彼が突然僕の前にまるで闇に紛れてきたように現れたときは、歓喜で心臓が止まってしまうかと思ったよ。
「Trick or Treat」
そういって口元だけで笑った彼に、実はポケットに持っていたお菓子を咄嗟に隠した。
だって・・・
悪戯、されてみたかったし。
彼は、僕の嘘なんてすぐに見破れていたと思う。
けど・・・
「じゃぁ、悪戯だな」
そういって、すっと彼の手が僕の頭に触れた。
「似合うな」
「ぇ?」
僕が首を傾げると、彼は僕に鏡を差し出してくれた。
「わっ!」
鏡には、頭にふわふわのヘッドドレスが付いていた。
明らかに女物だ。
恥ずかしいことこの上ないが、彼はものすごく満足そうに笑っていた。
「可愛い」
ぽそっと僕の耳元で囁くように呟かれたその一言。
「〜〜〜///」
僕は顔を真っ赤にしたまま、その場から動けなくなった。
あぁもうっ!
彼に「Trick or Treat」を言うの、忘れてたじゃないか!
《アスSIDE》
「・・・・・・・・・と、とりっくおぁ、とりーとぉ」
はい!
さっきよりは発音よくなったと思いません!?
あ・・・思いませんか。そうですか(ショボンッ)
俺は今、冒険をしている!
あのきっと怨まれると恐ろしいことになる悪戯仕掛け人のリーダー格!ジェームズにこの言葉を言ってしまったのです!
彼は自分はお菓子は持ってないと示してきた。
・・・・・・君が持っててくれれば、事は穏便にすんだのにっ!
ぁ!いや、別に君のせいにしているわけじゃなくてね!?(必死)
で、では・・・
「じゃぁ、悪戯だな(ぁ・・・あぁ・・・怒らないでくれよ・・・?)」
恐る恐るジェームズの頭に、つい最近後輩から貰ったブツをかぶせた。
何故俺にこんなものを送るんだ!?と思いつつ、此処で有効活用!!!!!
「似合うな(ぁ!流石、美形は違う!)」
「ぇ?」
ワケが分からないらしいジェームズは、俺の感嘆の声に首をかしげた。
これまたあらかじめ用意しておいた鏡を差し出すと、見る見る恥ずかしそうな顔になっていくジェームズ。
頭についたふわふわのヘッドドレスがものすごい似合ってて、反対に吃驚だ。
明らかに女物だが、そのあたりは・・・ね?←
「(お、怒らないでくれよ?か、)可愛い(から、何の問題もないって!ほら!美形は何着ても似合うって言うだろ!?だから怒らないでぇぇぇぇぇえええっ!!!!!)」
チキン丸出しで叫ぶ。
「〜〜〜///」
しかし、ジェームズはご立腹らしい。
顔を真っ赤にして、俺を見ていた。
・・・・・・俺は、「(じゃじゃじゃじゃっ)じゃぁな」と言って、その場から退却した。
to James