっと彼は本当は優しいんだ。



僕は嬉しくなる。

先輩が僕に気を使ってくれたから。


けど、それと同時に申し訳なくなる。

先輩に気を使わせてしまったし・・・



「すみません。持ってないです」



お菓子も持ってない。

先輩はそんなこと予想の範囲内だったらしく「そうか」と言った。





「ちょっとじっとして」


「え?」


先輩は僕の髪に触れて、何かをしだした。

大きな温かい手が心地よかった。







「ほら」



鏡を見せてきた先輩。


そこには、両サイドをピンク色のゴムで結っている僕の姿。

自分で言うのもなんだけど・・・



女の子みたい。






「もう遅い。部屋に戻って」


「あ、はい」

すっと僕の頭を撫でる先輩。


僕は赤い顔を隠すようにして部屋に戻った。
















《アスSIDE》



何処にも寄り道しないで寮に戻ろうとしていたら



「アス先輩!」



突然俺を呼ぶ声が聞こえるではないか!



誰!?

この俺を呼んでくれるのは誰!?



あ!君は・・・!



・・・・・・・・・さっき悪戯をやらかしてしまったシリウスの弟君、レギュラスじゃないかぁぁぁぁぁあああああっ!!!!!!




「これから、寮に帰るんですか・・・?」


「ぁ・・・あぁっ」

シリウスほど怖くは無いじゃないか!落ち着くんだ俺!


可愛い後輩じゃないか!!!!





勇気を持て!



「そ、そうですか」


あ、ヤバイ。

会話続かない!!!!


何時もそうなんだよ!俺と話すことなんてない!?そうなんだね!?(涙)



あ、そうだ!







「とりっくおぁ、とりーと」



「ぁ・・・」






どうせだから、やってみた。

明らかにお菓子持ってないって知ってるのに、こんなことする俺って・・・大人気ない!?



「持ってないなら、悪戯だぞ?」


それでも俺はやるんだぁぁぁぁぁあああああっ!!!!!




「すみません。持ってないです」



うん。謝らないで。謝るのは俺のほうだよ・・・

でも!


悪戯はします!!!(これこそ大人気ない)





「ちょっとじっとして」

「え?」


あれ?もしかして俺、町内にいる不審者?

ほら、お嬢ちゃん、おじさんについておいで・・・っていう!?


・・・・・・・・・フッ、もういいさ。(遠い眼)




レギュラスのサラサラの髪を結っていく。



「ほら(!メッチャ可愛い!)」


そういいながらレギュラスに鏡を見せる。

レギュラスは鏡の自分をじっと見て、こちらを見る。



「もう遅い(から)。部屋に戻って(?そうじゃないと、危ないって!)」

「あ、はい」


俺の必死な言葉を聞き入れてくれたレギュラスは、そそくさと寮に戻っていった。



あぁ、俺も早く寮に戻って寝よう!







部屋にいるはずのセブルスは、もう寝てるかな?



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