可愛いもんじゃないか「おい名前!たまごやきを寄越せ!」
稼ぎの一つである内職をしていると泥だらけの伊之助が飛び込んでいた。作っている途中の小物を端に寄せ、伊之助の方を向く。
「伊之助、まずはその汚れた身体を洗ってこい」
「にわとり!にわとりを丸焼きにしたものも寄越せ!」
「その被り物もそろそろ手入れした方がいいな。ほら脱げ」
「わっ!?やめろ、勝手に取るな!」
「おぉ、やっぱり別嬪だな伊之助。他の奴らがお前の素顔をちゃんと見たことが無いのが残念だ」
「うおぉぉおおっ!やめろ!抱きしめるな!頭を撫でるなぁ!!!」
「はははっ!照れるな照れるな」
腕の中でじたじたと暴れる伊之助をぐりぐりと撫でつつ、今飼っている鶏の中に丸焼きに出来るような年老いた鶏はいただろうかと考えを巡らせた。