どうせ二番目はいらない「名前、名前・・・あぁッ、起きろ、返事をしてくれっ、名前・・・」
頭から血を流しぐったりとしている名前を抱えながら俺は懇願する。
名前は少し控えめな、けれど他人を気遣える、やや気遣ってばかりなそんな弟だ。俺のことも、じいちゃんのことも、万次郎のことも、まだ会わせてはいないイザナのことも、深く深く愛してくれている可愛い弟。愛の深さ故に、返されるものが普通の愛じゃ満足できないような少し難儀な考え方をしている、可愛くて可哀想な弟。
兄弟に対する気持ちに優劣なんてないと思っていた。
俺にとって万次郎もイザナも名前も平等に愛しい存在だと思っていた。
けれど今この瞬間、血を流しどんどん冷たくなっていく名前を目の前にして気付く。
「頼むっ、頼むよ名前・・・死なないでくれっ、お願いだから」
頭の中はぐちゃぐちゃだったが、救急車は呼べた。伝えた言葉は支離滅裂だったかもしれないが、店の名前は伝えることが出来たからすぐに救急隊がくるはずなんだ。
だから名前、もう少し辛抱してくれ、お願いだから。普段は我慢しなくていいって言うが、今だけは我慢してくれ。お願いだから、俺の前から消えたりしないでくれ。
「お前が、死んだら、俺は、俺は・・・!」
きっと心の中の何かが折れてしまう。
あとがき
愛されている自覚はあっても一番に愛されないと満足できないメンヘラ適正があるエマ成代り主♂
この度自分の生死を犠牲に自分を一番に愛してくれる人を得られたけど、生存率は低め。
此処で生き残っても、未来で稀咲に頭ぶん殴られる未来が待ってる。
生き残ってもしばらくは意識不明になるから、後日この出来事を知った万次郎とイザナにも大ダメージが入る。