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近所に住む弟のような存在のイレブンは、少し抜けた子だった。
子供らしい純粋さとイタズラ心を持ち合わせた年相応の少年である反面、少々世間知らずな面がある。
その原因は外界との接触が極端に少ないイシの村にある。
まぁずっとこの村にいるならそれでもいいかと思った頃もあったが、イレブンがそろそろ16歳になるというところで事情が大きく変わった。
なんとイレブンは、16歳になるとイシの村を出てデルカダールの首都に行かなければならないという。イレブンの母が悩みを打ち明けるようにこっそり教えてくれた話だから、間違いない。なんでも、イレブンの祖父であるテオ爺さんの願いでもあるらしいのだ。
そういう事情なら俺が止めることはできない。イレブンも、テオ爺さんの言葉なら迷うことなく村を出るだろう。
イレブンは世間知らずだがなかなかに腕っぷしがある。道中は問題ないだろう。・・・問題は、デルカダールという大都市で恥を欠かないかだ。
「名前、難しい顔してる。何かあった?」
「・・・心配してくれるのか。有難うイレブン」
お礼を言えばイレブンの口元が少し緩む。成長するに連れて何故だが表情筋があまり動かなくなったイレブンだが、元々顔がよく時折見せる笑顔はとても穏やかで温かいため、村のマダムたちに大人気だ。
イレブンはそろそろ自分が村を出ることになるなんてこれっぽっちも知らない。早く教えてやればいいのにイレブンの母がそれをしないのは、彼女自身もイレブンを旅に出すかどうかをずっと悩んでいるからだろう。テオ爺さんのお願いを叶えて上げたい反面、愛する息子を何があるかわからない外の世界に出すことが怖いのだ、きっと。
「なぁイレブン・・・もしもの話なんだが、もし旅商人の人が来て、うちの商品の薬草を買ってくれ!って言ったとする。でも、その薬草はイレブンが知ってる薬草の見た目となんか違うんだ。イレブンならどうする?」
「僕が知らない薬草の種類なのかを聞く」
「じゃぁ、商人がそうだと言ったらイレブンは薬草を買うか?その値段が普通の薬草の10倍だとしたら」
「10倍?10倍だとちょっと迷うかも。でも、旅商人の人が薬草が売れずに困っているなら、買うかもなぁ」
「・・・うぅん、いい子だなイレブン。そうだな、旅をしながら商人をするなんて大変だもんな。そんな人が薬草を買ってくれと言うなら、優しいお前は迷わず買うよな」
薬草の見た目をしてない10倍価格の薬草、俺だったら買わない。明らかに怪しい。だが、イレブンはそんな怪しい商品でも買ってしまう。
・・・今のはほんの軽い例え話だ。きっと大都市には、今の話よりも巧妙に人を騙すような人間もいるはずだ。俺もイレブンのことを言えないぐらい世間知らずだが、そういう人間もいるんだってことは理解してる。
イレブンがいかに心が綺麗で優しいかはわかった。心配は増した。
どうする、このままじゃイレブンが都会でカモにされてしまう。でも16歳まで後数日、世間の恐ろしさを教えるには時間が足りない・・・
「イレブン!」
「なに!」
「お前は俺の可愛い弟分だ!そんなお前が人に騙され借金まみれになる未来なんて想像したくもない!お前が村を出る日は俺も連れて行け!いいな!」
イレブンからしてみればいきなり村を出るなんて話、意味がわからないだろう。だが16歳になればその意味もわかるだろう。
意味がわからない癖に「わかった」と頷くイレブンが本当に心配だ。デルカダールに着いたら速攻で騙されそうだ。俺がしっかりせねば。
・・・そう思い、16歳になったイレブンのお供と称し一緒にデルカダールに行き国王に謁見した直後、何故かあれよあれよとイレブン共々地下牢に閉じ込められ、悪魔の子とそのお供などという免罪を着せられた。・・・都会は俺が思っていた以上に恐ろしいところだった。
世間知らずブラザーズ
「ぱふぱふしていかない?」
「ぱふぱふ?」
「名前、ぱふぱふって何?」
「何だろうな、ぱふぱふ・・・ラッパ?」
「今なら20Gよ」
「ぱふぱふ・・・」
「ぱふぱふ・・・」
「おいこら世間知らず二人、いい子だからちょっとこっち来い」
「ねぇカミュ、ぱふぱふって何?」
「ごめんカミュ、俺もイレブンもぱふぱふなんて商品知らないんだ」
俺とイレブンと回収したカミュは頭を抱え、大きなため息を付いた。ごめん、俺もイレブン同様都会の情報に疎いんだ・・・ごめん・・・
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