家族以外どうでもいい男鬼殺隊の柱と呼ばれる者たちに囲まれ、禰豆子の入った箱を奪われ、全身に傷を負いまともに動くことすらできない炭治郎は絶望しかけていた。
禰豆子を助けなければ、でもどうやって?どうすればいい?どうすれば、どうすれば・・・
「た、すけて、名前」
「いや、どうやったらそんな窮地に陥るわけ?助けを呼ぶならもっと早く呼べばいいのに」
名を呼んだ瞬間、風柱の手の中から箱が消え、炭治郎の真横から声がした。
ハッとして横を見れば、箱を抱えた無表情の青年が自分を見下ろしている。無表情だが、匂いは『呆れ』ていた。
何者だ!と怒鳴り刀を構える柱たち。青年は素知らぬ顔で「金持ちの庭園ってなんでこんな砂利敷き詰めてあんだろ」と見当違いなことを呟いていた。
柱たちが青年に斬りかかろうとした時、鬼殺隊の長であるお館様が現れる。
「おや、もしかしてそこにいるのは苗字家長子の名前殿かな?まさか貴方自ら鬼殺隊に顔を出してくれるとは思わなかった。ついに鬼殺隊に入ってくれる気になったのかな?」
「くどい。何度も言うが、僕は僕の家族さえ無事ならあとはどうだっていい。炭治郎とその家族とはいいご近所付き合いが出来たから助けただけ。あまりしつこいと鬼殺隊に牙を向く存在が増えると思え」
何やら顔見知りのように、しかしけして親しくはないという様子で言葉を交わす二人。いや、青年の方が一方的にお館様を邪見にしているようだ。
「そう言わないで欲しい。けれど安心したよ、君にも漸く同年代の友人が出来たんだね」
「炭治郎は友達じゃなくてご近所さんだ」
「えっ・・・」
「・・・大げさに言うなら友達かもしれないご近所さんだ」
炭治郎の悲しそうな声に訂正の言葉を上げた青年に、お館様は微笑ましそうに笑った。
あとがき
ある日神様から力を貰った。
その力で家族を守ってきたけど、その力が絶対的なものじゃないと知ってるから全てを救おうとはこれっぽっちも思っていない。身の丈に合った生き方をしたいと思っている。自分の限界をきっちりわかっている子。
それでも周りからすれば超人的な力だし、おこぼれに預かろうとする人間も利用しようとする人間もいる。正直鬼より人間の方が警戒の対象。
竈門家とはとてもいいご近所付き合いが出来た。もう年老いた祖父母も、可愛い弟もその家族を気に入っているから、死なないようにはするつもりでいる。
だから竈門家の人間が「助けて」と言って名前を呼べば走っていくし、脅かす原因を排除しようとする。それ以外には塩対応。
この後禰豆子の鬼殺隊入隊が許されると、あっさり帰っていく。次の登場はたぶん無限列車。その次は遊郭・・・正直呼ばれる頻度多くない?炭治郎、鬼殺隊辞めれば?とか言い始める。