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俺は小さな小さな村の生まれだ。

あまりの小ささに、近隣からはあまりその名の知られていない村。現に俺が出会った人の中で、俺の故郷の名を教えても知っているという人間はいない。

小さいながらも、別に村人は飢えちゃいない。まぁ、裕福でもない。

その日食べる分は十分にあったし、貧富の差どころか村人全員家族同然の扱いだった。

きっと、村の外の人間にしてみれば、俺の村は実に平和だったのだろう。

俺が村を出た今でも、きっとあの小さな小さな村は平和なのだ。

で、何故俺がその平和な村を出たか、の話なのだが・・・


「なぁなぁ名前ー。そろそろ迷宮攻略に行こうぜぇ」

「・・・ジュダル、俺には無理だ。あんなおっかないところ」

俺の腕に絡みつきむすっとしている少年に、その理由はあった。


ある日俺は、狩りをするために森を駆けていた。

相手の動物はすばしっこくって、普段は行かないような遠くまで駆けていた。

途中、引き返さなければと思ったが、此処まで追いかけたのに一匹も狩れないんじゃ村の奴等に笑われると若干の被害妄想を抱いてしまい、引き返すことなくどんどん村から遠のいて行ってしまった。

そんな俺が見つけたのは、無駄に大きな建物。

村じゃ一度たりとも見た事のないソレは、まるで婆様が昔聞かせてくれた、外の世界にある城のようだと思った。

小さな村の出身・・・言ってしまえば、俺は田舎者だ。

外の世界なんて知らない。せいぜい、村の婆様に聞いた程度の知識しかない。

そんな俺は、目の前の大きな建物に興味津々だった。


・・・今思えば、それが全てもの誤りだったようにも思える。

その建物に足を踏み入れた俺は・・・ジュダルと出会った。

あの時のジュダルの隣には、ジュダルの連れて来た別の人間がいた。

迷い込んだ俺はそこが迷宮だったとは知らず、取りあえず初めて見た自分の村以外の人間に片手を上げて挨拶をした。

ジュダルにとっちゃ、迷宮の中で呑気に片手を上げて挨拶してきた俺が酷く面白そうに見えたのだと、後から聞いた。


知らずのうちにジュダルとジュダルの選んだ迷宮攻略者候補と共に迷宮を探ることとなった俺。

途中、変な怪物がいたが、特に問題なく追っ払う俺を、ジュダルともう一人はまるで変なものを見るような目で見ていたのを覚えている。

今思えば、その理由だってわかる。

俺の村じゃ、森を駆けまわったり、狩りの真似事をするのが遊びだった。そのため、村の人間は結構な身体能力を有する。・・・このことも、俺が村の外に出てから知ったことだ。村の外の人間が、まさかあんなにか弱いとは知らなかった。

後のジュダル曰く、俺のおかげで予定よりも簡単にジンのいる部屋まで到着した。


で、俺達の目の前に現れたジンが、王を決めるとか言い出した時、俺は気付いた。

――俺は今、物凄く厄介な場所にいる。

気付いてしまった俺は「俺は王にはならないんで、どうぞ他から選んでください」と他二人の後ろに下がった。

そしたら、まぁ物凄く驚かれたわけで・・・


結局ジンはジュダルが連れて来た人を王に選んで、迷宮攻略となったわけだ。

無事に迷宮を出れた俺を待ち構えていたのは・・・ジュダルの執拗な勧誘だった。

その後すぐにジュダルがマギだと知ってしまった俺。しかもジュダルは非常に好戦的らしい。

そんなマギを村に連れ帰ったら、村に悪いと思った俺は、決めたのだ。

村に迷惑をかけるぐらいなら、いっそ村の外へ旅に出ようと。

唐突な話かもしれないが、俺は結構昔から旅に出たいと思っていた。

村の外の世界には興味があったし、ジュダルとの出会いは俺自身の欲求をほんの少し確実なものとしたきっかけに過ぎない。


ジュダルを何とか撒いて村に帰った俺は、村の人たちに旅に出たいと言った。それに、迷宮に足を踏み入れたことや、マギと出会ったことも。

もちろん俺は王になる気はない。ただただ、俺は外の世界のいろんなことを知りたかった。

それを伝えれば、村の人たちは「寂しくなるな・・・」と言いつつも、俺に「頑張ってこい」と言ってくれた。

見事に旅に出た俺。おそらく旅は困難を有すると思ったのだが・・・

意外と楽ちんだった。

気のいいおじさんが荷馬車に乗せてくれることもあったし、おばさんが食べ物をわけてくれることもあった。

まぁ、時には人攫いや盗賊が襲ってくることもあった。・・・この時、俺は村の外の人間が割とか弱いのを知ることになる。

ジュダルと再会したのは、俺が旅を始めてしばらくのことだった。

・・・ばったり再会してしまったのだ。市場のど真ん中で。

ジュダルは桃を食べていて、俺は串焼きを食べていた。・・・どうでも良い情報か。


その時のジュダルは心底嬉しそうな顔をして俺に飛びついて来た。おかげで、ジュダルの食べていた桃の汁で俺の服がべちゃべちゃになったのを実は今でも少し根に持っているが、ジュダルも俺が持っていた串焼きの肉汁が服に付いてしまっていたため、おそらくお相子である。

会いたかっただとか、お前を探してただとか、まるで失踪中の恋人でも見つけたかのような台詞を市場のど真ん中で言いだしたジュダルのせいで、あの日市場の人たちから白い目で見られたことは、今でもちょっとトラウマだ。

ジュダルは相当俺が気に入っていたらしく、俺が撒いた後も俺を探していたらしい。

そんなに探してくれてたのか・・・と感動したのもつかの間。

じゃ、迷宮攻略しようぜ。なんて言い出したジュダルから、俺は全力で逃げ出した。

何度も見つかり、何度も迷宮に連れて行かれそうになることとなった俺は、現在に至ると言うわけだ。


「名前だったら迷宮攻略なんて楽勝だろぉー?お前、すっげぇ強いじゃん」

べたべたと俺にくっつきながら言うジュダル。おかげ様で、すれ違う人すれ違う人に訝しそうな目で見られている。

「強いだけが王の全てじゃないだろう。俺は田舎者だし、世界のことは何にもわからない。そんな無知な人間が王になっても良いことはない」

「戦争できりゃ、それで良いだろぉー?」

「戦争は痛いし辛いし良いことないと婆様が言ってた」

そう言った瞬間、更にむっとした顔をするジュダルが「つまんねーの」と呟いた。

「つまらないなら、もう俺に付きまとわなければ良いだけの話だろう?」

「やだ」

「やだってお前なぁ・・・」

ジュダルは我が儘だ。

「名前のこと、絶対諦めねぇからな」

「・・・抱きつくの止めてくれないか。さっきから俺のトラウマがフラッシュバックしているんだが」

しかも・・・非常に甘えただ。

俺に会えば絶対に抱きつきたがるし、歩くときは手を繋ぎたがる。

食事中は膝に座りたがるし、時折おんぶや抱っこをせがんでくる。

「やだ。俺、名前とこうしてるの好きだし」

にっと笑いながら言うジュダルに大きなため息。


「・・・お前は俺の恋人か何かか」

ぽつりと呟いた言葉。

おそらくすぐにジュダルのからかうような返事が返ってくると思った。が・・・

「・・・・・・」

「ジュダル?」

予想に反し、ジュダルは・・・物凄く顔を真っ赤にしていた。

そして俺に抱きつく腕の力を強め、ぐいっと俺の胸に顔を埋めてきた。


「どうした、ジュダル」

「・・・抱っこ」

「・・・またか」

俺は大きくため息を吐いて、ジュダルを抱き上げた。

・・・もはや此処で断ったら道のど真ん中で駄々を捏ね始めるから厄介だ。

抱き上げられてもジュダルは俺の身体に顔を押し付けてしまって、顔は良く見えない。耳は真っ赤だ。

一体どうしたのかと思ったが、取りあえず俺はジュダルを抱っこしながら移動した。


「・・・なぁ、名前」

顔を隠したままのジュダルが小さく俺を呼ぶ。

「んー?」

「・・・なんでもねぇ」

「そうか」

ジュダルはちょっとだけ顔を上げて俺の顔をちらっと見ると、またすぐに顔を隠してしまった。

「・・・桃でも買ってやろうか?」

「ん・・・」

小さく頷いたジュダルのために、今回は特別に桃を二つ買ってやろう。




おばちゃん、桃二つ下さい。




(・・・ジュダル、何時まで顔隠してんだ?)
(・・・うっせぇ)




お相手:ジュダル
シチュエーション:最強主にメロメロなジュダルをお願いします!!

最強だけど平和主義!な感じになっちゃいましたけど、ジュダルはメロメロです!許してください!


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