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※キメツ学園時空。


近所のお爺さん家に、子供が増えた。

白髪のお爺さんとは対照的な黒髪に、不機嫌なのかな?って感じの気難しそうな眉毛。そんな子。名前は知らない。

母さんが近所のおばさんと「コジインから引き取ったんですって」って話してたけど、コジインって何だろう。

よくわからないけど、近所に俺と同じくらいの歳の子がいなかったから、とっても嬉しい。


小学校で友達と遊ぶのは好き。母さんが買ってくる算数のドリルは嫌い。だから、家のすぐ近くで遊べる友達が出来るのは嬉しい。

俺はお爺さん家まで走って行って、ピンポンを何度か押した。そしたらお爺さんが出てきて、僕を見ると笑ってくれた。


「おぉ、もしや獪岳に会いに来てくれたのか?」

「うん!かいがく?って子と遊びたくてきた!」

お爺さんは「きっと獪岳も喜ぶ」と言って僕を家に入れてくれた。

玄関には僕と同じぐらいの大きさの靴が一つあって、お爺さんと大きな卓袱台がある部屋に行くと、座布団に座って本を読んでる子がいた。


「獪岳、近所の名前くんが遊びに来てくれた」

「こんにちは!」

元気に挨拶をすれば、その子はちらっと顔を上げ「・・・こんにちは」と返してくれた。


「何の本読んでるの?凄いね!俺、本苦手!絵本とか漫画の方が好き!獪岳そんな分厚い本読めるなんて凄いね!」

「あっ、おい・・・」

獪岳のそばに近づいて、横から本を覗き込む。文字ばっかりで、絵が全くない。全然面白そうじゃないけど、そんな本を読めるのは凄いと思った。


「獪岳本が好きなの?勉強好き?俺ね、母さんが買ってきたドリル、毎日やりなさいって言われるから、勉強も嫌い!」

「別に・・・好き嫌いとかない」

「嫌いじゃないの凄い!じゃぁさ、じゃぁさ、ドッジボールとか鉄棒は?俺ね、逆上がり出来る!ドッジボールも、沢山ボール当てれる」

「逆上がりぐらい、俺にも出来る」

「獪岳、本も読めて勉強も嫌いじゃないのに、逆上がりも出来るの!?凄いね!獪岳苦手なことないの?嫌いな食べ物は?俺、キノコ嫌い!」

「好き嫌いはない。食えるものなら」

お、大人だ!獪岳、俺よりめっちゃ大人。


「凄い!獪岳凄い!獪岳、俺と友達なって!小学校俺と一緒?クラスは!?何組!?」

「声デカイ・・・キメツ学園附属小学校の、2年2組になるって聞いた」

「俺3組!隣のクラス!一緒行こうね!約束!」

獪岳の手をぎゅーっと握って降れば「痛い」と獪岳が眉を寄せた。ごめんね!と言ってちょっと力を抜く。

お爺さんがジュースとお菓子を用意してくれて、獪岳と一緒に食べた。煎餅、美味しい。


「隣のクラスだから、休み時間遊びに行く!獪岳と、獪岳のクラスの友達と遊ぶ」

「・・・そんなすぐ友達なんて出来るわけないだろ」

「獪岳は凄いからすぐ出来る!あ!でも出来なくても俺いる!俺、もう獪岳の友達だから!」

あ、獪岳が食べてるゴマの煎餅も美味しそう。


「獪岳、その煎餅半分ちょうだい。俺の醤油煎餅も半分あげる」

獪岳の眉がぎゅっと寄った後、獪岳は煎餅を半分に割って俺にくれた。俺も半分に割ろうとしたら、半分じゃなくて四つぐらいのバラバラになった。あと、全部床に落とした。

「獪岳凄い!俺、煎餅半分に出来なかった!」

「おい!床汚してんじゃねぇ!」

「お爺さんごめんなさい!」

お爺さんは笑って許してくれたけど、獪岳にあげる煎餅なくなっちゃった。


「ごめんね獪岳、煎餅半分こ出来なかったから、こっちの返す」

「・・・返さなくていい」

「えっ!?半分こ出来なかったのにくれるの!?獪岳優しい!ありがとう!」

やった!とゴマの煎餅を食べる。うん、ゴマも美味しかった。


「獪岳は本も読めるし、勉強嫌いじゃないし、逆上がり出来るし、嫌いな食べ物ないし、すっごく凄いね!あと、煎餅半分に割れる!」

「こんなの当たり前だろ」

「当たり前に出来るのが凄い。俺、獪岳が友達でほこ、ほこらしー?」

「誇らしい」

「誇らしい!」

難しい言葉が使えて満足した俺が大きく頷くと、獪岳がちょっとだけ笑った。


「学校いつから?」

「明後日」

「学校楽しみだね」

「・・・休み時間、絶対来いよ」

「絶対行く!約束。指切りする?」

小指を出せば、獪岳の小指が絡み、俺は元気よく指切りげんまんを歌った。




指切りげんまん、また明日




ばいばい獪岳!またね!と手を振り、ほんの数軒離れた家に入っていく名前を最後まで見つめていると、先生が俺の肩に手を置いた。

「いい子じゃったろ、名前くんは」

満足そうに笑っている先生に「まぁ、はい」と返事をする。

先生は前世のことを殆ど覚えてない。対する俺は、殆ど覚えてる。

精神年齢を考えると名前なんていう餓鬼なんか相手にするつもりもなかったのに、何でも凄い凄いと手放しで褒めてくる様子は悪い気がせず、ついつい友達扱いを許容してしまった。


「明後日が楽しみじゃのぉ」

「・・・はい」

まぁ、それも悪い気はしていない。



あとがき

リアル小学生主と、前世の記憶がある頭脳は大人な獪岳。
同い年なのに何か大人な獪岳が凄くて大興奮。多分、大人になっても獪岳を褒めまくる。
善逸が引き取られる頃には、幸せの箱が少しは修復されているといいなぁ・・・



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