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※『新しい息子として』続編。


僕は家族の幸せが一番大事。

前のパパが嫌いだったわけじゃないけど、今のパパになってから、家族は幸せになったから、僕はその幸せが長続きするようにちょっぴりお手伝いをする。

そのためなら僕はなんだってできた。

パパの妨害になりそうな人が『偶然』妨害が出来なくなるように、そういう風にお手伝いをした。

パパのパパ、おじいちゃんに手伝って貰って、毎日毎日沢山の人に、時には人じゃない動物とかにも矢を投げた。矢に願えば、矢は僕の願いを叶えるのに丁度良い人を選んでくれるんだ。

事件を沢山起こせば、人の目はそちらに向かう。それを囮にしている間、僕はパパとママにも沢山お話をした。


「・・・ママ、ねぇママ、あのね」

ある日の夕方、パパが帰ってくる少し前。今日もルンルン気分でキッチンに立っていたママは上機嫌で「なぁに名前」と笑う。けれど僕の格好を見て、すぐに「どうしたのそれ!」と心配そうな顔になった。

昔は僕にも無関心だったママ。けれど今はパパという好きな人が出来て心に余裕が出来たママは、僕のことも愛してくれる。

服が泥だらけで、落書きだらけのランドセルを泣きそうな顔で抱きしめる僕は、どう見たって『何かあった』子だ。

作っている途中の料理。コンロの火を止め、僕に駆け寄ってくれたママに僕は「あのね、あのね」と涙ながらに話す。


理由はわからないけれど、学校のお友達に虐められるんだ。休み時間になると沢山からかわれるし、授業中になると後ろからゴミを投げられるの。下校時間もね、後ろからけられたり、ランドセル取られちゃったり・・・ママごめんなさい、ランドセル、こんなに汚れちゃった。僕とっても悪い子。ごめんなさい、ごめんなさい・・・

しくしく泣きながら言えば、ママは僕をぎゅっと抱きしめてくれた。


「パパに相談してみましょうね。きっとパパが力になってくれるわ」

僕はママの腕の中でにっこり微笑んだ。

ママの口からパパにそれとなく相談して貰って、以前僕自身の口からそれを聞いていたパパは動揺したように頷いて・・・

本当は誰にも虐められたりなんかしなかったけれど、その日以降もわざと服や持ち物を汚したり、気落ちしたような表情を見せてみたりした。晩御飯を食べる量を減らしてみたりして『いかにも』な雰囲気を作った。

そうすればママはこれっぽっちも疑うことなく、パパに涙ながらに『転校』の相談をしていた。


僕には演技の才能もあったのか、ママどころかパパも僕を疑うことはなかった。

日に日に元気を無くしていくような演技を見せることで、パパもママも僕を気遣うような言動や行動が増えることになった。

その裏で僕はパパの幸せのために弓を投げ続け、パパの存在をごまかすためにスタンド関連の事件を増やした。

そのせいで被害に遭っている人なんてどうだっていい。

そんな僕に対しおじいちゃんは「末恐ろしい子供だ」と震えていたけれど、おじいちゃんだってパパがずっと元気でいてくれた方が嬉しいでしょう?これは、パパと僕らが幸せになるためには必要なことだったんだ。


「名前、話がある。こっちにおいで」

ある日の夜、パパに呼ばれてリビングに行けば、思いつめた様子のママもそこにいた。

「ママとよく話し合ったんだが・・・以前お前も言っていただろう。転校したい、別の場所に引っ越したいって」

「うん・・・けど、パパ、お仕事あるもんね。僕、パパのためなら我慢するよ?あのね、僕がきっと悪い子だから虐められるんだ・・・僕もっといい子になるから、だから・・・」

ぎゅっとパパに抱きしめられる。ママが両手で顔を覆って泣いている。


「パパ、今日仕事辞めてきたよ」

「えっ、どうして?パパもお仕事嫌になっちゃったの?」

「違うよ。次の引っ越し先で、新しい仕事を探すんだ」

「・・・お引っ越し?」

「あぁ。名前はもう、今の学校には行かなくていいから」

勝った。僕はこみあげてくる笑いを抑え込み、あえて不安そうな顔を作った。


「・・・本当?」

そう聞けば、パパが優しい顔で僕の頭を撫でる。

ねぇパパ、パパったら最初の頃より随分と『父親』の顔をするようになったね。

僕とママを愛しているんだね。気付いているかな、パパ。パパが最近、パパの大好きな『手』よりも僕ら家族と一緒にいる時間の方が増えていること。


「あぁ。今まで助けてやれなくてごめん」

「ううんっ、ううん!パパっ、あのね!あのね、僕!パパならねっ、パパなら絶対助けてくれるって信じてたの!だって僕、パパが大好きだから!・・・あっ、でも、ママ、ママは?ママはいいの?お引越し、大丈夫?」

「勿論よ。名前が元気ならママも嬉しいわ。それに、ママはパパと名前が一緒にいてくれるなら、なんだってへっちゃらよ」

涙で目元を赤くしながらもにっこり笑うママ。

あぁ、辛い出来事がありながらも、家族で一致団結し幸せになっていくなんて。なんて幸せで理想的な家族だろうか。


パパが引っ越しを告げてから一週間もしないうちに、僕らはそれまで暮らしていた一軒家を売り払うことになった。

まだローンは残っていたらしいけれど、立地が良かったらしく売却で得たお金と何とか相殺出来たらしい。それでも大分家系的には痛手だったはずなのに、パパもママも嫌そうな顔一つしなかった。

新しいお家は杜王町と同じ少し田舎だけれど、おじいちゃんに確認してもらったところこの町にスタンド使いはいないらしい。

静かで平和で平凡なそんな町。ねぇパパ、平穏な町ってね、案外他のところにもあるんだよ。杜王町だけが、パパの平穏な町ってわけじゃないんだ。

事前に調べたから町の人々の人間関係も良好だし、ただちょっと町にいる子供の数が少ないけど、僕に遊び相手が少ないならパパやママは積極的に僕と遊んでくれるだろう。そうなるようにしたんだから、そうなる予定だ。


実のところ、引っ越し先についても僕とおじいちゃんでいろいろ手を回させて貰った。

パパが引っ越し先を多少なりとおじいちゃんに相談するのを織り込み済みだから、おじいちゃんには事前にこちらがピックアップした引っ越し先の情報を幾つかちらつかせて貰ったんだ。

あぁ良かった。ママも早速、近所にママ友というものが出来たらしい。

パパのお仕事についても、幸せそうなママ曰く「面接、早速受かったんですって!」ということだから、きっと大丈夫だろう。



「パパ、僕今とっても幸せ。ねぇパパは幸せ?」

新しいお家のお風呂。パパの膝の上で頭を洗って貰いながら、純真無垢を装ってこてんと首を傾げて尋ねる。

どうしたんだ突然、と笑うパパに「ねぇ教えてパパ」とおねだり。

「あぁ・・・お前としのぶがいて、パパは幸せだ」

そうでしょ、そうに決まっているでしょパパ。だってパパの幸せへの道は、僕が一生懸命舗装したんだから。

悪いことも恐ろしいことも全部全部砕いて潰して覆い隠して・・・

ねぇパパ、もう後ろを振り向いたりしないでね。舗装した道の後ろの方にひっそり残る汚れなんて、もうパパが気にする必要はないんだから。




小さな悪魔は新しい父親のために産まれた




恐ろしい恐ろしいと、吉良吉影の父親は震える。

きっとこの家族の幸せは、この悪魔によってこれかも永遠に守られ続けるのだろう。

邪魔する者には、この悪魔が容赦しないのだから。




お相手:特に希望はありません
シチュエーション:家庭円満で早人成代主の大勝利ルートのお話を読んでみたいです!

めっちゃ矢を投げまくって杜王町を混乱の渦に突き落とした小さい悪魔は、大好きなパパとママと一緒に逃げましたとさ、でハッピーエンド。
たぶんスタンド使い多発で原作よりずっとてんやわんやしてそう。


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