主人公嫌われジャンルの裏側「・・・花垣武道、お前はもう東卍じゃねぇ。二度とその面見せるな」
何時もの集会場で花垣武道が追放されるのをぼんやり見届ける。
辛そうに泣いて否定しているが、総長たちは聞く耳も持たない。
更に言い募ろうとする花垣が副総長に一発殴られて気絶するのを最後に、集会はお開きになった。
その日は元々天気はよくなかった。ぽつぽつと降り始めた雨はあっという間に土砂降りに変わる。
隣から差し出された傘で雨を避けながら、俺は少し離れた場所から花垣が目覚めるのを待った。
特に用事があるわけでもなく、花垣がどんな反応をするのかがほんの少しだけ気になったのだ。
やがてむくりと起き上がった水浸しの花垣は、しゃくり上げながらその場に蹲った。
「俺がやってきたこと、全部無駄だったのかな・・・」
ぽつりと呟いたそいつに『諦め』の雰囲気を感じた俺は、ポケットから取り出した飴玉を花垣目掛けて投げて、それからくるりと背中を向けて歩き出した。
「えっ、あ、飴?」
こつんとぶつかった飴玉を拾ったらしい花垣の視線を背中に感じながらも、俺は「手ぇ出すなよ」と他の奴らに声をかけた。
あとがき
・『諦め勢』筆頭
期待に満ち溢れて割と結成初期段階で東卍に入った。
けどなかなか顔と名前を覚えて貰えず、泣かず飛ばすですっかり疲れた。
ネグレクトされていたかもしれないし、天涯孤独かもしれないし、愛情を求めた結果何も得られず燃え尽きたかもしれない。
自分から頑張れる時期は過ぎた。もう何も期待してないし、まだ期待できる奴らは単純に凄いと思ってる。まぁ、それもいつまでも続かないと知ってるから「現実知らない奴ら可哀想」と同情的。
同じ諦めた奴らの中だとまるで『ボス』のような立ち位置になっている。
もしかすると彼を筆頭に東卍からごっそりと隊員がいなくなる日も近いかもしれない。
好物は飴玉。
・まだ諦めてなあ奴ら
どいつもこいつも総長たちに憧れて東卍に入ったのにずっと何にもなれなかった。
認めて貰えるように頑張るぞ!って矢先に、ぽっと出の男に総長たちの関心を全部持っていかれた。最近入っていきなり隊長って何???
どんな時でも花垣の話題が出てくるし、自分たちの今までが否定された気分になってる。
どいつもこいつも家庭環境だったり何かしらがよろしくないから、愛情とか関心とかに飢えてる。そろそろ餓死しそう。
・とばっちりヒーロー
嫉妬と悪意で嵌められた。
絶望してたら突然飴玉が飛んできて、困惑しつつ食べた。ブドウ味だった。