×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -






「遊んできなさい」




突然この言葉から話は始まった。





俺が覚えている日本の夏は、とてつもなく辛い。

けれど、そんなときに食べる冷たいアイスクリームは最高だった。



校長先生が笑顔で杖を振り上げた瞬間に、俺はただただ口をぽかんと開けていた。

隣にいたセブルスだって、反応が上手くできずに「は?」という素っ頓狂な声を上げていた。





グルンッ!!!!と回転した視界。


うぇ・・・気持ち悪いッ!!!!!




吐きそうになる感覚だったけど、隣に居るセブルスに格好悪いところは見せられない!!!!!!


俺の安っぽい見栄が働きつつも、チキンの俺はセブルスにしがみ付いて震えてました。←






「アスッ・・・此処は」


震え声のセブルスに俺はハッとして回りを見る。




「・・・・・・」


飾られている灯篭。

浴衣を着た人々。

屋台の人たちの声。

子供達のはしゃぐ笑い声。


よくよく見れば、俺が小さい頃から歩いた町並み。




今日は夏祭りなのだろう。






「・・・日本」

ぽつりと呟いた俺にセブルスが「にほん?」と声を上げる。



「アスの故郷・・・?」

こくっと頷いて見せれば、セブルスがちょっとだけ嬉しそうに周りを見た。



・・・祭りが珍しいのかな?


それにしても、きっとダンブルドア校長の「遊んでおいで」発言は、コレのことだな。うん。







「セブルス。浴衣を着てみる?」

「ぇっ」


「俺も着るから」

人目につかない場所まで行って、杖を出す。


此処が俺の住んでいた土地なら、毎年俺に浴衣を貸してくれた近所のお姉さんがいたはずだ。


あのお姉さん、浴衣を沢山持ってるし、浴衣は押入れに仕舞いっぱなしでクリーニングに出した後も袋に入れっぱなしだって話してた気がするし・・・




・・・・・・2着ぐらい借りても大丈夫だよ、ね?


どどどどどど、泥棒じゃないんだよ!?借りるだけだよ!?







「『アクシオ(出て来い)』浴衣」


杖を振るえば、俺が毎年貸し出してもらえてる浴衣と・・・





ぁ、あれ・・・?


「アス?どうしたんだ?」

「・・・・・・いや(ッ!!!!)なんでもない(よっ!!!!!!!!!)」



俺は不自然にならない程度にセブルスから目をそらし「これ、浴衣」と言いながら渡した。


内心ブルブルだ。







だって――






「アス。これでいいのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ」




浴衣が明らかに女の子モノだったんだYO☆

・・・ごめんなさい(土下座)




セブルスは淡い青地に綺麗な緑の刺繍のある浴衣。

後ろに大きな蝶々のように結ばれた帯があるのが特徴的だ。


俺はお姉さんから毎年のように借りていた黒地に赤い華が散りばめられている浴衣。

セブルスがナチュラルに女物を着こなしているのが驚きだ。


・・・可愛い子は、何しても許される気がしてきた。←






ん?金はどうするんだって?


・・・ポケットに「存分に遊びなさい」と書かれた手紙と共に、お小遣いじゃありえない金額の日本円貰っちゃったよ。


半端無いよな。







「アス、あれはなんだい?」

「金魚すくい。ちいさな薄い紙を張ったモノで掬う」


「あれは?」

「焼きソバ。パスタの日本バージョンみたいなもの」


「ぁ!あれは?」

「射的。落とせばそれが貰える」


興味津々なセブルスは、なんというか・・・






可愛い過ぎr(ゲフンゲフンッ!!!!!!!)






「アス。これがやってみたい・・・」


「射的・・・?」

既に屋台の目の前でそわそわした感じに俺を見るセブルス。


・・・うん。可愛い過g(ゴホゴホッ!!!!!!!)



パンッパンッ!


隣のセブルスが早速撃った。

・・・が、全て外れた。





「むっ・・・」


眉を潜めたセブルスが、ちょっと可愛いとか・・・ぉ、思っちゃったですよ!!!!!わ、悪いか!?(自棄)



「セブルス。ちょっと貸して」

屋台のおじさんにお金を渡しつつ、俺は言った。


屋台のおじさんが「彼女にいいところみせろよ!!!」と小声で俺に言ってきたのには驚いたが・・・。



どうやら、セブルスのことは周囲からは女の子に見えるらしい。






「(あのねセブルス。実は)正直に弾を当てようとしたらダメ(なんだってさ!!!!!)だから、隅の方に当てて、バランスを崩させて落とす(らしいよ)。(まぁ、俺もそれはよくわからないけどさ)」

「そ、そうなのか」


俺の他人の入れ知恵講座に真剣に耳を傾けてくれてありがとうセブルス!!!!!!



「何が欲しい?」

「ぇ、ぇと・・・」


セブルスがそっと指を指したのは・・・





「(デカイ!?!!?!??!?!?!?)」




ものすごくデカイ黒い兎のぬいぐるみだった。

セブルスって、ぬいぐるみ好きなのか?





「わかった」


こ、こうなったら・・・

金を全てはたいても手に入れてやる!!!!!!!←





俺は全神経を集中させる。



パンッ!!!


「・・・・・・」

俺は冷や汗を掻いた。

撃たれた弾はよく分からないところへ飛ぶ。



ポンッ

ポンポンポンッ


ガコンッ!!!!!



バサバサッ!!!!!!!!






「「「・・・・・・」」」





ぇ?意味がわからないって?


俺もわからないって!!!!!!




弾はぬいぐるみとはまったく違う場所に飛んで、

商品にぶつかっては羽飛び、最後には緩くなっていたらしい金具に命中。

商品を置いた棚の一部が崩壊して、ぬいぐるみを含むいくつかの商品が落ちちゃったZE☆的な・・・?


・・・・・・・・・・・・誰か魔法を使いましたか!?!!!???!!?!?!???!?!??!?!






「すごい!アス」


嬉しそうなセブルス。

おじさんは落ちた商品を見て苦笑すると「商売上がったりだ」と呟いた。



「セブルス。兎のぬいぐるみだけで良い(かな)?」

「もちろんだ。嬉しい・・・」


ギュゥッと兎のぬいぐるみを抱きしめるセブルス・・・可愛いs(強制終了)



おじさんに残りの商品を返却した。

・・・だって、ズルっぽくない!?






「どうして、そのぬいぐるみが欲しかったんだ?」


首をかしげながら尋ねると、セブルスが顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。


・・・・・・。

俺、気に触ること言った!?!!!!!!???!?!?!!!!!!!!??!?!?






「・・・・・・――てた、から」

「?」




「アスに、ちょっと似てたから。この兎ッ///」




この、真っ黒なところとか、雰囲気とか、というセブルス。

・・・・・・何この可愛い生き物!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!←




「だ、大事にする・・・このぬいぐるみ」


小さく笑ったセブルスに、俺もついつい笑ってしまった。





「ッ///」

「・・・・・・」


ゴメンナサイッ!!!!!!!!!!!!


最後の最後に苛立ちを覚える笑みを浮かべてゴメンナサイッ!!!!!!!!!!!!!!!!






その後、ホグワーツに戻ったら、ダンブルドア校長に「デートは楽しかったかの?」と聞かれて、俺は唖然とすることになる。

・・・セブルスは、顔を真っ赤にして怒っていた。



・・・・・・・うん。

すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!




チキンな逆夏祭り



あとがき

夏ですね。
ということで、夏にちなんだ短編を書いてみたのですが・・・
残念な仕上がりに。←

今回は『質問』の
【チキン主で、逆トリして夏祭りなんて、どうですか?】
とのことで。

・・・あれ?

タダ単に『チキンな男主』でもよかったのかな?
それとも、連載の男主でよかったのかな?

・・・などなど、イロイロ不安になってしまいました。
間違っていたらすみません。←


戻る