「まぁ、落ち着けよ」
いや。実際落ち着くべきなのは俺だと思う。
「マスター?」
「・・・何故にリアルに出現!?」
先ほどまで、パソコンの中だけの存在だったはずのレンが、今俺の目の前にいるとはどういうことだ。誰か説明しろよ。
レンはレンで、きょとんとして「どうしたの?マスター」と尋ねてくるし。
・・・あぁ、アレか。夢か?コレは。
「マスター、ぼーっとして大丈夫?」
「ぁ、いや・・・だ、大丈夫だ」
心配そうに俺に触れてきたレン。
・・・やべぇ。触られた感触が、驚くぐらいリアル。実は夢ですよ!っていうのは、無しっぽいぞ。
「もぉ、マスター!早く、歌の練習しようよ!!!!」
どうにも、じっとしていられないらしいレンは、俺の腕を引っ張る。
俺はなるようになれという思いで、レンに「じゃぁ、この曲なんだが・・・」と楽譜を渡した。
どうやら、レンはパソコンからリアルの世界に出てきただけで、それ以外はあまりパソコンの中にいたときと変わらないらしい。
初めて歌った歌は、そりゃもう・・・破壊音だったし、俺がちょっとずつ「もう少しゆっくり」とか指示をすると、少しずつ安定してきた。
リアルの住人になってしまったレンは、なんと食事も出来るときた!
これはもう、驚くしかない。
触った感触も、まんま人間だから、もしかして俺が誘拐してきてしまったんじゃ!?と思ってしまう。それは仕方の無いことだと思いたい。だって、あまりに非現実過ぎるのだから。
「マスター・・・もう、寝よう」
今目の前で目をこすっているレンに「ぁ、あぁ・・・」と返事をして、ベッドに入った。
俺と一緒のベッドに入ってきたレンは「マスター、お休み」と勝手に俺の腕を勝手に腕枕として使って、眠ってしまった。
俺はちょっとだけ「・・・実はこれは夢で、明日目が覚めたら、何時もどおりの日常に戻るんじゃね?」とか思いつつ、眠りについた。
「・・・・・・」
「おはよう、マスター!」
・・・うん。
夢じゃなかったっぽいです。
夢と現実の違いは曖昧