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僕のお父様とお母様は、教祖様のことが大好き。

毎日毎日お祈りしに行くんだ。僕もお父様とお母様の真似をして、お祈りするの。ちゃんとお祈りすればね、幸せになれるんだって。

お父様もお母様も僕が上手にお祈り出来れば褒めてくれる。だからね、僕お祈り大好き。


でも今日は失敗しちゃった。お祈りの途中で、厠に行きたくなっちゃったの。

お父様とお母様にごめんなさいって言ってから厠に向かったの。そしたらね、迷子になっちゃった。

厠に行きたいのに迷子になっちゃったから今にも漏らしてしまいそうで、しくしく泣きながら歩いてたら「どうしたの」って言われたの。振り返ったらね、とっても綺麗なお顔の人がいたの。

泣きじゃくりながら厠に行きたいことを伝えたらね、大きな手で僕のおててを握って、厠まで連れてってくれたの。とっても優しくて、僕すっごく嬉しかった。

優しいお兄さん有難うって言ったらね、お兄さんはくすくす笑うの。

君は何処の子?信者の子供かな?って聞かれたから「そうだよ、お兄さんも?」と聞いたら、またくすくす笑うの。お兄さんはよく笑う人なんだなぁ。


お兄さんに抱っこされて普段は行かないようなお部屋に連れてこられた。お父様とお母様のところに戻らなきゃと言ったら「ちょっとぐらい大丈夫だよ」と頭を撫でられた。

頭を撫でられるのは好き。僕がきちんとお祈りするとお父様とお母様も沢山頭を撫でてくれるから。


「君も極楽に行きたいの?」


その言葉に思わず首をかしげる。そっか、お父様とお母様は極楽に行きたいから毎日お祈りしてたんだった。僕は二人に褒めて貰いたいからお祈りしているけれど、二人はそうじゃないんだ。

「あのね、内緒ね?皆には言わないでね?」

「ふふっ、勿論」

「ほんとはね、極楽ってよくわからないの。でもね、お父様とお母様が行きたがってるから、一緒にお祈りしてるの。上手にお祈りできたらね、お父様もお母様も沢山褒めてくれるから」

「そっかぁ。君は極楽ってあるとおもう?」

「えっとね、えっとね、極楽って死んだ人が行く場所なんでしょ?僕、死んじゃった人にしかわかんないと思う」

お父様とお母様は『ある』って言ってる。でもどうしてお父様とお母様は『ある』って知ってるんだろう。僕は行ったことないから本当にあるかわかんない。


「お兄さんは極楽ってどんなところかわかるの?」

「んー、じゃぁ俺も内緒話しちゃおうかなぁ。聞いてくれる?」

「いいよ!僕の内緒話も聞いてくれたから、お相子!」

内緒話にどきどきしながらお兄さんにお耳を近づける。


「ふふふっ、此処の信者は知らないけれど、極楽なんて本当はないんだよ。人間が考えた妄想の世界なんだ。何で皆、それに気付けないんだろうねぇ」


本当はない!僕はあるのかないのかわからないけど、お兄さんは本当はないことを知ってるんだ。でもなんでお兄さんはここにいるんだろう。皆極楽を信じてるから、教祖様に会いに来るのに。

「僕、わかんないや。僕ね、僕はね、お父様とお母様に褒めて貰いたいだけだから。お兄さんも、褒めて貰いたいから極楽を信じてるフリをしてるの?」

「・・・んー。俺、褒められたいのかなぁ」

「んふふっ、僕がお兄さんをいい子いい子してあげる。極楽を信じてる皆のために、極楽を信じるフリをしてあげるなんて、お兄さんいい子。とっても優しいね、いい子いい子」

お兄さんの真っ白な頭をなでなでして頭をぎゅーっと抱きしめると、お兄さんが無言で僕を抱きしめ返してきた。やっぱり褒められるのは嬉しいよね。僕も沢山褒められたいから、お兄さんの気持ちがすっごくわかる。


「そっかぁ・・・俺、褒めて貰いたかったのかぁ」

すりっとお兄さんの頭が動く。僕はその頭をもっとなでなでした。僕も早く、お父様とお母様に褒めて貰いたいなぁ。



「苗字家の長子、名前を教祖様の傍仕えに任命する」



お兄さんとお別れして、お父様とお母様のところに戻ったら、知らないおじさんにそんなことを言われた。

僕が吃驚している間に、お父様とお母様は「きちんと教祖様にお仕えするんだぞ」「良かった良かった」と笑って僕を置いて行っちゃった。

置いてかないで、僕此処じゃなくってお父様とお母様と一緒のお家で暮らしたい。何で置いて行っちゃうの?僕ちゃんとお祈りしたのに、どうして、どうして・・・

お部屋に一人ぼっちで残されてしくしく泣いていると「どうしたの」って声を掛けられた。知ってる声だ。涙と鼻水を流しながら見上げると、さっきのお兄さんが笑顔で僕を見降ろしていた。


「あのねっ、お父様とお母様がね、僕を置いてっちゃったの」

お兄さんが僕の方に手を伸ばしているから僕も両手を上げれば、ひょいっと抱っこされた。お兄さんの首に腕を回してぎゅーって抱き着けば、頭を撫でられた。

「教祖様のね、傍仕えなんだって。僕教祖様知らない。知らない人のお世話、失敗しちゃう」

「ふふっ、大丈夫だよ、名前は良い子なんだから」

「でもでもっ、お父様ぁ・・・おかぁさま・・・」

「ほらほら泣かないの。お部屋に連れてってあげるから」

「お部屋?お兄さんのお部屋」

「そうだよ。この一番奥」

「んっ」

お兄さんも此処に住んでるんだ。教祖様はどんな人か知らないけど、お兄さんがいるならちょっとは寂しくない。

お兄さんに抱っこされたまま奥の奥に進んでいく。何処まで行くんだろうとお兄さんを見れば、お兄さんはにっこり笑うだけで教えてくれない。

何時の間にかとっても奥、確か教祖様がいるのよってお母様が言ってた場所まで来てしまった。


「お兄さん、此処駄目だよ。お母様が教祖様のお部屋って言ってた場所。入っていいよって言われた人しか入っちゃ駄目ってお父様も言ってた!」

「ふふっ、じゃぁ俺が入っていいよって言うから、名前は入っていいんだぜ」

「何で?何でお兄さんがいいよって言ったら、僕もお兄さんもお部屋に入っていいの?」

「君は知らなかっただろうけど、俺が教祖様なんだよ」

まるで悪戯が成功したみたいな顔でお兄さんが言う。

僕が吃驚している隙にお兄さんがお部屋の扉を開けた。中はとってもキラキラしてて、大きな椅子もある。


「お兄さんが教祖様なの?」

「そうだよ。君のことが気に入っちゃったから、欲しくなっちゃった」

お兄さんは教祖様で、お兄さんは僕を気に入っちゃって、僕を教祖様の傍仕えにして・・・

難しくてよくわからないけれど、お兄さんが僕と一緒にいたいなって思ってくれたのはわかった。


「・・・お兄さんは寂しいの?」

「んー、どうだろうねぇ。でももし寂しかったんだとしたら、君が傍にいてくれる?」

とっても広いお部屋。お兄さんは僕を抱っこしたまま椅子に座る。この部屋、すっごくキラキラしてるけどとっても寂しい。

お父様とお母様に会いたくて仕方ないけれど、こんなお部屋にお兄さんを置いて行くのはとっても可哀想。


「・・・お兄さん、沢山頑張ったから、お兄さんが寂しくなくなるまで僕がいい子いい子してあげる」

お兄さんが寂しくなくなったら、きっとお家に帰してくれるよね。

そう思いながらお兄さんをよしよししたら、お兄さんは嬉しそうに笑ってくれた。

「うん、寂しくなくなるまでずっと俺といてね。約束だ、名前」

「ん。約束する」

小指を出したお兄さんを指切りげんまんをする。嘘吐いたら針千本のーます、指切った。

お兄さんは笑って、僕を抱きしめた。

お兄さんの腕の中はちょっぴり苦しかったけど、お兄さんは今まで沢山頑張ってきたから、僕がちゃんといい子いい子してあげなくちゃ。


「お兄さん、いい子いい子」

「もっと褒めて」

「いい子、お兄さんはとっても優しいいい子。今まで沢山頑張って偉い偉い」

「・・・うん」

そうやって沢山沢山お兄さんをよしよししたら、いつの間にか疲れて眠ってしまった。起きたらお兄さん、寂しくなくなってるといいなぁ。




もっと褒めてよ、ねぇ




「・・・ずーっと、一緒だぜ、俺の名前」

腕の中でくったりと眠りについている名前を見つめ、童磨はにんまりと笑った。

ずっと欲しかったものが手に入った気がした。手放す気なんてこれっぽっちもない。



あとがき

・信者夫婦の子供
褒めて貰いたいし目の前の頑張っている人は素直に褒めるいい子。この度終身雇用先が決まってしまった。もう逃げられない。

・よしよしされてなんか満たされた教祖様
今まで誰もくれなかったものを幼子がくれた。だから欲しくなった。
そのうちよしよしじゃ満足できなくなって幼子にいろいろ仕込むえっちなお姉さん♂と化せばいい。



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