俺は煙草をふかしながら、ベランダに佇んでいた。
何気なく雲が流れるのを眺めつつ、紫煙を吐き出す。
「マスター!!!!見てみて、マスター!!!!」
突然そんな声が部屋の中から聞こえる。
「んー・・・?なんだぁ?カイコ」
そう俺を呼んでいるのは、俺の可愛い相棒――カイコだ。
KAITOをインストールしたら、バグで性転換してて驚いたけど、まぁ可愛いから許す。
今まで台所で何かをしていたカイコは、幸せそうな顔をしている。
台所まで歩いていった俺は「あぁ・・・」とついつい笑ってしまった。
「マスター!アイスでお家作ったんです!!!!」
もちろん、立体だと溶けて崩れてしまうから、お皿の上に平面的に作られた、可愛らしい家だった。
そこにマ●ブルチョコやら、アポ●をトッピングして、可愛らしく表現している。
「可愛いでしょう?マスター」
あぁ。
そんなことするお前が可愛い。
・・・それは口に出さず、俺は「写メ撮っとくか?」とたずねた。
目を輝かせたカイコは「はい!」と返事をする。
軽く写メを撮って「食べるのか?」と言うと、カイコは全力で首を振った。
「もったいないから、今は食べません!」
「じゃぁ、冷凍庫に仕舞っておかないとな」
「・・・もうちょっと、眺めてたいです」
「・・・ぅーん」
しょんぼりしたカイコ。
けど、外に出しっぱなしにしていたら、アイスはたちどころに溶けてしまう。
それこそ、カイコが可哀相だ。
俺はカイコの頭をぽんぽんっと撫でて「溶けちゃうだろ?」となんとか言い聞かせる。
「はぁーい」
ちょっとだけ元気の無い声を上げたカイコに、ついつい苦笑する。
「ハーゲンダッツ、買いに行こうか?」
「!!!!本当ですか!?」
とたんに元気になったカイコに、俺はクスクスッ笑いながら「あぁ」と返事をした。
「わぁーい!」
嬉しそうに飛び跳ねているカイコを眺めつつ、俺はお皿のアイスを冷凍庫に仕舞い、出かける準備を始めた。
準備をしている間も、カイコは飛び跳ねていた。
・・・可愛いなぁ、まったく。
俺はまた笑って「カイコ、いくぞ」と言った。
アイスのお家