これもある意味償い「獪岳!今日の夕食は僕が作ったんだ。君は僕の作った味噌汁を褒めてくれただろう?」
「ぁ、え、あぁ・・・」
「ふふっ、名前が料理上手だったとは知らなかったなぁ」
「お義父様のお口に合うかわかりませんが、獪岳にはよく褒めて貰ったので」
「兄上、手際がとてもいいですね」
「有難う輝利哉。寺に住むより前に覚えたけれど、手際が良くなったのは獪岳のおかげだよ。獪岳が沢山教えてくれたから」
「そうだったんですね。獪岳様、叔母の私からもお礼を言わせてください」
「ぃ、いえ、お礼を言われるような、これは・・・ぜんぜん・・・」
何故だか産屋敷家一同と夕食を囲むことになった獪岳は顔面蒼白のまま端切れの悪い返事を続けた。
いつ復讐されるのかわからない恐怖は、獪岳の中でしばらくは続くことだろう。
あとがき
あまねの甥っ子な男主が紆余曲折あって最終的には素敵な家族と素晴らしい友人に囲まれて幸せに過ごす話。
獪岳からすれば、かつて裏切った男が自分よりはるかに地位の高い存在になっていて自分に復讐を仕掛けてくる話。
男主的には、確かに裏切られたことは悲しかったけど生きるためなら仕方ないよね!と獪岳の行動に理解を示している。自分もかつて生きるために盗みをしたし、自分が獪岳の立場なら鬼に対して命乞いをしただろうと思っている。
両親を殺したのは人間だし、自分を疎んで蔑み野良犬を追い払うようにしたのは人間だし、食いぶちが減るからと自分を邪魔者扱いしたのは人間だし、正直鬼より人間が怖い。でも今の家族や終始自分に優しくしてくれた行冥や唯一無二の友である獪岳は好き。
同じ兄仲間として炭治郎も好ましいと思っているし、炭治郎の友達だからという理由で善逸や伊之助も好ましく思っている。
行冥は獪岳が本当は男主から恨まれても仕方ない立場だと知っているし、お館様も男主の今まで歩んできた人生を知っているため獪岳が仕出かしたことも知ってる。
でも被害者である男主が獪岳の行動を理解し許しているため、特に咎めはしない予定。ただし、獪岳の男主に対する誤解は解いてはやらない。それが唯一の罰。
※字数が多く一部が反映されていなかったため、1ページを2ページに変更(2020.3.31)