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毎朝家で使うための薪を拾うことが、幼いエレンとミカサの役割だ。

子供一人が拾える量はたかが知れているが、二人で拾えばそこそこの量になる。けれどもエレンは何時も、ミカサよりも多く、それこそ一人で二人分の薪を拾い集める。

エレンは沢山拾い集めた薪を何とか家まで持ち帰り、薪を溜めておく木箱へと『半分だけ』入れる。もう半分はそのままに、もう一度家を出る。

それを見たミカサも母親であるカルラも特に止めはしない。何せエレンのこの行動は今に始まったことではなく、理由も行き先もわかり切っているのだ。


薪を背負ったままエレンが向かったのは、他の家々から少し離れた場所にある小屋のような小さな家の前。その家の木製の戸をドンドンと叩けば、中からゆっくりとした足音とコンコンと棒が床を叩くような音が聞こえ、しばらくしてから戸が開かれた。

「おはよう、エレンくん」

戸の向こう側から姿を見せたのは、子供のエレンよりもうんと背の高い、柔らかな笑顔が特徴的な男。

戸を開いたときにずれたのか、片手で肩掛けをなおす名前を見上げるエレンの顔に満面の笑みが浮かぶ。

「名前、おはよ!薪届けに来た」

背中に背負った薪を見せれば、名前の手がエレンの頭に伸びる。

ぽんぽんと優しく撫でられて頬が緩む。ちょっぴりひんやりしているこの大きくて優しい手が、エレンはとても気に入っている。

頭を撫でられるなんて子供扱い、他の大人なら許さないが、名前なら何となく許せてしまう。


「いつもありがとう。あぁそうだ、丁度スープを温めていたところだから、良かったら飲んでいきなさい」

名前の言葉に大きく頷いたエレンは、薪を背負ったまま名前の家に入る。

エレンが家に入ると、片手で戸を閉めた名前はゆっくりと歩き出す。左足を踏み込んで右手に持った杖でコンッと床をつつき、残った右足をずるっと引きずった。

名前は足が悪い。そのせいで、毎日必要な薪を拾い集めることも、買い物に行くことでさえとても時間がかかってしまう。世話をしてくれる家族がいればいいのだが、そういう存在も名前にはいない。


「あ!名前、スープ沸騰してる!」

「あぁ、大変だ。すぐに鍋を引き上げないと」

コンコンと杖が床を叩く音が早まり、名前は左足に重心を取って鍋を持ち上げた。

名前が鍋を持ち上げると同時にエレンは慣れた様子でキッチンから鍋敷きを取り出し隣のテーブルの上へと置く。名前が鍋敷きの上に鍋を置くのを横目に、エレンは薪入れ用の木箱に薪を流しいれた。

名前が何かを言うよりも先に戸棚から皿を二つ取り出し名前に差し出せば、名前は柔らかく笑ってエレンの頭を撫でた。



温かな湯気が立ち上るスープが二つテーブルに並び、エレンは名前と向かい合って席に着く。キラキラとした目を名前に向けるエレンに名前は「どうかしたの?」と首をかしげた。

何でもない!と目を輝かせたまま首を振ったエレンは、ふーふーっと何度か息を吹きかけたスープを啜った。

具材の少ない、薄味のスープ。貧しい名前の家なら仕方のないことだが、不思議とエレンはこのスープが名前に撫でられるのと同じぐらい気に入っている。

美味しそうにスープを啜るエレンに頬を緩ませ、名前もスープを啜る。


「いつもありがとうね、エレンくん。君のおかげで、毎日凍えなくて済むよ」

「けど名前、なんだかんだいって普通に生活出来てるよな。仕事してる風でもないし、どうやって稼いでるんだ?」

「んー?どうやってだろうねぇ」

「やっぱり!名前は元調査兵団だからか!?今でもこっそり兵団として戦ってるんだろ!?」

「この足でどう戦うって言うんだい?貯金を少しずつ切り崩しているだけだよ」

笑いながら否定する名前にエレンは少しだけ頬を膨らませる。


エレンが最初に名前に懐き始めたのは、名前が元調査兵団の兵士だと知ったから。しかし思った以上に兵士らしくなくて、緩くて、強そうにはまったく見えなくて、期待外れだと勝手に憤っていた時期もあった。

「でも名前、杖使って殴るの上手い!」

「まぁ昔はブレードを使ってたからねぇ。でもエレンくん、棒で人を殴るのは本当はいけないことだから、真似はしないでね」

「真似しなくても名前が助けに来てくれるからか!?」

「うーん、助けてあげるって言ってあげられればいいんだけど、この足だからなぁ」

輝き続ける純粋な視線に名前は眉を下げ力なく笑う。調査兵団から退いたのも見てわかるように足の怪我が原因で、杖をついて歩くことは出来るものの、自分を慕ってくれる少年のピンチに駆け付けるには少々頼りない。


元調査兵団だと知り目を輝かせて近づいてきたかと思えば、元兵士らしくない姿に憤り、そして偶然危ないところを助けるとまた懐かれた。因みに、助けてからの懐き方は元調査兵団だと知って近づいてきた時以上になっている。

自分は何時も朝薪拾いをするからと、ついでに名前の家に薪を持ってくるようになった。お礼にスープやパンといった軽い食事を与えれば嬉しそうに笑った。

それからずっと、エレンは事あるごとに名前のもとを訪れ、名前にそのキラキラした目を向け続けている。

自分はそんな目を向けられるような人間ではないのだけれど、と名前は思わず苦笑してしまいそうになった。


「・・・おや、エレンくん、そういえば少し身長が伸びたんじゃないかな?」

「わかるか!?最近膝がちょっと痛いんだ!」

「そうなんだ。その痛みは成長に必要なものだけれど、あまり辛いようならすぐにグリシャさんに相談するんだよ」

初めての出会いからエレンは少しずつ大きくなっていく。そのうちに、エレンが自分に向ける輝く視線が、当初とは少し違うものへと変化していっていることも。


「なぁ名前、名前はさ、兵士に戻ったりはしないのか?」

「この足じゃ無理だねぇ」

「壁外調査は出来なくても、事務?とか?いろいろ出来ることあるだろ?」

「生憎と・・・僕は、腰抜けなんだ。兵士を止めると言った時、同期にも散々『この腰抜け野郎』って怒鳴られたよ。今更戻ったって、邪魔になるだけさ」

「名前は腰抜けなんかじゃない!だって名前は俺の!俺の・・・」

何かを言いかけて、エレンの顔がぶわっと真っ赤に染まる。

言いかけた台詞がどんなものだったのか名前にはわからないが、そこに込められているエレンの気持ちは何となく察した。

幼い少年が抱く、青い恋。きっと自分に向けられている感情はソレなのだろう。


「・・・俺、調査兵団に入るって決めてるんだ!」

「調査兵団に?」

「そう!だから、名前も兵団にいれば、絶対心強いなって!」

真っ赤な顔のまま、先程言いかけた言葉なんてなかったかのような勢いで別のことを語る。きっと誤魔化しているつもりなのだろう。


「名前は、反対なんてしないよな?母さんもミカサも、絶対駄目だって言うんだ」

「・・・二人の心配もわかるよ。大事な人には長く生きていて貰いたいから、危険な場所には行ってほしくないんだ」

「・・・俺が調査兵団になるの、反対なのか?」

「反対はしないけど、進んで勧めたりはしない。僕もエレンくんのことが大事だからね」

その言葉どうどういう風に受け取ったのか、エレンの顔には喜びに満ちた笑みが浮かぶ。


「俺もっ、俺も、その、名前のことっ!」

喜びのままにエレンが何かを言おうとした時、外から戸がドンドンと叩かれた。

エレンはムッとした顔で戸を睨む。二人ともスープはとっくに飲み終えていた。

名前は椅子からゆっくり立ち上がり、杖を使って近づいた戸を開く。


「名前さん、エレンを迎えに来た」

「ミカサ!迎えに来なくていいっていつも言ってんだろ!」

怒鳴るような大声を上げながら椅子から飛び降り駆け寄ってくるエレンに「他所の家であまり長くお世話になってはいけない」と窘めるようにミカサが言う。

エレンが怒鳴りミカサが静かに返す、一見するとエレンの一方的なようにも見えるが会話に耳を傾ければ立派に言い合っている二人を見下ろす名前は「ははっ」と軽く笑い、二人の頭を軽く撫でた。


「いつもご苦労様、ミカサちゃん。エレンくんも、そろそろお家に帰りなさい。まだ家のお手伝いが残っているんじゃないかな?」

「・・・また後で来る」

ムスッとした表情のまま戸の傍に置きっぱなしにされていた薪を集める道具を背中に背負い、エレンはミカサと共に名前の家を離れていった。

残された名前は「調査兵団かぁ・・・」と力なく笑うのだ。




子供の目は輝いている




「エレン、何時まで名前さんのところへ通うつもりなの」

「お前には関係ないだろ!俺が、す、好きでやってるんだから」

「私たちはまだ子供、名前さんは大人、その想いが実を結ぶとは思えない」

「お前には関係ないって言ってるだろ!それに、俺が大きくなって、何時か名前ぐらいになったら、きっと・・・」

ぽぽぽっと顔を真っ赤に染めて口元を緩めるエレンに、ミカサは大きなため息を吐いた。

周囲が何をどう言っても、きっとエレンの恋はそこにあり続けるのだろう。




お相手:エレン・イエーガー
シチュエーション:ショタエレンを・・・ショタエレンをください・・・かわいいショタが欲しいです先生・・・

ショタをっ、ショタをどうぞ!
好意MAXのショタに愛される大人の男性・・・いいなぁっ!


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