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恋人のセブルスくんの部屋で毎晩行われる夜のティータイムは、恋人同士の甘いひと時には欠かせないものだと思う。

俺が持ってきたお茶請けと、セブルスくんが淹れてくれた紅茶。甘く穏やかなひと時になることがほぼほぼ自然なこの空間で、正面の椅子に腰かけたセブルスくんは不機嫌そうなまま紅茶のカップをソーサーに戻した。

相当イライラしているのか指先が机をトントンと素早く叩く。


「何そんなにイラついてんの、嫌なことあった?」

そう露骨にイライラされれば尋ねないわけにはいかない。

まぁどうせ何時ものだろうなと思いつつ尋ねると、セブルスくんの指が止まり、代わりに握り込まれた手が机を叩いた。


「忌々しいポッターのことだ!」

それからセブルスくんの口から出るは出るはポッターくんへの愚痴。

その話何処から仕入れてるの?って聞きたくなるぐらい、ポッターくんがホグワーツ内で引き起こした問題や細かな行動がセブルスくんの口から出てくる。

聞くところによれば確かに問題児だけれど、そう目くじらを立てるような生徒でもない。まぁセブルスくんの場合はそういう『因縁』のようなものがあるから仕方ないけれど。

でも正直、セブルスくんて恋人である俺のことよりも、ポッターくんのことの方が詳しくない?今日の午前中にポッターくんが魔法史の授業に遅刻したこととか、マジで何処で話を仕入れてるの?

そう思いながらもセブルスくんが淹れてくれた紅茶を一口。セブルスくんの愚痴を聞き流すためではなく、自身を落ち着かせるためだ。カップを握る手の力がギリギリと増していくのがわかる。


セブルスくんもなかなかに短気だけど、俺も負けず劣らず短気な方だ。大人になった今でこそ感情をセーブすることを互いに覚えているけれど、学生時代はありとあやゆる要員で喧嘩をしまくっていた。

それでも学生時代から今まで破局せずにこの関係が続けられているのだから、互いに愛し合っているという自信はある。

自信はあるが、こうこう何度も何度も恋人の口から自分以外の男の名前が出てくるのは、少々腹の立つものがある。そういえば学生時代も、セブルスくんの口から「ポッターが、ポッターが」と他所の男の名前が出て、それがきっかけで大ゲンカしたことがあったっけ・・・

今思い出しても腹が立つ。ある程度の愚痴には付き合ってあるつもりだが、二人きりの甘いムードをぶち破るようなポッターくんの話題の数々。まさか父子揃って愚痴の対象になるとは思わなかった。もしかするとセブルスくんは『ポッター』というジャンルそのものが嫌いなのかもしれない。


「我輩がその場にいれば、迷わず減点してやったものをっ!忌々しいポッターめ・・・」

今日何度目だよと思いたくなる『ポッター』の単語。学生時代よりセーブしているとは言ってもやっぱり短気な俺は元々感じていた苛立ちが怒りに変わるのを感じた。


「ふーん、相変わらず大変だねぇ。まぁグリフィンドールは元々好奇心旺盛な生徒が集まりやすいから。ハッフルパフは気性が穏やかな子が多いし問題は殆ど起きないし、寮監としてはやりやすい限りだ」

カップを置き、にこりと笑う。学生時代なら怒った瞬間にお互い怒鳴り合っていたが、大人だからね、スマートにいこうじゃないか。

「特にディゴリーくんは、ここ最近ぐいぐい成績を上げていってくれてるし、寮の誇りだよ。俺のとこにもよく質問に来てくれるし、いやー、良い生徒に恵まれた」

俺が話し始めたことがきっかけで、セブルスくんは静かになる。


「知ってる?ディゴリーくんって読書家でもあってね、先生も是非読んでみてくださいって本も借りちゃった。いやぁ、将来が楽しみな生徒だよ」

静かなままのセブルスくん。けれどわかるよ、紅茶のカップに伸びたその手が、先程の俺と同じようにギリギリと力を増していく様子が。

「ほんと、ディゴリーくんは素晴らしいよ!ディゴリーくんを受け持てて良かった!」

声高々に、もう幸せいっぱいだと言わんばかりの笑顔で。そうすればセブルスくんの顔がポッターくんの話をする時と同じ・・・否、それ以上の『激情』が籠った険しい表情を浮かべた。


「いい加減にしろ!ディゴリーディゴリーと他所の男の話ばかり!我輩に対する当てつけか!」

バンッと叩かれた机。セブルスくんが椅子から立ち上がり、俺に詰め寄る。

机を叩く音がゴングだったとでもいうように、俺も席を立ってそれに応戦した。


「はぁあ!?先に他所の男の話したのセブルスくんですけど!?こっちはそれに便乗しただけですし?セブルスくんにとやかく言われる筋合い無いんですけど!」

「いつ我輩が他所の男の話をした!」

「したじゃん!ポッターがポッターがって!セブルスくんはポッターくんを気にし過ぎ!何でポッターくんの行動を逐一確認してんの!?もう嫌い通り越して好きじゃん!そりゃポッターくんは君が嫌いなジェームズの息子以前に君の可愛い幼馴染のリリーちゃんの息子だけれども!だからって嫉妬しないと思いましたぁ!?」

「何を訳の分からないことを!あんな子供を男にカウントするお前の頭が可笑しいのではないか!?」

「それを言うならセブルスくんもそうだって自覚してますぅ?ディゴリーくんもまだまだ十分子供ですけどぉ?可愛い生徒を褒めちゃ悪いですかぁ?」

「そのイラつく話し方を止めろ!お前はディゴリーディゴリーと!そんなにディゴリーがお気に入りか!?」

「そりゃ自分の受け持つ寮の生徒は全員可愛いしディゴリーくんも勿論可愛いけど、それって教師として当然だし!そもそも!常にポッターポッター言ってるセブルスくんにだけは言われたくない!」

「ならば我輩に黙っていろとでもいうつもりか!」

「言う訳ないじゃんこの早とちり!でも喋るならポッターへの愚痴じゃなくて俺との会話を楽しんで欲しいってだけじゃん!俺ポッターくんと殆ど関わったことないのに、セブルスくんのせいで妙に詳しくなっちゃったんだよ!」

「貴様の方こそディゴリーの称賛ばかりで、我輩の方こそディゴリーの功績に妙に詳しくなってしまった!」


お互い顔がくっつきそうなぐらい近づいて言い合う。

セブルスくんがポッターくんの愚痴を言う度に、俺はそれに応戦するようにディゴリーくんの称賛を口にする。勿論ディゴリーくんに対しやましい感情は一切なく、本当に生徒として優秀だから褒めているだけ。

だって不公平じゃないか。俺の目の前で行われる他所の男の話を黙っていくだけなんて。


「生徒相手にデレデレしおって!生徒に一瞬でも手を出してみろ!我輩がじきじきに貴様を罰してやる!」

「手ぇ出すわけないじゃん!俺がどんだけセブルスくんのこと愛してるか忘れたわけ!?そういうセブルスくんこそ、あんだけポッターポッター言ってるんだから、少なからず目を掛けてやってるんだよねぇ!?好きの反対は嫌いじゃなくて無関心って言うしぃ?何時嫌いが大好きに変わるかわかったもんじゃない」

「気色の悪い事を言うな!我輩が愛しているのが昔も今も貴様だけだと何度言ったら!」

「あぁそうだね!俺も君のことを愛しているよ!だからこそ怒るんじゃないか!それぐらい学習したらどうだ!?」

「それはこっちの台詞だ!貴様が我輩を愛しているのも、我輩が貴様を愛しているのもわかりきったことだろう!」

「わかっていても嫉妬はするんだから仕方ないだろう!俺の気持ちがたった数十年で萎むとでも!?」

怒鳴り合いの方向性が他所の男のことから互いへの愛情に変化したところで、セブルスくんの顔が赤くなっていくのがわかる。そういう俺も顔が熱いが、言葉は止まらない。

結局は自分が怒鳴るように言う台詞に恥ずかしくなってきたセブルスくんが「もういい加減にしろっ!」と俺の口を塞いだところで試合終了。俺たちは真っ赤な顔でゼーゼーと息を吐き、そのまま抱き合った。


・・・なんていうのがほぼ毎晩行われているのだから、やっぱり俺たちはまだまだ大人になりきれていないのかもしれない。防音魔法がしっかりしている部屋で良かった良かった。




大人になり切れない人達




「・・・全く、嫉妬しやすいのもいい加減にしろ」

「いやぁ、それはセブルスくんも一緒でしょ」

怒鳴りまくってお互いぐったりとしつつも、二人抱き合ったまま近くにあるベッドに転がった。テーブルの上の後片付けは後でやっておこう。




お相手:セブルス(教授)
シチュエーション:同僚主でヤキモチ焼き同士のケンカップル仲直り話が読みたいです。

内容に差異はあれど、これをほぼ毎晩繰り広げるにはお互い相当愛し合ってないと難しいだろうなぁ・・・と書いてて思いました。
きっと末永く喧嘩して愛し合ってくれるはず。


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