宝物の試用期間「欲しい」
最初は何のことだかわからなかったけれど、それが自分のことだと気付いたのは二回目に「欲しい」と言われた時だった。
あ、名前って俺のことが欲しいんだ。
あんまりにも物欲しそうに、けれど物欲しいじゃ言葉が可愛すぎるぐらいには目がヤバくて、なんか気を抜くとするに喰われそうな感じの目で見られた俺は、今まで感じたことがない感覚を心臓で感じていた。
欲しいならあげてもいいんじゃない?と思って、だからいいよと差し出したのに、当の名前は受け取ってくれなかった。
嘘吐き。俺が欲しいって言ったのは名前の癖に。
けれど名前は欲しくなくなったから俺を受け取らないんじゃなくて、欲しい癖に我慢して受け取らないらしい。何で?我慢する必要なんかなくない?
俺が甘えれば困ったような言葉は口にする癖に、手つきは凄く丁寧で、目は嬉しそうに俺の世話をする。まるで愛玩動物でも可愛がるみたいに俺を扱う時もあれば、なんか恋人みたいに甘い感じに扱う時もある。兎に角、とても大事にされてる。
そんなに大事なら貰えばよくない?名前は頭がいい癖に馬鹿だ。
何を怖がっているんだろう。サッカーをする時は特にそう。
俺が自分の言う通りに動くと嬉しそうに笑う癖に、たまに泣きそうな顔をする。情緒不安定。
もしかして俺が離れて行くとか、そんな馬鹿げたこと思ってる?だったら俺が離れられないぐらい、徹底的につなぎとめておけばいいのに。
きっと名前にはそれが出来る。だって名前だし。
不安になる暇があるなら、早く俺を受け取れよ。早く・・・早く、俺を名前のモノにして。
あとがき
・御影成代り主
凪のことが欲しくて欲しくてたまらないけど、原作を知ってるから手を出しきれない。なのに宝物(願望)の方から近づいてきて困惑してる。
サッカーのせいに宝物喪失の危機になるのはわかってるけど、それはそうとサッカーは結構楽しんでる。
もし本当に凪が手に入ったら、もう逃がさない。手放す気は一切ない。
・凪誠士郎
自分に向けられる名前の目にドキドキした。真っ直ぐな瞳というよりは、ねっちょりどろどろな絡みつくような視線だった。
欲しいならあげてもいいやって思ってあげたら受け取って貰えなくて「はぁ?」ってなってる。
多分原作通り途中で名前とは別チームになるけど、それはそうと試合以外ではべったり状態になるかもしれない。
サッカーとプライベートはきっちり分けられるタイプかもしれない。
潜在的な執着心と視線のねっちょり加減は御影成代り主の方が強烈だけど、もし成代り主が自分以外に目を向ければ成代り主を越える熱量で凪がキレるし殴るし暴れるし罵倒する。
「名前が欲しがるもの束縛するのも俺だけだろ?(キレ顔)」