妹が死んだ「へぇ・・・驚いたね」
それまで静かに憂太と里香の兄であろう人物の通話を聞いていた悟は、素直な感想を口にする。
特級過呪怨霊である祈本里香については現在調査中であるものの、生前の家族構成については既に調べがついている。彼女の年の離れた兄である祈本名前が非術師であることも。
非術師であり、里香がこれっぽっちも見えていないはずの人間の言葉を、里香は聞き入れた。
「里香ちゃんは、お兄さんの名前さんのことが大好きだから・・・名前さんに叱られるのが怖いんです」
「ふーん」
「里香ちゃんのことは視えていないけど、それでも信じてくれた人で・・・僕のことも里香ちゃんのことも、ずっと大事に想ってくれてる」
「信頼してるんだ、その人のこと」
「・・・僕の、兄みたいな人ですから」
憂太がへなりと眉を下げて笑えば、その隣にいる里香もげらげらと笑った。
あとがき
・祈本名前
里香の年の離れたお兄ちゃん。五条先生に年が近い。
きっと誰より里香と憂太を愛し案じている人。
里香が成仏したと知れば、きっと「そっか・・・」と笑って、それから静かに泣くだろう人。
妹の花嫁姿が見たかった。
・憂太くん
昔はただの『里香ちゃんのお兄ちゃん』だったけど、今は自分の兄のように思っている。
里香ちゃんから婚約指輪を受け取った時に「お兄ちゃんは寂しがり屋さんだから、一緒に住んでいい?」と聞かれ「いいよ」と返事をした。
お兄ちゃんが寂しがり屋なのを知っているから、きっと海外に行くときに何かしらのアクションを起こすかもしれない。
・里香ちゃん
憂太のことが好き。お兄ちゃんも好き。
三人で暮らせたらきっととても幸せだと思っていたし、その未来が必ずあると信じて疑わなかった。