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※美美子成代り主。


幼馴染の帝一は、昔それはそれは可愛い男の子だった。

元々顔が整っていたから、小さい頃は本当に女の子みたいで・・・

ガサツな俺とは違い、ピアノを習っていたからか一つ一つの所作が丁寧で、まるでいいところのお嬢さんみたいだった。


そのせいで同じく幼馴染の東郷たちがからかったり意地悪をしたりしていたが、そういう時は必ず俺が助けに入った。

有難う名前、と笑う姿が可愛くて仕方なくて、将来帝一みたいな女の子と出会えたらいいなと夢見ていた。ほんと、帝一が女の子なら良かったのに。


そんな帝一は、中学の途中から変わり始めた。父親である譲介おじさんが海帝高校への進学とその高校の生徒会長への道を強く推していたことが原因かもしれない。

俺も譲介おじさんから「名前くんも海帝に入り、帝一を支えては貰えないだろうか」と言われたが、俺は元からスポーツ推薦で入っていた中高一貫校を繰り上がる予定でいたため、謹んでお断りした。

確かに帝一と一緒の高校生活は魅力的だが、そもそも海帝の偏差値に俺の学力が達していなかった。どうやら俺の身体のステータスは、知力ではなく体力に数値が集中していたらしい。


帝一は俺と一緒の高校に行けないことをとても残念がってくれたため、高校に上がってからも帝一とは毎夜俺の家の庭で会うことになった。

折角だから家に上がればいいのに、と言ったが帝一は「僕が生徒会長になるまでは!名前の自宅に易々上がることはできない!」とよくわからないことを言われてしまった。昔は散々互いの家を行き来していたというのに。



「こんばんは、帝一」

「あぁ!こんばんは!」

はきはきと挨拶をする帝一に「元気だなぁ」と笑い、庭に設置されたベンチに二人並んで腰をおろす。ベンチは、事情を説明された母が立ち話も大変だろうからせめてにと設置してくれたものだ。


「それで?今日は何があったの?」

「実は今日は、氷室先輩が・・・」

帝一はその日一日何があったかを一つ一つ細かく報告してくれる。毎晩毎晩そう話題があるわけじゃないから、いつの間にかこの時間は帝一の報告会になっていた。勿論、俺も少しは学校であったことを話すが、帝一ほど細かくはない。

身振り手振りだけでなく、その時の感情をそのまま表現してくれる帝一の報告は面白い。うんうんと笑いながら聞いていると、帝一はふと僕の顔を見て黙った。


「ん?どうかした?」

「・・・名前と話していると、僕は自分が戦いの中にいることを忘れてしまいそうになる」

帝一にとって、生徒会長になるまでの道は戦いらしい。

大袈裟な、とは言わない。そもそも海帝高校の生徒にとって、生徒会長とはだいぶ特別な存在らしいことは知っている。ただ俺の通う高校ではそんなこともないから、何だか帝一のその熱についていけない時がたまにある。

まぁ、帝一が頑張っていることを否定するつもりはない。応援はしているつもりだ。


「一日中気を張っていたら疲れちゃうんじゃない?生徒会長になれるまで、まだまだ時間がかかるんだから、休める時には休みなよ。何だったら、今度何処か遊びに行く?学校の友達に、良さげな喫茶店を教えて貰ったんだ。ピアノも置いてあるらしくて、久し振りに帝一のピアノが聞きたいな」

「ふ、二人で喫茶店に?そ、そそっ、それはまさか、で、デート・・・」

「デート?ははっ、そうかもなぁ」

真っ赤になった帝一についつい笑ってしまう。

高校に入ってから帝一と会えるのは夜間だけになったし、昼間に会えるなら俺が嬉しい。帝一も同じように喜んでくれているようで、俺は少しほっとした。

生徒会長を目指す帝一は、昔と少しずつ変わってきてしまっている。今の帝一が嫌というわけではないが、生徒会長になるためなら何でもするというその姿勢がたまに怖くもあるのだ。


「デートなら、俺も目一杯お洒落していこうかな」

「そ、それは駄目だ!地味目の!名前は地味目の服装で来てくれ!」

からかうように言えば、真っ赤だった帝一が今度は真っ青になって首を振る。


「え?帝一、派手なの嫌いだっけ?」

「名前がどんな服でも似合ってしまうのは知ってるが!そ、その、名前は普段からとても目立つ存在だから、お洒落な格好をしたら他の奴らの視線が・・・」

「ううん?よくわからないけど、当日は地味目な服で行くよ。帝一が嫌がることはしたくないし」

「あ、有難う」

あ、真っ青から真っ赤に戻った。帝一の顔色は忙しい。


「じゃ、代わりに帝一がお洒落してきて」

「えっ」

「楽しみにしてる」

にこっと口角を上げ、帝一の頭を撫でた。

帝一は少し俯いて、小さく「わ、わかった」と返事をしてくれた。



―――――



赤場帝一には顔面偏差値が高すぎる幼馴染が存在する。

白鳥名前。顔面偏差値極振りの整った顔立ちと長い手足、聞く者の心を虜にしてしまいそうな甘い声、その姿に見合った清く正しい心を持った、帝一が知る中で最も美しい男だ。

幼い頃の自分は、将来彼のお嫁さんになるのだと信じて疑わなかった。だが小学校の途中で男同士は結婚できないことを知り、ならば実質夫婦・・・事実婚状態になろうと強く心に誓った。


昔から変わらず帝一に甘い幼馴染は、日を増すごとにどんどん格好良くなっていく。本人は知らないことだが、もう何度も芸能関係からのスカウトも来ているのだ。彼の両親が彼の耳に届く前に断っているだけで。

名前なら芸能界でトップを狙えるだろうと帝一は確信している。だからといって、名前の芸能界入りを許すつもりは帝一にはない。名前は将来なるのは、芸能人ではなく帝一の旦那様なのだから。


「帝一、当日は迎えに行くよ。久しぶりに帝一のご両親と妹ちゃんにもご挨拶したいし」

「ご、ご挨拶・・・あぁ!父にも伝えておく!」

帝一の恋慕はわかりやすいのか、父には全てお見通しだ。男同士のため結婚はさせられないが、将来名前を養子に入れることも視野に入れてくれている。

名前は旦那様だが、今時婿養子も珍しくない。赤場名前、とてもいい響きだと帝一は思っている。


「楽しみだ・・・」

「俺も帝一とお出かけするの楽しみだよ」

「君の未来の妻として恥ずかしくないよう、当日は完璧な服装をするつもりだ!」

「ん?妻?よくわからないけど、期待してる」

完璧な見た目と性格をしている名前だが、唯一の欠点は少し警戒心が薄く、更に言うなら難しい話やよくわからない話は笑顔で聞き流してしまうところだ。

だがそのおかげで帝一は名前の外堀をほんの少しずつではあるが埋めることが出来ている。

生徒会長になるころには、名前のご両親に正式に挨拶するつもりでいる。


「あぁ!期待していてくれ!」

待っていてくれ、未来の旦那様。

赤場帝一は、その夜再度己に誓った。必ず海帝高校の生徒会長になると。




旦那様にお誓い申し上げる




当日、黒のTシャツとジーパン姿という一般的にはシンプルな格好で来た名前だが、素材が良すぎるせいでむしろそのシンプルさが彼の美しさを強調していた。

「帝一、その格好凄くいいよ。じゃ、行こうか」

昔泣いていた帝一に「大丈夫、俺がついているから」と言って手を引いていた癖なのか、名前は自然と帝一の手を握って歩き出す。

帝一は真っ赤な顔で「流石は未来の旦那様」と呟いた。



あとがき

顔面偏差値極振りな美美子成代り主。
海帝に通える程の学力はなく、海帝からそう離れてないスポーツ特化型の中高一貫校に通っている。スポーツ推薦のため、運動能力は高い。

多分、夏合宿編の時は、氷室が誤射した銃弾を軽く避け、反射で氷室から拳銃を奪ってそう。勿論すぐ返す。
大鷹とは根明同士で意気投合して、帝一がギリギリすればいい。



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