前世重い系ぷるぷるスライムの冒険イレブン達との旅は楽しい。仲間もちょっとずつ増えて、その仲間たちも僕のことを受け入れてくれた。
けれど僕が魔物であることに変わりはないから、人里に入る時はイレブンの鞄の中にいるようにしている。ソルティコの街に入ってからもずっとそうやって大人しくしていた。
どうやらソルティコには、イレブン達を追うデルカダールの兵士たちが来ていたらしい。イレブン達を捕まえようとする兵士たちの姿を、僕は鞄の中から見た。
「・・・ホメロス?」
見えた姿に思わず声が出た。記憶の中にある姿よりも随分と大きくなっている。けれどわかる。僕が可愛い弟を忘れるわけがない。
ホメロス、ホメロス、僕の可愛い、何より大事な弟。ホメロス様なんて呼ばれて、きっとすごく偉い人になったんだ。凄い、凄いなぁ。僕はホメロスがとっても誇らしい。
今すぐ駆け寄りたいけれど、もう僕に手足はない。あるのはぷるぷるのスライムボディだけ。・・・イレブンの鞄の中で、ちょっぴり泣きそうになった。
あとがき
前世ホメロスの腹違いの兄、現スライム。
ホメロスは兄が死んだとは聞いているけれど、まさか屋敷を追い出されその後魔物に食い殺されたなんて知らない。
自分がデルカダール王に引き取られることを自分のことのように喜んでくれた兄を嫌ってはいなかった。きっと誰より自分を認めてくれる存在なのだと無意識で思っていた。
幼いまま死んで人間の文化にろくに触れることなくスライムとして過ごしたせいか、ずっと幼い性格。でも弟にはお兄ちゃんムーブかましたいお年頃。生まれ変わっても弟を覚えて居られたことが何より幸せ。
・・・でもやっぱり屋敷での除け者の日々も追い出されてからの苦痛の日々も、生きたまま魔物に食い殺される恐怖も、忘れてしまえた方がきっと彼は幸せだった。