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※キメツ学園時空。


歴史の教師である煉獄と音楽教師である俺の業務上の関りは少ない。

職員室での席順的にも遠いし、共通の話題もない。

そう思っていたのだが、意外なことに煉獄の方から俺に絡んでくることがよくある。


例えば煉獄が宇髄や冨岡と一緒に飲みに行くことになると何故か俺まで誘いに来るし、昼になると「一緒にどうだろうか!」と誘ってくる。

廊下で会えば「苗字先生!」と呼びかけてくるし、生徒たちからは「苗字先生って煉獄先生と仲良しだよね」と言われる始末。

いや、確かに仲は悪くないが、特別良いってこともないんだが・・・

けれどそう返事をすると生徒に不仲だと誤解されそうだったため「まぁ、うん」とだけ返すことにしている。

何故煉獄は俺に絡んでくるのだろう。


「先生、とみせん程じゃないけどぼっちじゃん。煉獄先生、気を遣ってくれてんじゃない?」

「は?」

謝花妹のその言葉に思わず声が出る。

俺の根城である音楽室の机の上にどっかりと腰かけている、この学校の問題児。何が気に入ったのかある時から音楽室に入り浸るようになり、時折「あれ弾いて」と俺にピアノやギターの演奏を強請ってくるような手のかかる生徒ではあるが、俺によく懐いてくれている愛着ある生徒の一人だ。

とみせんって冨岡のことかとか、俺って生徒にぼっちって思われてたの?という困惑がたった一言の言葉として出た。いや「は?」って言葉にカウントされるのか?


「成程?煉獄先生は俺を気遣って、だから一々誘ってくると?」

「なんじゃない?安心してよ先生、先生がぼっちでもあたしたちが遊んであげるから」

今此処にはいないが、謝花兄もよく音楽室にくる。こちらは懐いているというよりは大事な妹と教師とはいえ男が二人きりにならないようにしているのかもしれないが、俺がギターを弾けば食い入るように静かに聞いてくれるため、まぁこちらも愛着ある生徒の一人だ。

ぼっちの自覚はなかったが、こうやって懐いてくれている生徒がいるのだから、本当にぼっちだったとしても特に気にすることはないはず。


「はいはい、ありがとなー、謝花妹」

「その呼び方嫌って言った!梅って呼んで!」

「あーはいはい、梅ちゃん梅ちゃん」

「キーッ!絶対馬鹿にしてる!お兄ちゃーん!」

「お前なぁ、一々自分のお兄ちゃん呼ぶ癖止めろ。まぁいいや、謝花兄ぃ、お前の妹回収していけー」

既にこっちに向かっているはずの謝花兄に向けてそう言いつつ、謝花妹の頭をぽすぽすと叩く。


「今日はちゃんと授業出るんだぞ、謝花妹」

「梅!」

「はいはい、梅」

むぅっと頬を膨らませる謝花妹はしばらくしてやってきた兄に回収され、音楽室を去って行った。


なかなかに騒がしい謝花妹がいなくなり、静かになった音楽室。さて折角だから少し転寝でも・・・

そう思った時「失礼する!」という勢いと声量のある言葉が音楽室に響き、俺は閉じかけていた目を開けた。

出入口の方を見れば件の煉獄が立っている。折角の転寝時間を邪魔されてしまったが、それを煉獄に言うのは理不尽過ぎるだろう。俺はただ「あぁ、煉獄か」となんでもない風に片手を上げた。

つかつかとこちらに近づいてきた煉獄に用件を聞けば、返ってきたのは「近くを通ったんだ!」という理由にもならないような言葉。

近くを通りかかったからって、友達というわけでもないのだからわざわざ校舎の端にある音楽室に立ち寄る必要なんてないはずだ。

何でそんなことを、と考えたところで先程の謝花妹の言葉を思い出す。


「あー、煉獄。さっき謝花妹と話してたんだけど、俺って生徒にぼっちって思われてるらしいんだ。もしかして煉獄もそう思ってわざわざ声をかけているのか?」

ぱちり、と煉獄が普段大きく見開かれている目を瞬かせる。

「もしそうだとしたら、煉獄が気にすることじゃない。生徒なら兎も角、俺は大人で、しかも教師だ。俺に気を遣うぐらいなら、生徒を・・・」

「いや!それは違う!」

俺の言葉を遮るように食い気味でそう言ってきた煉獄に、今度は俺が目を瞬かせる番だった。


「俺は苗字先生がぼっちだから誘っているわけではない!」

「まて、しれっと俺がぼっちであることを肯定するんじゃない」

「むっ?すまない!けれど生徒からは学園二大ぼっちと言われているそうだぞ!」

「もう一人絶対冨岡じゃん!俺ってそんなにぼっちに見える!?音楽室に籠ってるのが原因!?」

あまりに衝撃的過ぎて頭を抱えたくなった。

まさか俺がぼっちだというのは生徒だけでなく教師陣全員の共通認識ということなのだろうか。そんなの不名誉過ぎる。

失礼かもしれないが、俺は冨岡よりはずっとコミュニケーション能力はあるはずだ。冨岡より喋るし、冨岡より表情に出るし・・・


「ま、まぁその話は置いとく。とりあえず、俺を気遣って飲みに誘ったりしてくれてるけど、そういうの別にいいからさ」

きゅっと煉獄の眉が寄る。

「俺は単純に・・・苗字先生と仲良くなりたいから、誘っているだけだ」

「あー、うん、有難う?」

「今日の帰り、一緒に飲みに行かないか!」

「いきなりだな・・・あー、たまには仲良し三人で楽しんで来いよ」

「いや!今日は俺と苗字先生の二人だけだ!」

「はぁ?」

二人だけ?俺と煉獄が、二人だけで飲みに?それに何の意味があるのかわからずにいれば、煉獄は「君は思った以上に鈍感だ!」と割と失礼なことを大きな声で言う。


「言っただろう。俺は苗字先生と仲良くなりたい。正直、謝花兄妹よりも、ずっと仲良くなりたいと思っている!」

そこで何故生徒の名前が出てくるのか。

「俺だって音楽室で二人きり、長い時間を苗字先生と過ごしたい!」

「お、おう?」

生徒相手に嫉妬しているかのような発言になんて返事をしたらいいかわからない俺に気付かず、煉獄は更にヒートアップする。

「先程廊下で謝花兄妹とすれ違ったが、妹の方に『今日は頭を撫でて貰った』と自慢されてしまった!兄の方には以前『苗字にギター教わった』と自慢された!物凄く悔しい思いをした!」

もはや『仲良くなりたい』の意味が友情であるかさえ怪しい。先程鈍感だと言われたばかりだが、流石にそこまで言われればわかってしまう。

職員室での席が遠いのにわざわざ席まで近づいてくるのも、共通の話題がないはずなのに俺の知っている話題に合わせて話しかけてくるのも、俺を見かけるだけで普段の笑顔を更に輝かせてくるのも、飲み会や食事に必ず誘ってくるのも、全部全部『そういうこと』なのだろう。


「二人きりだと恥ずかしくてずっと誘えなかったが、今日のことで決心がついた!俺は苗字先生と仲良くなるために、もっと積極的になる!」

「い、いや、今でも十分積極的な方だろ」

「しかし気持ちが伝わっていなかった!頑張るしかないな!」

「話聞かないなこいつ!」

では今夜楽しみにしている!と大声で言いながら音楽室を去って行った煉獄に俺はついに頭を抱えた。




音楽室でうなだれる




今夜の飲みの誘いに了承したわけではなかったが、断る理由も見当たらなかったため結局煉獄と二人だけで飲みに行くことになった。

終始機嫌良さげににこにこ笑っている煉獄と居心地悪い気持ちでハイボールを口に含む俺・・・

「苗字先生がギターを演奏できるのは知らなかった!」

「あー、まぁ、若い頃はギタリストに憧れてたし」

「今度俺にも聞かせてくれ!」

きらきら期待に満ちた目でそんなことを言われれば、断る方が悪役みたいな感じがする。俺はやむなく「まぁ、時間があれば」と曖昧な返事をするしかなかった。




お相手:煉獄杏寿郎
シチュエーション:鬼滅学園で主人公は同僚だと嬉しいです!もし、鬼滅学園が難しい場合は大正時代でもキメ学以外での現代パロでも何でも大丈夫です!是非お願いします

押せ押せアタック中な煉獄先生と謝花兄妹含む問題児グループと仲が良い音楽室の先生の話でした。
煉獄先生に圧され気味。煉獄先生的にはたまに入る問題児グループの妨害にやきもきしてる感じ。あんまりにもやきもきさせるとヤンデレる可能性も秘めている。


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