そろそろ夕暮れ時。
ちらほらと腹の鳴る音が聞こえる時間だ。
グツグツッ
鍋の中には、今日の夕食だと思われるものが入っている。
香辛料の効いた、美味しそうな香りだ。
「始!!!!今日のご飯はカレーか!?」
「正解ですよ、太子」
にこっと笑った男は、料理係・・・所謂コックを勤めている男――始。
「いやっほぃ!流石は始!!!!」
「クスクスッ。太子は、本当にカレーが好きなのですね」
そっと白いご飯の上にカレーをよそった始は、ゆっくりとした動きで、うきうきしながらカレーを待っている太子の目の前にそのカレーを置いた。
食べても良いですよ。という意味を籠めてにこっと笑うと、太子は嬉しそうに頷いて食べ始めた。
「美味しいですか?」
「最高だ!」
「それは良かった」
「始は食べないのか?」
首を傾げる太子に、始は笑顔で首をふる。
「太子が嬉しそうな顔をしてくださるだけで、私は幸せですからね」
穏やかな笑顔。
太子はちょっとだけ顔を赤くした・・・ような気がする。
「明日の朝ごはんはどうしますか?」
「カレー!」
「昼ごはんは?」
「カレーおにぎり!」
「晩ご飯は?」
「カレー!」
「クスクスッ。カレーばっかりだと、駄目ですから、明日の朝はカレーパン、お昼はカレーおにぎり、晩ご飯はカレーうどんで良いですか?」
・・・あまり変わらない気がする。
が、あえて突っ込まない。
ツッコミがいないから起こる悲劇だ。
「よく飽きませんね。カレー」
「始が作ってくれたカレーは、格別に美味いからな!」
満面の笑みで始に言う太子。
始はちょっとだけ驚いた顔をしてから、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「お褒めに預かり光栄ですよ、太子」
「明日も楽しみだ!」
「はい」
始はそっと、太子の頬についたカレーをハンカチで拭いながら返事をした。
カレーばっかり