監獄の設備担当者空調管理が完璧な暑くも寒くもない部屋、絵心が望めばすぐに出てくる適温の珈琲、ボタン一つでわかる選手の状態、別のボタン一つで繋がる技術者への内線・・・
絵心は快適すぎる現状に慄いていた。
この計画を遂行する上である程度の無理は覚悟していたし、実際に多少の無理はしている。
けれど当初想像していたよりはずっと楽で、そして何より生活が快適過ぎた。
短い睡眠でも十分に疲れが取れるようにと技術者が一から設計したというベッドの寝心地も良く、同じように設計して貰ったらしいアンリも「あのベッドで少し眠るだけで一気に身体の不調が改善する」と興奮気味だ。
風呂もトイレも、ハイテク且つ使いやすい設計で文句の一つも見当たらない。
・・・いや、文句はある。誰がそこまでしろと言った、だ。
「名前くん、未報告な増設とかしてないよね?」
『してないですよー』
「してるじゃん。今まさに、人の独り言勝手に聞き取って。何処だ?何処にスピーカー付けた?」
『ごめんなさーい』
部屋の何処からか流れるこの部屋にいないはずの名前の声に、絵心は頭を抱えた。
『そう頭を抱えなくても』
こいつ、カメラも設置しやがったな。
絵心は名前への説教を心に決め、技術者直通呼び出しボタンを連打した。
あとがき
たぶん技術者くんは絵心さんのことが好き。
好き過ぎて息をするように絵心さんを盗聴盗撮してる。
法律をギリギリ守りつつヤバイ設備をどんどん増やしてるけど、たまにうっかり絵心さんとアンリちゃんに報告を忘れるお茶目さんだったりもする。
『質問』のコメント【ブルーロックの夢見たいです!】から実行しました。