副総長のお気に入り「・・・これ、気絶してる?」
椅子に座ったままフリーズ状態になった名前の前でひらひらと手を振る万次郎。
堅は額に手を当てた。流石に悪いことをした自覚がじわじわと沸いてくる。
「おい苗字、聞こえっか?悪かったな、別に危害を加えるつもりで声を掛けたんじゃねぇから」
自分より低い位置にある頭をぐしゃぐしゃに撫でながら伝えれば、フリーズしていた名前の目が驚くほどきょろきょろと泳ぎ出した。
じわじわと汗を掻いて、机の上に置かれていて手がところなさげに動く。
「・・・ぁ、え・・・」
何かを言おうとしている。万次郎が面白がって声を掛けようとするのを押しとどめ、次の言葉を待つ。
「こん、・・・にちは」
「おー、こんにちは」
「ははっ!何それ、やっと出てくる言葉が挨拶って、ケンチンこいつちょっと面白いじゃん」
腹を抱えて笑う万次郎の声で、今度こそ名前は静かに目を閉じて机に倒れ伏した。おそらく気絶した。