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※『虹色刀の隠』続編。


坊ちゃんは強い鬼とぶち当たってしまう運命を背負っているのだろうか。

鬼舞辻無惨、下弦の鬼、上弦の鬼・・・本当に、命がいくつあっても足りない面子にばかりぶち当たる。

『ひ』の呼吸について知りたいから炎柱に会いたいと言い出したあたりで、嫌な予感はしていたのだ。柱は一般隊士よりも強い鬼の討伐に出向くため、柱に会いに行くということはもれなく強い鬼がいる可能性も高い。

更に今回は下弦の鬼を討伐した直後に上弦の鬼と遭遇するという悲運の連鎖。もはや呪われているのではないだろうか。


列車内での戦闘は通常通り隊士に任せ、俺を含む陰で待機していた数名の隠と共に乗客の救助に当たった。だがまさかその列車が横転するとは思ってもみなかった。

咄嗟に近くにいた幼い乗客を庇いつつ引き続き救助に当たっていると、坊ちゃんの声が聞こえ、声につられて電車の外に出てみればまさかの上弦。更に上弦は、あろうことか炎柱に重傷を負わせていた。

相手が上弦とはいえ、炎柱が一方的にやられているのは可笑しい。だがその背後に負傷した坊ちゃんや避難が完了していない横転した列車があるなら、その理由は明白だった。

既に片目をやられているらしい炎柱を確認。上弦の鬼は更に技を繰り出そうとしている。俺はその場を駆けだし、刀を抜き二人の間へ入った。


突然現れた俺に上弦は大きく目を見開く。目に書かれている数字は『参』。これは一筋縄ではいかないだろう。

「その恰好、鬼狩りではなく隠か。俺と杏寿郎の邪魔をするな!」

「・・・・・・」

無言で上弦に短刀を一発、避け切れなかったのか顔に真一文字の切れ込みが入った上弦は目を大きく見開きこちらを見る。

「お前、隠の癖になかなかやるな!いいだろう!杏寿郎の前にお前と殺し合ってやろう!」

「・・・班員全員に次ぐ、乗客避難後は柱含む負傷隊士を強制避難。拒否されても無視していい。時間稼ぎは請け負った、全員気を引き締めてかかれ」

背後で炎柱が「何を言っている!」と声を上げているが無視だ。既に片目が潰されていて、通常通りの力は出し切れない。運がいいことにあとしばらくすれば夜明け。討伐は難しくとも、時間稼ぎは十分に出来るだろう。


「虹色のふざけた刀・・・そうか貴様か!」

鬼舞辻無惨に何か聞いていたのだろう。俺の刀を確認した瞬間、その顔に獰猛な笑みが浮かぶ。

敵側に俺の存在が知られていたからといって特に困ることはない。以前鬼舞辻無惨と対峙した時と同じように、ただただ相手を斬って斬って斬って斬りきざんで・・・

相手がこちらに攻撃する隙を殆ど与えない勢いで刀を振るい続ければ、次第に上弦の顔に焦りが見え始めた。

夜明けは近い。自身の後方に意識を向ける暇はないが、おそらく同僚たちが上手く乗客や隊士たちの避難を進めていることだろう。


そうこうしているうちに日が昇り、後少しというところで上弦が逃亡した。避難したはずの坊ちゃんがその上弦に向かって日輪刀を投げたことには驚いたが、上弦によって隊士が死ぬようなことはなかった。

炎柱や坊ちゃんたちの療養中に行われた柱会議では当然俺が呼び出され、他の柱・・・主に蛇柱から「何故首まで落とさなかった」とねちねち言われたが、隊士や乗客を優先するなら深追いは悪手だったため特に自分の判断が間違っていたとは思わない。

炎柱は片目こそ潰されたものの鍛錬次第では以前とほとんど変わらない戦力を発揮することが出来るだろう。療養や鍛錬には時間がかかるが、いずれ柱として復帰することが約束された。

坊ちゃんたちも命に別状はなかったものの後少し療養を・・・というところで、何故か音柱の任務に駆り出されることになっていた。


駆り出されたと知ったのはほんの少し後のこと。俺はお館様へ今回を出来事を報告したり、坊ちゃんたちについての報告を重ねたりしていたため、坊ちゃんたちがいないことに気付くのが遅れてしまった。

音柱の嫁三人が偵察から戻ってこないという事情があったものの、療養が必要な隊士を三人も無断で連れて行くのは本来許されないこと。俺は何時の間にやらいなくなっていた三人を連れ戻すべく音柱の任務先である遊郭へと向かったが時すでに遅し・・・

見事に上弦と遭遇し戦闘になっていた彼等と、うっかり暴走しそうになっていた嬢ちゃんを見た時には思わず頭を抱えたほどだ。

何とか嬢ちゃんの暴走は静まったが、上弦の方は本当に厄介だった。

兄の方と妹の方、二人の鬼は同時に首を刈り取らなければならず、更に言うなら兄の方は毒が厄介だった。

見事に上弦を倒したかと思えばあたり一帯が爆発に巻き込まれ、流石に死ぬかと思った。何とか傍にいた坊ちゃんたちは守れたものの、音柱は左目が大きく負傷しており、左腕には深い傷を負っていた。

腕を失うことは免れたものの、炎柱と同じように片目の視力を失ったため、療養な鍛錬は困難を極めることとなった。

それでも炎柱が復帰を目標に必死に鍛錬している様子を受け、音柱も復帰に向けて療養と鍛錬をすることとなった。


即戦力としての柱は二人失ってしまったものの、いずれはその戦力が戻ってくるともなればまだ話はマシだ。

嬢ちゃんが暴走しかけたことに関しては報告や擁護が大変だったが、皆無事で本当に良かった。


しかし無事で済まなかったものがある。それは坊ちゃんの日輪刀だ。無限列車の時と遊郭の時、二度連続で刀を折って仕舞った坊ちゃんは、担当の刀鍛冶の怒りを買ってしまったらしい。

刀鍛冶の里には良い温泉があるため、療養と謝罪の意味を込めて坊ちゃんを刀鍛冶の里に連れて行くことにした俺は、次いでに俺の刀を打ってくれた刀鍛冶にも会いに行くことにした。

俺は刀を折ったことがないため、刀鍛冶との交流は殆どない。刀を折らないなら好きに着色しても構わないという他の刀鍛冶に比べれば心の広い人物である。刀は折ったことはないものの、多少の傷や刃こぼれはあるため、それをどうにかして貰うのも良いだろう。

しかしこれが間違いだった。まさか刀鍛冶の里に上弦が二人も現れるとは思わなかった。

坊ちゃんを危険から遠ざけ療養させるつもりが、まさか上弦との戦いに再び投じてしまうとは。

もはや坊ちゃんは呪われているとしか思えない現象に頭を抱えつつ刀鍛冶の里の人々を同僚たちと協力し批難させ、必要なら戦闘も行った。

普段使っている虹色の刀は刀鍛冶に預けてしまっていたが、場所が場所なだけに刀が豊富にあり、俺は刀を拾い上げては切り拾い上げては切り・・・

普段は刀一本で戦っているが、複数本も良いかもしれないと新たな発見が出来た。


その戦いの終わりで、見事上弦二人が倒れたかと思えば、まさかの嬢ちゃんが太陽を克服した。

それはとても良いことだが、同時に嬢ちゃんが鬼舞辻無惨に狙われる意味がより深くなった。

まるでそれを肯定するように今まで活発だった鬼たちの動きが鳴りを潜めた。きっと大きな戦いの前の静けさなのだろう。

お館様は柱を集め、その大きな戦いに備えるために隊士一人ひとりの戦力の強化を命じた。

戦国時代、一度は鬼舞辻無惨を追い詰めた鬼殺隊の文献に残っていた『痣』という現象が恋柱や霞柱には起こっており、それは柱の二人だけでなく坊ちゃんや嬢ちゃんなどにも起こっていることがわかった。

・・・それが発現すると長くは生きられないことを知った時の俺の心情は複雑なものだったが、発現してしまったのならもう後戻りはできない。せめて、痣により縮まった寿命以外で死なないように、力を付けさせる他ない。

話し合いの結果柱たちは痣の発現を目標にしつつ、他の隊士たちの能力の強化を行うこととなった。


「名前、君にも協力してもらうよ」

「・・・俺はただの隠、納得しない隊員もいることでしょう」

「君の能力は誰もが認めている。君が鬼舞辻無惨を退け、上弦を退け、柱を守ったことも、覆ることのない事実だ。どうか、鬼殺隊の能力強化に力を貸して欲しい」

「・・・かしこまりました」


柱たちに加え、俺自身も柱稽古で隊士たちを鍛えることになった。

俺は呼吸が使えず、刀の色も変わることがなかった。そのため痣の発現も期待できない。

だから俺が教えることが出来るのは、単純な剣術。

基礎はもちろん、その基礎からの応用、応用からの突発的な対応、刀を振るい続ける力と精神力・・・

隠の俺に刀を習うことを嫌がる隊士は一定数いたが、療養中の炎柱が「手合わせを頼む!」と押しかけてきてそれに対応してからは嫌がる隊士も減った。

同じく音柱も押しかけてきて同じように手合わせした結果、誰も文句を言うことはなくなった。


「おい、何してんだよ」

「柱稽古として隊士の能力強化に手を貸しているとはいえ、基本的な俺の仕事は変わらんのよ。坊ちゃんに関する報告も山ほどあるわけだしなぁ・・・」

「今は俺の稽古中だろうがふざけんな」

「なぁ桃の坊ちゃん、何時まで俺んとこの鍛錬場にいるつもり?坊ちゃんは基礎も応用も完璧だし、もう次に行ってもいいんだぞ?」

「そう言って俺を追い出すつもりかよ」

「いやいや、そういうわけじゃ・・・」

以前桃の坊ちゃん付きの鎹鴉からの要請で桃の坊ちゃんを救援・保護を行って以来、多少懐かれていた自覚はあったものの、柱稽古が始まってからは傍を離れなくなってしまった。


「名前さん!来ました!」

「来てやったぞ虹色野郎!」

「ひえぇっ!?何で兄貴がいるわけ!?」

元気な声が聞こえ顔を向ければ、元気な四人の姿が見えた。太陽を克服した嬢ちゃんの姿にはついつい目が潤みそうになる。

四人の登場にというより、主に雷の坊ちゃんの登場に不機嫌になった桃の坊ちゃんは「俺が先だ、俺に鍛錬を付けろ」と怒鳴り、それを見た坊ちゃんが「名前さんから鍛錬を受けられる権利は隊士全員にあると思います!」と言ったり、雷の坊ちゃんが「ひいぃぃっ!炭治郎駄目だって!兄貴を刺激しないで!」と泣いたり、それを気にせず猪の坊ちゃんが「勝負しろ!」、嬢ちゃんは遊んで欲しいのか「あ、そぼっ!」と飛びついてきて・・・

ううむ、もしかしなくてもこれが修羅場なのか。

俺は困りつつも「よおし、全員まとめて相手をしてやろうじゃないか」と強く意気込んだ。




虹色刀の隠の稽古




流石に五人同時に相手をするのは疲れる。

鍛錬の末ぐったりしている五人を後目に同じようにぐったりしていると、音柱の嫁三人が「差し入れです!」と料理を届けてくれた。

本当にありがたい。嫁さんっていいなぁ、けれど今は、坊ちゃんたちの世話で十分か。




お相手:鬼滅の刃短編の【虹色刀の隠】の続編
シチュエーション:短編の続編で、
キャラの救済ありで、柱稽古当たりまでのお話。
難しければ、キメツ学園軸のかまぼこ隊のあこがれの先輩のお話をお願いします。

なんとかかんとか柱稽古まで駆け抜けました・・・
炎柱、音柱、何時のまにか桃先輩・・・だいぶ省略された部分はありますが、成し遂げたつもりです。どうか褒めてください・・・


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